愛と、好きと、恋って、どう違うのだろう。
彼の手が好ましい。努力してきた人の手で、私を優しく、丁寧で、そっと触れてくれるから。
笑った顔を見ると、胸がふわふわする。軽薄な笑みも、心から嬉しそうに笑う様も、もっと見ていたくなる。
声が聞こえると、心が弾む。名前を呼ばれるだけで傍にいてくれるのだと感じられる。耳に近すぎると、心が弾むどころではなくなってしまうけれど。
ふとした時にバニラの匂いがすると、彼を思い出す。お菓子を作っているところや、普段の行動が頭に浮かんで、無性に会いたくなる。
あなたから血の匂いがすると、心配になってしまう。
作ってくれるご飯が美味しい。胃袋を掴むということは、きっとこういうことだろうと思う。
あなたを想うと、たくさんの好きが溢れてきて、苦しさも感じる。それは決して嫌なものではなくて、むしろ、もっと苦しくてもいいなと思ってしまう。
あなたが私を見つめて、名前を呼んで、触れてくれると、優しく笑いかけてくれると、涙が零れそうになる。
もしかしたら、私は私の知らぬ間に恋をして、現在進行系で好きをたくさん見つけているのかも。
それらを全部ひっくるめたものが、私の「愛してる」なんだ。
今の私は、あなたの熱がないと、寂しくなってしまうから。たくさん抱きしめたい。抱きしめて欲しい。心臓の音と、私が大好きな金属の穴が触れる瞬間を、私の気が済むまで聞かせてほしい。私の息づかいと、心臓の音を、たくさん聞かせてあげたい。
ここにいることを、確かめ合いたい。
ケーキを準備しながらそんな物思いにふけっていると、彼の帰宅時間が差し迫っていた。
今日は帰ってきたら、たくさん好きなところを話して、私の愛してるを伝えないと。
生まれてきてくれて、出会ってくれて嬉しいって、たくさん、たくさん聞かせたら。
ケーキを食べてお祝いしよう。
「お誕生日おめでとうございます、賢一さん」
あなたが生まれた日に、私からとびきりの祝福を。