或る骨董屋にておや、いらっしゃいませ。
実に半年ぶりのお客様ね。この店ったらこんな辺鄙なところにあるんですもの。よくぞ見つけてくださいました、歓迎します。
どうぞ、どうぞごゆっくり。
あら、ショーウインドウの中の人形に惹かれた、ですか。それはそれは、お目が高いお嬢様だわ。ほら、こちらへどうぞ。
……ね、綺麗でとてもよくできた人形でしょう。まるで吸い込まれるような雰囲気を持っていると思いませんか。こんな人形、二つとありませんよ。貴女もそう思うでしょう?
ああ駄目駄目、そんなガラクタなんか放っておいて。そんなのより、この人形のほうが余程美しいんだから。御覧なさい、この艶やかな烏の濡れ羽のような黒髪を。ねえ、この髪に触れてみたいでしょう?この柘榴石のような瞳を、もっと間近で見てみたいとは思わないかしら。思うわよね。ねえ。
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