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    桜樹の化身の守沢と、高校生鬼龍です
    とむさんとかほさんの桜紅千に触発されて、設定一部お借りしました🙏
    守沢が嬉しいと花びらが出現して花まみれになるので桜の傘を差しかける鬼龍…という理解をしました
    「鬼龍が傍にきてくれると嬉しくて花びらをよけいに降らせる(物理的にある以上に)守沢」しか書けてません(しかも人外)が、イメージがなければ書くこともなかったので…
    素敵なツイートありがとうございました🌸






    .はらはらと薄紅色の花弁が舞い落ちる。
     その広場はいつもひと気がない印象だった。奥に、ひときわ存在感を放つ桜の古木があるほかは、風雨にさらされて文字も判別しづらい歌碑のようなものが置かれているだけだ。樹からほどよく離れた位置に、石の腰掛けが二基。
     紅郎は自宅に近いこの場所によく足踏みする。
     日課のランニングの終わりにここのベンチで息をととのえたり、空手の型をさらったりするのだ。幼い頃から好きで続けているが、体格にもめぐまれた紅郎に向いていたのだろう。もうすぐ昇段試験というときなど、時間を忘れて鍛錬することもある。
     そんなときは、気づけば日の落ちた空を半分覆うように枝を伸ばした桜が、静かな風に葉を揺らしている。いちどに視界におさめきれないほどの樹勢をみやれば、高みから自分を見守る視線がそこにあるような気がしてくる。幼い紅郎はそう感じることを特に不思議にも思わず、かえって親しみをおぼえていた。

     冬がおわりに近づくにつれ、桜の樹は春への憧れを秘めてはりつめた気配を漂わせる。息をひそめて指折りかぞえてその日を待ち、花びらのまじないで閉じ込める。過ぎ去る刻を、人を、その美しさで幻惑し、ひきとどめようとするように。
     豪奢にひらいた花弁はやがて風がなくとも降りしきるが、きりもなく積もるそれは、ほのかに血の気のさした幼子の頬のいろをしていた。
     花の終わり、紅郎の足もとは、いつもふかふかと雲をふむ、夢見心地の絨毯になる。

     今年もさかりがすぎていく。たぶん今日がいちばん綺麗な日だな。
     柄にもなく年がいもなく、──というのは紅郎はまだ高校生になりたての年頃で──そんな感傷が胸をかすめて、紅郎は大樹に歩み寄った。
     そうっと幹にふれる。こんなの、いつぶりだろう? ガキの頃は意味もなくぺたぺたとさわっていた気もするが。乾いてごつごつした感触なのに、あたたかみを感じる。
     ひそやかに流れていた風がふとやんで、静寂がおとずれた。次の瞬間、どどうっと音をたてて風が、まだ散るには早い花を揺らして、肩にかかるほどに白い花弁が降った。降りやまず、小さなつむじ風を起こしながら周囲をうめていく。
    「…なんだか、好かれてでもいるみてぇだな」
     非日常的な光景を前に、口からこぼれた言葉が妙に現実味を帯びて聞こえて、紅郎は頭上を見あげた。
    「こんだけ長く生きてりゃ、なにか宿ることもある…か…?」


     老齢のこの樹も今年の台風で倒れてしまうこと、それからのち、まだ童顔の青年の姿をした化身が、度々紅郎の周りで目撃されることなど、まだこの時は知るよしもない。


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    TRAINING桜樹の化身の守沢と、高校生鬼龍です
    とむさんとかほさんの桜紅千に触発されて、設定一部お借りしました🙏
    守沢が嬉しいと花びらが出現して花まみれになるので桜の傘を差しかける鬼龍…という理解をしました
    「鬼龍が傍にきてくれると嬉しくて花びらをよけいに降らせる(物理的にある以上に)守沢」しか書けてません(しかも人外)が、イメージがなければ書くこともなかったので…
    素敵なツイートありがとうございました🌸





    .はらはらと薄紅色の花弁が舞い落ちる。
     その広場はいつもひと気がない印象だった。奥に、ひときわ存在感を放つ桜の古木があるほかは、風雨にさらされて文字も判別しづらい歌碑のようなものが置かれているだけだ。樹からほどよく離れた位置に、石の腰掛けが二基。
     紅郎は自宅に近いこの場所によく足踏みする。
     日課のランニングの終わりにここのベンチで息をととのえたり、空手の型をさらったりするのだ。幼い頃から好きで続けているが、体格にもめぐまれた紅郎に向いていたのだろう。もうすぐ昇段試験というときなど、時間を忘れて鍛錬することもある。
     そんなときは、気づけば日の落ちた空を半分覆うように枝を伸ばした桜が、静かな風に葉を揺らしている。いちどに視界におさめきれないほどの樹勢をみやれば、高みから自分を見守る視線がそこにあるような気がしてくる。幼い紅郎はそう感じることを特に不思議にも思わず、かえって親しみをおぼえていた。

     冬がおわりに近づくにつれ、桜の樹は春への憧れを秘めてはりつめた気配を漂わせる。息をひそめて指折りかぞえてその日を待ち、花びらのまじないで閉じ込める。過ぎ去る刻を、人を 1099

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