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    翠蘭(創作の方)

    @05141997_shion
    一次創作/企画/TRPG自陣&探索者のぽいぴく
    一次創作の設定等はべったーに

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    翠蘭(創作の方)

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    小説に落書きなんて此は如何に

    夏の話 痛いほど明るい空だった。
     何もかもをジリジリと焦がそうとするそれが嫌で、き、と頭上を睨み付ける。目に刺さる光は、一体どれ程昔のものなのだろう。思い出そうとしたが、暑さでろくに回らない頭だ、なにを考えても意味はないと頭を振る。直視したせいで、残像が視界を泳いでいた。
     周囲を気にすることなく、目を閉じる。短い生涯で子を残そうと、一生懸命鳴いている声が鮮明に聞こえた。最近になって、一週間よりもっと長く生きると判明されたのだったか。どちらにせよ、人間より短命であることに変わりはない。それでも、ここにいると必死に伝えている。
     夏は生の季節だ。生き物全てが最盛期を迎え、一年で命が輝く。世界が鮮やかに染まる。
     瞼を上げると、ゆらゆらと揺れるコンクリートの上で、干からびているそれを見つけた。足元を見ない者に踏みつけられたのか、潰れている。涼を求めて地上に出たのに、この仕打ちである。
     夏は、死の季節でもある。
     暑さは命を干からびさせ、あっさり奪い取る。
     干からびた命と別れた先には、川があった。透き通る水の中に、小さな子供の靴が片方沈んでいる。水辺に近づくと連れていかれるとも言われるが、これは迷信の類いだろうか。そんなことを思いつつ、流れを横切る。沈んだ靴はそのままに、ザブザブと対岸へ向かう。
     日本では、死者が帰ってくる季節も夏だ。夏には、生も死も似合う。生命の季節と呼ぶべきかもしれない。
     ところで、あの世とこの世の境界線には色々あって、身近なところでは鳥居や山の入り口、橋なども境目だと言われている。
     そして、川も。
     蝉が死んでいる。死んだばかりのミミズに、蟻が群がっている。水中に置いていかれた靴は、長い間忘れられたせいでくたびれていた。
     目に染みるほどの青を眺める姿は、どこにもなかった。
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