54 アル空甘い夢だ。現実ではないことはすぐわかる。
俺の前に、妹がいる。
お兄ちゃん、と昔からたくさん聴いてきた声が鈴のように鳴っている。やっと会えたねと嬉しそうに笑う。目的は達成されたのだ。もうテイワットに用はないから早く行こうと、落ち着きなく旅立ちを待つ妹に、そんなに急くことはないだろうと苦笑する。
『何を言ってるの? お兄ちゃんが全然ここから離れようとしない方がおかしいのに?』
それは、まだ離れ難いというか、みんなにまだ挨拶もできてないし。
『それは改めてしなきゃならないの? もしかして、彼らと別れるときに都度、〝またね〟なんて言っていたの?』
それは挨拶として自然な言葉だろう?
『……ねえお兄ちゃん、私たちは異世界の人間だよ。お互いがたったひとりの家族。忘れてないよね?』
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