ダンス しっとりとしたジャズが流れるバーでアラスターはウィスキーを傾けている。ロックグラスの中に沈む氷はウィスキーと混ざり合い、からんと音を立てた。その時、店の扉が開き足音が近づく。
「悪い、遅くなった」
「別に、私も今来たばかりです」
「そうか……マスター、彼と同じ物を」
そう言ってアラスターの隣に腰掛けたのはヴォックス。彼はアラスターの旧友で、今日もここで飲む約束をしていた。
ヴォックスが腰掛けたところでアラスターは彼に目を向けたが、瞬間目を見開く。
「貴方、その姿どうしたんですか?」
「新しい事を始めるから、思い切って新調したんだ」
「ふーん、私は前の方がまだ愛嬌があって可愛げがあるように感じましたがね」
「まったく、そんな事言わないでくれ。今はこれが流行りなんだよ」
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