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    翠蘭(創作の方)

    @05141997_shion
    一次創作/企画/TRPG自陣&探索者のぽいぴく
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    翠蘭(創作の方)

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    華軍企画内企画、「彼岸(悲願)の向日葵」の自宅の話、四話目

    幸せな夢を断つ話 四 特に何事もなく翌日を向かえたひつじだったが、昨日見たあれがなんなのか、気になって考え続けていた。そのため若干寝不足気味である。授業にも身が入らなかった。休めばよかったものを、と思うかもしれないが、依宵いよとの約束を反故はごにしたくはないと、半ば無理矢理登校していた。
    (先輩が知ったら、今すぐ帰れって言われる、だろうな)
     現在は頭痛もなく、寝不足以外には異常が無いため、心配ないと自己判断していた。
     それに、彼女との昼食の為だけに無理をしているわけではない。
     昨日の頭痛は、夕焼けに起因していた。そして頭痛にさいなまれながら、未は月待つきまち依宵の幻影を見た。思い出せない記憶が依宵に関係しているのは明白だろう。彼女に会って話をすれば思い出せることがあるのではないか、未はそう思っていた。

     昼休み。終業の鐘と同時に、足音が聞こえる。
    「迎えに来たよ~!」
    「……月待先輩」
     思わず顔をしかめる。
    「廊下は走らないで下さい。大声で、呼ばないで下さい。迷惑です」
    「ごめんごめん」
    「先輩も、みおみたいな、こと、を、……?」
     どうして、ここで妹を思い出したんだろう。
    「妹さんも、こんな感じだったの?」
    「いや」
     少なくとも、小中学校は給食だから、こんな風に未の教室まで来たことはない。それでも、澪がはしゃいで未の教室に向かっている記憶を、鮮明に思い出していた。
     ……そもそも、依宵がこのように駆けてきたことはあっただろうか。
    (これは、一体)
    「大丈夫?」
     こちらを覗き込む依宵と目が合う。
    「具合悪いの?」
    「いや、考え事をして、て。大丈夫です、行きましょう」
    「そう? 無理しないでね」
     依宵は、そのまま廊下を歩いていってしまった。これも珍しいことだ。普段なら即刻保健室行きではなかっただろうか。後ろを歩く。鮮やかな赤いリボンが、深い緑の髪が、黒いセーラー服が、彼女の歩みに合わせて揺れている。
     その後ろ姿に、なにかを見た。
     悲しそうな声、風にたなびく制服のスカート、夕焼けに溶ける髪飾り、包帯とガーゼが、赤く染まっている。
     あぁ、苦しい。
    「どうしたの」
     依宵が駆け寄ってくる。廊下を走っては行けないと、先程伝えたばかりなのに。
    「っは、う、あ」
     また立っていられなくなって膝を着いていたのかと、未はそこで気がついた。頭が痛い。呼吸が乱れている。声が上手く出せない。
    「大丈夫 しっかりして!」
     焦ったように覗き込んでくる、未を心配する依宵の目。その目が、諦めに染まっていた光景を、知っている。
    「ねぇ、未! しっかり……」

    「ねぇ未」

     あの日の依宵の声が、重なる。

    「あ」
     急激に頭が冴える。視界がクリアになった。自分が置かれている状況も、彼女のことも、ここが何なのかも、はっきりわかる。いや、思い出した。
     思い出してしまった。
    「……そう、か」
    「ひ、未?」
    「そうか、僕は、もう、」
     理解わかっていたのだと。
     目の前の彼女を見ながら思い出していた。
     あの日のこと。あの日、燃えるような夕暮れの中で彼女と交わした、約束のこと。
    「月待先輩」
     こちらを見る深い緑の目。目の前で目を閉じた夏宵かよのことを思い出す。
     あぁ、やはり、夏宵は彼女にそっくりだ
    「僕は、貴女のことを」
     ──弔わなければいけない。
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