お前のために贈る花 「花束を見繕ってくれないか。」
クルトラの街のある花屋、そこに現れた迷宮守の姿に店員は表情を明るくさせる。
「ザフォラ様、花束ですか…ティファリア様にですか?」
その言葉に思わず咽せてしまうザフォラ。
「…ノーコメントだ」
そんな様子を見せればバレバレだというのにザフォラはそうやって誤魔化した。
「どんな花で作りましょう?」
「……オレンジの、果実を実らせるオレンジの花を使った花束は出来るか?」
「できますが…」
「ならそれで」
「色の雰囲気は?」
「……イエローとかオレンジとかの明るい色味で頼む」
「かしこまりました」
そういうと花束を作り始める花屋を見てふっとザフォラは息を吐くのだった。
***
オレンジの花を選んだのはちょっとした思いつきだった。よく、あいつが淹れてくれるハーブティーと同じものだから。イエローとかオレンジのカラーを指定したのは、なんとなく…本当に何となく、あいつをイメージすると思い浮かぶ色がそれなだけで…他意はない。
1054