Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    tknk_bl

    🌸 🦋⚔️ ❄🔥
    猗窩煉!!!その他2.5いろいろ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 14

    tknk_bl

    ☆quiet follow

    猗窩煉/現パロ
    実家から出て2人で同棲してます。
    ライトな「価値基準が違うようだ!」が書きたくて書いたお話です。
    喧嘩したり家飛び出したりしてるけど内容は甘々。

    #猗窩煉
    #現パロ
    parodyingTheReality

    「君とは価値基準が違うようだ!!実家に帰らせてもらう!」

    近所中に響き渡る声と共に、騒々しく杏寿郎は出ていった。
    またか、と勢い良く閉められた玄関のドアをぼうっと見つめること10分。リビングの方から間の抜けた通知音が響く。重たい足取りで通知を確認すると、それはまさしくさっき出ていった杏寿郎からのメッセージだった。

    『今日は実家に泊まる』

    …律儀と言うか何と言うか。喧嘩して出ていったにも関わらず、ちゃんとこういう事は連絡をしてくるのだ、杏寿郎は。

    先程までどうしても譲れないことがあって口論していたのに、もう既にそのメッセージだけで許してしまいそうになる。

    駄目だ、と頭を振って我に返る。この流れもいつものことだった。実際、今までは俺の方から折れている。

    杏寿郎と一緒に住むようになったのは一昨年の12月。あれから1年と少し経っているが、住み始めた頃も今も、些細なことで言い合いになって杏寿郎が家を飛び出すという事がたまにある。

    その度に「価値基準が違う!」とか何とか言って出ていくものだから、正直なところ、デジャブの様なものを感じてかなり傷ついていた。

    だが毎回、言い争いの原因は本当に些細な事なのだ。

    最初に喧嘩をしたのは朝食はパンかご飯か、2回目は洗濯の仕方だったし、3回目も似たような事だった。

    合わないと言うよりはお互い譲歩と言うものを知らず、変に頑固なところがあるから言い争いになるまでヒートアップしてしまうのだ。

    特別こだわりがあるわけではなくて、許せてしまうことも多々あった。だいたい俺が折れているのだが、1度対立すると「杏寿郎に負けたくない」と言う感情が芽生えてしまう。1年経っても学ばない自分に自分で呆れている。だがこればかりはこういった性分だから変えられない。

    杏寿郎のこだわり自体は許せても、俺にも譲れないことが1つだけあった。


    とにかく杏寿郎はなかなか抱かせてくれないのである。一緒に住んでいるんだし、一緒に過ごしていてそういう雰囲気になることもある。とにかく杏寿郎のことが愛おしくて堪らなくて、そんな日は全身を愛撫して蕩け切る程抱き潰してやりたいと思うのだが、杏寿郎はそんな俺の気持ち等お構い無しに、気付いたらベッドに入って安らかな寝息を立てている。午後10時頃のことだ。

    一度、寝ている杏寿郎の全身に勝手に噛んだり吸ったり、そんな事をしていたら突然起き上がった杏寿郎に拳で殴られた。そんなに嫌かとその週は仕事も何も手に付かなかった。

    杏寿郎曰く、「そういうのは事前に言ってくれ」ということだが、それはそれでどうなんだと思う。

    実際、2人が休みの日の朝に「今日は起きていろ」と言うと、杏寿郎が先に風呂から上がっても先に寝てしまっている事は無く、律儀にベッドに座して待っていた。

    行為自体は嫌がられていないので安心したが、やはりせっかく2人で住んでいるならそれくらいは許して欲しい。

    今回もその事で揉めた。事前に言えと言うが、何がそんなに嫌なんだと聞くと恥ずかしいからと言うが、今更何を恥ずかしがることがあるのか。毎日言えば毎日させてくれるのか、等と反論すると杏寿郎は顔を真っ赤にさせて更に反論したかと思うと、またあれだ。



    「君とは価値基準が違うようだ!!実家に帰らせてもらう!」



    そう言われて距離を置かれてしまうと、もうどうしようもなかった。1日経てば何事も無かったように帰って来るのだが、今回ばかりはやはり納得出来ない。理由がわからないことには、納得の仕様がないのだ。
    杏寿郎が帰って来たらまたその話をしよう。今度は冷静に、杏寿郎の本心を聞くために。


    * * *



    「昨日はすまなかった」

    「……俺の方こそすまない」


    いつも通り、翌日の夕方、杏寿郎は仕事が終わって家に帰ってきた。2人で向かい合って夕食を食べた後に、ソファに並んで座ってぼんやりとしている時。杏寿郎の方から昨日の話を切り出した。

    熱くなってしまった自分も悪いと思っていたし、自分の謝罪に嘘は無い。しかし、どうしてもはっきりさせておきたい。絶対に機嫌が悪くなるとわかっていたが。

    「……どうしてそんなに嫌なんだ?」

    「!」

    ぴくりと杏寿郎の眉毛が動く。

    「……まだその話をするのか…………」

    声のトーンが低い。怒らせるとわかってはいたけれど、これは必要な事だから仕方がない。

    「……お前の言い分はわかったが、どうして嫌なのかがわからない。一緒に住み始めてもう1年も経つ。それくらいは許してくれてもいいんじゃないか」

    「……その話は、昨日しただろう」

    「せめて理由を教えてくれないか」

    「…………」

    問い詰めると、杏寿郎は黙り込んでしまった。俯いて、両の拳を握り締めている。理由はわからないが、そこまで嫌がられるとなるとやはり傷付く。だがこれは無理強いすることでもない。この話題はやはり持ち出すべきではなかっただろうか、そう思い杏寿郎の方を見やると、杏寿郎の耳が真っ赤に染まっていることに気づく。

    「…杏寿郎」

    「だから、」

    拳を握り締めたまま、小刻みに震えている杏寿郎が口を開く。

    「恥ずかしいんだ!本当に!」

    「……っ!!それは昨日聞いた!他に理由があるんじゃないのか?!」

    まだそんな事を言うのかと声を張り上げてはっとする。駄目だ、冷静に。口論にならないように、ただ自分は杏寿郎の口から理由を聞きたいだけだ。熱くなるな。

    「………本当にそれだけなんだ」

    「…!」

    急にしおらしく、声が先細りしていく。そのまままた俯いて黙り込んでしまった。

    結局杏寿郎の答えは昨日と変わらなかったが、まさか、恥ずかしいなどと、生娘でもあるまいし、本当の理由を隠すための嘘だと思っていた。


    それが蓋を開けて見ればこれだ。本当に、それ以外の理由がないと言う。




    「俺は… 事前に準備している杏寿郎の方がいやらしいと思うが……」

    「なっ、何を言ってるんだ君は!!!」

    また杏寿郎の顔が朱に染まる。それだけのことか、と気が抜けてしまって思っていたことが思わず口から漏れてしまった。

    杏寿郎の方はというと、みるみる顔が赤くなって、沸騰しそうな程だが、逆にこちらは昂っていた気持ちが削がれてしまった。
    普段は表情が分かりにくい杏寿郎が、ころころと顔色が変えるのが面白くて、笑みが溢れる。 何を笑ってるんだと割と強めに肩を叩かれるその痛みさえも愛おしい。


    「……お前は本当に変なところが頑固だな」

    「な、何だ急に…それは君も同じだろう…」

    杏寿郎が大きな溜息をついた。少し落ち着いたのか、声のトーンも落ちる。だがまだ耳は真っ赤だった。



    「お前、そんなに頑固で大丈夫なのか。人付き合いとかあるだろう」

    心外だ、と杏寿郎が続ける。

    「君は俺を何だと思ってるんだ!君だから言っているんだ!」

    一瞬時が止まる。しまった、という顔をしてまた杏寿郎が顔色を変える。



    「杏寿郎それは……誘っているのか?」

    「図に乗るな!」

    また強めに叩かれそうになるが、2度も同じ手にかかってやるつもりはない。

    叩かれるすんでのところで手首を掴んで、こちらに引き寄せる。

    「何を…!」

    突然腕を引かれてバランスを崩した杏寿郎が胸にもたれかかる格好になる。

    それでも抵抗しようと身動ぎした体を、手首を捉えたままもう片方の腕で優しく抱き締めた。

    最初は抵抗していたが、腕の中にすっぽり収まるとじっとしてされるがままになっていた。
    お互いの鼓動が聞こえてしまうようなそんな距離。触れ合ったところが温かくなってきて、心までじんわりと温かい。 やはり好きだ、と思う。愛おしくて堪らないと。

    「…本当に何なんだ、急に……」

    名残惜しいが腕から解放してやると、また杏寿郎が溜息をつく。だがその表情は柔らかくなっていて、もう口論をするような雰囲気ではなかった。


    掴んでいた手首からそっと指を離して、指を這わせながら杏寿郎の指に絡める。手のひらをぴったり合わせて絡ませた指を握り締めて、そのまま引き寄せてキスを落とす。


    「……これは、そういう雰囲気だろう?」

    「な…っ!」



    一度戻っていた顔色がまた朱に染まっていく。



    「今日は……お前に折れてもらうからな」

    「………もう好きにしてくれ」

    「そう簡単に折れるなんて杏寿郎らしくないな」

    「どっちなんだ!やっぱり駄目だ!」

    「はは、冗談だ」


    次の言葉は紡がせまいと、杏寿郎の唇を、己のそれで塞いだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💗💒💗💒❤💖🙏💯💯💯💯💯😍💗💒💗😇🙏💘💒💒😍👏❤😭🙏💖💖💖💒💒💒😇😊
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works