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    🍞けい🍞

    @keikeikei3600
    アニメ、漫画、ゲーム好き。現在ほぼダイ大中心。推しは竜の勇者様。右側ネタ大好きです。ネタバレ・腐あり。ご注意を。最近腐要素多め、ポプダイ多めで垂れ流しております。

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    POIPOI 63

    🍞けい🍞

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    7/1~2開催「デルパリバリバ!」の展示。
    現パロポプダイシリーズ『オレの知らないあいつの事情』のリバver.の話。
    【相手が望むなら逆の立場もあり】と匂わせたまま結局ポプダイで終わった本編を、実際にリバにしてみました!!
    リバ(ダイポプ)を書くのは初!となります。書けてるといいな……!!
    前半ポプダイ、後半ダイポプ です。

    あいつの知らないオレの事情【ここまでのあらすじ&キャラ設定】
     
     ポップとダイは幼馴染。なんやかんや遠回りしつつも、半年前の夏に二人は恋人となった。
     秋には初めて身体を重ねた二人は、現在遠距離恋愛中。人並みに性欲も持ち合わせている彼らは、中々会えないそのもどかしさをテレセクで解消することもあった。
     そして季節は巡り春を迎え。両親が遠方に泊りがけで外出するのを利用し、ダイはポップに自宅へ来ないかと提案したのだが……。


     【ポップ】
     都会で一人暮らしをする大学生。二十歳。ダイのことはずっと昔から密かに好きだった。
     頭が良く、特にスケベに関しては更に頭の回転が早い。ダイとダイのおっぱいをこよなく愛している。
     初夜では抱く側だった。そのことに満足はしているものの、実は内心である心配事を抱えている。
     

     【ダイ】
     地元で実家暮らしの高校生。十七歳。ポップへの恋心を自覚したのは一年程前。童貞は前カノで卒業済。
     剣道部主将。日頃父親と競って行う筋トレの成果による見事なおっぱいの持ち主。
     ポップに甘く彼のお願いは大体聞いてしまうので、結果、三日間のお泊りで身体をいいように開発されてしまった。
     基本的にポップには、自らのことは包み隠さずに話しているはずだが……?




    ではでは、ここから本文です!!
    ↓↓↓↓↓↓↓


     三月下旬。カレンダーでは明日から祝日を含めた連休となる、その前夜。
     ポップはバイトを終えた後夕食を外で済ませると、帰り道のドラッグストアで必要な物を購入し、帰宅した。
     いつもならばすぐにシャワーに向かうところだが、持ち帰った紙袋をテーブルに置き、ソファに座る。腕を組み、思案するのは明日の夜のことだ。
    前と同じ・・・・なら何も問題はねえけど……違った・・・・場合、だよな……)
     目を閉じ、暫し「うーん……」と悩んだ後。
    「……よし」
     目を開き、気合を入れるようにそう呟くと、ポップは紙袋からチューブを取り出し、浴室へと向かった。


     ✽✽✽
     

     翌日の夕方、地元に帰省したポップはある家の呼び鈴を前に深呼吸を繰り返していた。
     ここが初めて訪れる家だからという訳でもないし、出会う人物が緊張を抱く人物だからという訳でもない。ここは、幼馴染であり現在の恋人でもあるダイの家。十年以上も前から何度も訪れた場所である。
     今回はダイにより家に招かれた為、こうして指定の時間に訪ねようとしているのだが、何しろ今までとは訳が違うのだ。
    (……よし。行くぜっ!)
     ピン……ポン。
     呼び鈴を鳴らし、数秒。ガチャリと玄関ドアが開き、目的の人物がひょこりと顔を出す。
    「い、いらっしゃい……」
    「お、おう……」
     あちらも意識しているのだろうか。いつもポップを軽快に出迎えるダイが、少し大人しい気がする。
    「おじゃましまーす」
     いつもならば、ポップが家に入ると同時に「あら、ポップくんいらっしゃい」と、リビングからダイの母が顔を出すのだが、今日はそれもなく静かで。今夜はダイの父親と共に遠方の親類の元へ出かけている為だ。
     そう。今夜はダイの母も、父もいない。ダイが一人きりで過ごす家に、ポップは招かれたのだ。


     玄関に靴を揃え、ダイに続いて玄関横のリビングダイニングへと続く扉をくぐる。
    「これ、母さんが持ってけって」
    「ありがとう。やった、苺だ!」
     手渡された白いビニール袋を覗き込んだダイが、嬉しそうに笑う。
    「そこのスーパーで買ったもんだけどよ。後で食おうぜ」
    「うん。冷蔵庫に入れとくな」 
     ポップはリビングのソファ脇に手荷物を置くと、キッチンへ向かうダイの背を目線で追った。
    「先にご飯食べる? あ、でも疲れてるなら風呂沸かそうか?」
     冷蔵庫に苺を仕舞い、再びリビングに戻ってきたダイがそう尋ねてくる。そんなダイをぐいっと引き寄せて、ポップは唇に軽く触れた。
    「それよりもおまえが先」
     至近距離で見つめると、目を見開くダイ。頬をわずかに赤く染め、そして素直に目を閉じた彼に、ポップは再び顔を寄せる。
     会話をするのは昨日振りだが、最後に対面したのは年始。キスをするのは約三か月振りだ。
    「……っ……ふ……」
    「は……っ……」
     舌を絡め合わせ、久しぶりの口づけに酔いしれていれば、じんと痺れるような甘さが頭に広がっていく。
    (あー……ヤッベ……。今日、あんまり我慢出来ねえかも)
     キスを交わしながら、ポップは早くも下半身に熱が溜まっていくのを感じていた。ダイが身につけているトップスの裾からするりと手を忍び込ませ、さわさわと腰の辺りを撫で擦る。
    「あ……ちょっ、と……!」 
     ぴくりと身体を震わせたダイは文句を言おうとするが、再びポップに唇を塞がれた。
    「ポッ、プ…! ちょ……まっ……んんっ!」 
    「ダイッ……っ…ダイ……!」
     文句ごと食べ尽くすつもりで、ダイの口内をうっとりと舌で味わいながら、腰の辺りを撫でていた手をそのまま移動させ、衣服をたくし上げていく──つもりだったポップの手は、しかしながらダイの手によりぐっ、と遮られた。残念ながら、腕力ではポップはダイに及ばないのだ。
    「……っ……ゴメちゃんが、見てるから……っ!」
    「……! ……ゴメ、か。へいへい」 
     言葉と共に軽くダイに睨まれたポップは、首を竦め、あっさりと手を離す。ポップも、流石にリビングでコトに及ぶつもりは毛頭ない。……ただ、ほんの少し調子に乗りすぎただけだ。
    「さ、先にご飯あっためちゃうな!」
    「おー」
     そそくさとポップから離れ、ダイはキッチンへ向かう。ポップはその背を横目で見ると、リビングの片隅へと足を進めた。
     向かった先には四角いバードケージ。その中では、黄色のセキセイインコが一羽、小首を傾げ、こちらを見つめていた。
    「よー、ゴメ! 元気かぁ」
    「ゲンキダヨ」
    「ははっ。相変わらず賢いなぁ、おまえ」
     チッチッ、と小さく鳴くこの愛らしいインコとも、ポップはもう十年ほどの長い付き合いになる。
     ある日ダイが家族揃ってショッピングモールに出かけた時のこと。昔からそれほど物を欲しがらないダイが、ペットショップの店頭にいたこの鳥の前から動かなくなったのだそうだ。じっとインコを見つめる幼いダイと、初対面なのに警戒もせず近くへと寄りそい、同じようにダイを見つめる黄色のインコ。我が子と友人の運命の出会いを見たようで、ダイの両親も無下に諦めさせることが憚られ、こうしてダイの家に招き入れられたという。
     頭の良い、このダイの小さな友人は、言葉を憶えるのも得意なようで、ダイやポップの会話を拾っては真似をして喋ることも度々あった。
     ──そう、ゴメは頭が良いのだ。だから、この部屋で下手なコトはできない。
     もしこの部屋で行為に及び、ダイのあんな声やポップのそんな台詞をゴメが真似してしまったら。
     家族が集うこの空間で、『ポップ、キモチイイ』とか『ココガイインダロ、ダイ』とかゴメが言い放ったりしたら。
     恐らく、いや十中八九、この家の一家団欒の温かな空気は一瞬にして南極ばりのブリザードへと変わるであろう。間違いない。真っ青な顔をした自分がこの部屋で土下座をした所で、果たして許してもらえるだろうか。
    「そんなに真剣にゴメちゃん見て……何かあったのか?」
    「へっ……!? あ、ああ……いや、別に」 
    「そう……? ご飯、準備できたから食べようよ」
     ゴメを見つめながら、随分とトリップしてしまっていたらしい。ダイニングテーブルには、いつの間にか二人分の食事が用意されていた。
    「悪りい、準備任せちまって。おっ! もしかしてビーフシチューか!?」
     ダイ一人に配膳を任せてしまったことを詫びると、ポップは食卓に並んだ料理に目を輝かせる。
    「そう。ポップが来るんなら、って昨夜母さんが作っておいてくれたんだ」
    「ラッキー! おまえの母さんのビーフシチュー、オレ好きなんだよなぁ!!」
     互いの家に遊びに行き、ついでに夕飯までちゃっかりご馳走になることも多かった二人。互いの母親の作る料理に、好物が出来るのも当然のことであった。
    「いっぱい作ってあるから、お代わりもあるよ」
    「ありがてえ!」
     ウキウキと、二人は食卓につく。テーブルの上に並ぶのは、ビーフシチューとサラダ、多めのバケットと、後はダイが商店街の惣菜店で買ってきたであろう惣菜がいくつか。
    「「いただきまーす!」」
     行儀良く手を合わせ、二人は夕食を食べ始めた。
     
     
      ***
     
     
    「ふー……」 
     夕食を終えた後、客人として一番湯を貰いながら、ポップはこの後のことを考えていた。
     ダイはキッチンで洗い物を終えた頃合いだろう。ポップも手伝う旨申し出たのだが、それほど量もないからと、先に風呂を勧められたのだった。
    (前にオレん家に来たときは、そういう展開にならねえように……って思ってたけど)
     思い出すのは、昨年秋にダイがポップの住むマンションを訪れた時のこと。当初はダイに手を出すまいとポップは考えていたのだが、今の状況はその時とまるで逆だ。
     両親が不在であることをわざわざ知らせた上で、ポップを招いたダイ。この展開はつまり世に言う『据え膳』というものだ。ダイにそれを伝えられてから約ひと月ほどの間、ポップは今日のこの日を指折り数えて待ちわびていた。
    (あー……ムラムラしてきちまった……!)
     久しぶりの行為で、ダイは一体どんな痴態を見せてくれるのか。ポップは普段通りを装いながらも、実は朝からそのことばかりを考えていたのである。
     だがしかし、一方でポップはある懸念も抱いていた。それは、『今回もダイは抱かれるつもりなのだろうか』ということだ。
    (もし……もし『抱きたい』って言われたら、オレは……!)
     二人は男同士。ダイを抱く前は、抱かれる側の想定もポップの中には生じていた。前回は話し合いの結果ポップが抱く側に回り、そしてその際、ポップに抱かれ乱れたダイの姿を、脳内とそしてスマートフォン内にバッチリ記録していたりするのだが。
     今の所ポップは、ダイを抱く側として想定しているのだが、ダイに『お願い』をされる可能性も考えられる。
    (いや……でも、さっきのリビングでの感じだと前と一緒だと思うんだけど……でもなー……あいつ妙に男らしい部分あるし……あーーーー……流れに任せるっきゃねえかな……)
     これ以上考え込んでいても埒が明かない、とポップは湯舟を出る。湯あたりしたのか少々頭がふらりとするが、この程度ならばすぐ落ち着くだろう。何しろ、数か月振りのセックスだ。ここで倒れたりしてお流れになってしまったら、一生後悔するに違いない。
    「お先ー。風呂ありがとな」 
     リビングに戻れば、ダイは既に洗い物を終え、ソファで寛いでいた。
    「あ、うん。飲み物、なんか飲む? ビールもあるけど」
    「や、それはいいよ。親父さんのだろ。水、もらっていいか?」
    「オッケー……そういう訳でもないけどね。はい」
    「サンキュ……ん? そうなのか?」 
     ウォーターサーバーから冷水を注いだグラスをダイに貰うと、ポップは口をつける。ゴクリと一口飲んで喉を潤すと、気になった部分を指摘した。
    「父さんもそうだけど、母さんも結構呑むんだよね。だから、今夜もあっちで親戚と呑んでるみたい。さっき電話あったから」
    「へえ……」
    (親父さんは想像通りとして、あのいかにも淑やかで美人なダイの母さんが、ね。人は見かけによらねえ、ってことか)
     幼馴染でも、まだ知らない事がよくあるものだと、ポップは思う。ダイの周辺のことは誰よりも熟知していると、思っていたのだが。
    「おれも風呂、入ってくるね。ゆっくりしてて。水は勝手に飲んじゃっていいから」
    「おう。ありがとな」
     リビングを出ていくダイを見送ると、ポップはソファで寛ぎ、ダイを待つことにした。
     
     
     四十分後。
    (意外とあいつ、結構長風呂なんだな)
     ちらりと壁掛け時計に目をやる。やはり幼馴染でもまだまだ知らないことはあるようだ。ポップは、全てをダイに明かしているつもりではあるが、もしかしたらダイもまた同じように、ポップについて知らないことが多いと思っているのかもしれない。
    (オレとおんなじように、この後のこと考えてムラムラしてたりしてな)
     ニシシ、と一人でほくそ笑んでいると、ようやく風呂上がりのダイがリビングに戻ってきた。
    「ごめんな、お待たせ」
     やはり長く風呂に浸かっていたのだろう。頬が上気しほんのりと色づいている。
     ダイはキッチンに向かうと、先程ポップに手渡したのと同様にウォーターサーバーからグラスへ水を注ぎ、一気に煽った。
     ごくごくと上下する喉仏に思わず目が吸い寄せられ、ポップは慌てて目線を逸らす。
    「あ……べ、別に気にしてねえよ。っつうか、おまえ長風呂派なのな。知らなかったぜ」
    「え……あ! え、ええと……う、うん、まあね……」
     ポップの言葉に、ダイは何故かはっとした顔をすると、不自然に言葉を紡ぐ。
    (この反応……! ひょっとして本当にオレがさっき思ってた通りだったり……?)
     この後の展開を考え、風呂場でムラムラとしていたのは自分だけではなかったのだろうか。そう思ったポップは、ダイに近づき。
    「ダイ」
     キッチンカウンターにグラスを置いたダイを抱き締めれば、ふわりと鼻腔を擽るシャンプーの香りと、身体を通して伝わる高めの体温。
     誘われるようにダイにキスを迫れば、ダイも分かっていたように抵抗もなくポップを受け入れる。
     軽く数度唇を触れ合わせ、徐々に触れ合う時間を長く、そして唇を食み、湿ったものへと変えていく。
    「ポッ……プ……ッ……」
    「ん……はっ…ダイ……」
     いよいよ舌を絡め合わせ本格的に深い口づけになろうとしたところで、不意にダイが唇を離した。
    「……なんだよ」
     不服そうなポップに、ダイは先程より更に上気した顔で控え目に告げる。
    「……部屋、行こ」
    「……!」
     抱き合い密着している為、互いの身体の反応などは分かりきっていた。無論、ポップに断る理由などあるはずもなく、二人は随分と早めにリビングを消灯させることにしたのだった。
     
     
     ***
     
     
     二階にあるダイの部屋へまずダイが入室し、その後にポップが続く。いつもならば、行為には及ばなくともキスは当たり前にようにしているので(無論付き合って以降の話だ)念の為鍵をかけるのだが、今夜はその必要もない。
     そして、部屋の隅にポップ用の布団が畳まれて用意されているものの、これまたこちらも今夜は使う必要がないだろう(これを用意してくれたであろう、ダイの母親には申し訳ないが)。
     ダイはベッドサイドの小さな明かりを点けると、たった今点けたばかりの部屋の電気を消した。
     先にベッドに腰を下ろしたダイが、期待をするようにポップを見つめている。ポップがダイに倣い横にぴったりくっつくように腰を下ろすと、どちらともなく吸い寄せられるように口づけを交わした。
     柔らかなダイの唇を食み、薄く開いた口内へと舌を忍び込ませる。すると待ち受けていたように、ダイの舌がポップの舌に絡む。
     今夜のダイは随分と積極的だ。ポップの中ではどうしてもお子様なイメージが抜け切らないダイだが、その辺は年相応の男子らしい。久し振りに会えた嬉しさもあるのだろうが、それだけではなく、こうしてポップとのセックスに前向きであることは、ポップにとって喜ばしいことだった。しかしポップの中では、再び懸念が燻り始めていた。
    「ん…ポッ、プ……はぁ…」 
    「ダイ………っ……」
    (すげぇグイグイ来てくれるのはいいんだけどよぉ……本当に逆側、ってことはねえよな……?)
     自然とポップの背中に回ったダイの手がそれ以上の動きを見せないことを一応確認すると、ポップは先手必勝とばかりに行動を開始した。
     脇腹から衣服の下へするりと手を侵入させる。先程はダイの手によって阻止されたが、今度は手を拒む様子はない。
    「……ぁ……」
     背中を撫であげるポップの動きに、ダイがふるりと身体を震わせる。そのまま手を身体の前側まで這わせると、左胸の突起をキュ、と摘んだ。
    「ぁう……っ!」
     感度は上々。先月のテレフォンセックスが効いているのかもしれない、とポップは頭の片隅で思う。
    「ダイ。また、オレが抱くけど……いいか」
     ポップの脳内で懸念事項がちらりと過ぎったが、今はダイを抱きたいという気持ちが勝る。しかしながらダイの意志の尊重を考え、ポップはダイに尋ねた。
    「あ……う、うん。……いいよ」 
     恥ずかしそうに目を伏せて、小さくダイは頷く。そこに渋る様子が見られないことにこっそりと安堵しつつ、ポップはダイの身体へ愛撫を続けた。
     キスをしたまま、指先で胸の飾りを捏ね回し、摘み上げる度、ぴくんとダイの身体が小さく跳ねる。そのままでは邪魔になるTシャツを、流れのまま脱がせてしまえば、露わになるダイの上半身。オレンジ色のライトが、部活で鍛えられた大胸筋に影を落とす。
    「へへぇ……相変わらずいーいおっぱいだなぁ」
     にへら、とポップが相好を崩すと、ダイは少々呆れたような視線をポップに向けた。
    「おまえこそ相変わらずだな……。男の胸なんか見て何が楽しいのさ」 
    「わかってねえなー、おまえ」
     ダイの反応に、今度は逆にポップが呆れると、ダイを勢いのままベッドへ押し倒す。
    「わっ!」
     ダイの頭がぼすんと枕に沈む。そのダイを見下ろすように、ポップはダイの身体に跨った。 
    「オレは、おまえのおっぱいだから興奮すんの。そこらのヤローの身体見て、勃つワケじゃねえからな」
    「……!」
     ポップの言葉に、目を丸くするダイ。
    「……ったく。本当に分かってなかったのかよ」
    「だ、だって……おまえ昔からおっぱい好きじゃんか」
    「あれは女の子だから! っていうか、あれは本能的なもんなんだよ!! そうじゃなくて……!」
    「ぅんっ!」
     唇を尖らせたポップが再びダイの胸の突起を摘めば、ダイから返ってくるのは思ったとおりの反応で。
     今度は両胸の突起をカリカリと同時に弄ってやると、途端に身体をビクつかせるダイ。
    「こうやって触ってやりてえのは、おまえだけっつうこと!」
    「ん! あっ! ちょ……わ、分かったからもう……っ!」
    「ダメ。久々なんだからもうちょっと」
     身を捩るダイの言葉など全く取り合わず、ポップはダイの胸へと顔を寄せる。
     ぐりぐりと顔を埋め、意外と柔らかい大胸筋を堪能する。
    「はぁーーー……♡」
    「そんなに柔らかくないだろ……」 
    「あー……幸せだ……」
    「そんなとこで幸せ感じられても……ぁんっ!」
     すっかり油断していたのか、胸に顔を埋めていたポップが突起をぺろりと舐めあげると、反射的にダイが悲鳴を上げた。そのまま突起を口に含むと、舌先でちろちろと愛撫をする。
    「あっ……ちょっ……ん、んっ!」
    (かーわい……)
     男の胸だから、などと言いつつも、こうして突起に愛撫を受ければ、途端に女の子のように反応するダイ。きゅっと口を結び、眉を寄せるその様子に、ポップはこっそり口の端に笑みを浮べた。
    (にしても、随分と感度のいいこと……!)
     四か月振りにして、ダイのこの反応。これもこいつの才能か……⁉などと、ポップはまたひとつダイのことを新たに知ったような気がしていた。
     胸への愛撫を口で続けながら、ダイの下半身へ手を伸ばすと、スウェットの上からでもはっきりと判る反応で。さっさと下着とスウェットを脱がせてしまえば、既に先端を濡らして勃ち上がったダイ自身が露わになった。
    「あ……!」
     思わず、羞恥の声を上げるダイ。ポップは口に含んでいた突起を離すと顔を上げ、ダイを安心させるかのように軽く触れるだけの口づけをする。そして今度は、男の象徴として存在を主張しているダイのソレを、ポップは愛おしそうにひと撫でし、躊躇いもなく自らの口元へ近づけた。
    「あっ…! ポップッ…! そ、れは……っ!! くっ……!」
     たっぷりを唾液を絡ませて、先端から根本までゆっくりと含んでいく。敏感な先端や裏筋を舌先が掠める度に、ダイは腰をビクつかせる。その反応に気をよくしたポップは、更にじゅぽじゅぽとストロークを始める。
     このような行為をしても嫌悪感がちっとも湧かないのは、ひとえに相手がダイであるからだ。他の男のモノに口淫を施すなど、想像しただけで気持ちもポップ自身も一瞬で萎える話だ。
     この上なく大切で愛おしいダイだからこそ、こうして様々な愛撫で気持ちよくさせてやりたいと思うのだし、そんな風に乱れる様を見たいと思うのだ。
    「あっ……はぁ…っ! ポ、ポップッ…! お、おれ……もうっ…!!」 
     本能的なものなのだろう、かくかくと腰を振る動きを見せるダイ。ダイの先走りとポップの唾液とで、既に手はベタベタだ。ポップは手と口を使い、更にダイを追い詰めていく。
    「だ、だめ…だって! も、離して…っ! あ! で、出るっっ……!!」
     ジュウッと口を窄めて射精を促すと、程なく口内に広がる生暖かい苦味。決して美味しい物とは言えないそれを、ポップは吐き出すこともなく飲み下した。
     くたりと脱力していたダイは、口元を雑に手で拭うポップをちらりと見ると、顔を顰める。
    「なんで吐き出さないんだよ……」
    「ん? 別に嫌じゃねえし……っていうか、前におまえもやっただろうが」
    「おれがするのは別にいいけど、ポップはしなくていいってば!」
    「なんだよ、それ。いいだろ、オレがそうしたいって思ったんだからよ」
    「うう~~~~」
    「ほら、続き続き。こっからが本番だろ?」
     未だ口の中に残る青臭い味が好きかどうかと聞かれればそうではないが、そうしたいと思えたのは何度も言うようにダイ相手だからで。
     口内で射精を受け止めさせたことに対し、ダイは罪悪感を抱いているのかもしれないが、ポップとしてはどうということはない。むしろ、ここからはこちらが(スキン越しではあるものの)内部で射精させてもらうのだから、本来ならばこちらが罪悪感を抱くべきなのかもしれないが。
     兎にも角にも、ポップは次の段階へ進む為に、自らもさっさと衣服を脱いでしまうことにした。
     衣類を全て取り払ってしまうと、この部屋へ移動する際に一緒に持ってきた、荷物の入ったボストンバッグをがさごそと漁る。今朝方バッグの底に仕舞った、スキンとゼリーを取り出す為だ。だが、ポップは想定外の出来事に焦ることになった。
    「あ、あれ……?」
    「……どうしたんだ?」
    「…………」
    (…………ゼリーが……ねえっっ!?!?)
     スキンは見つかった。だが……潤滑剤となるゼリーのチューブが、バッグの何処を探しても見つからないのだ。アレがなければ、挿入どころか慣らすことにさえ苦痛を伴うだろう。
    (落ち着け……思い出すんだ。そう、昨夜は……)
     昨夜のバイト帰り。自宅近くのドラッグストアにて、スキンとゼリーを購入した。前回と同じ、『0.01』と大きく書かれた赤い箱、そして同じメーカーのゼリーだ。途中で足りなくなっても困ると思い、内容量三個と少なめのスキンは三箱用意した。それらを、今朝支度をする際にバッグに詰めたのだが。
     何発いけっかな~、などど今夜のことを思い浮かべながら浮ついた心で荷造りをしていた為、うっかり詰めるのを忘れてしまったのだった──バスルームにて昨夜使用し、そのまま置き忘れたゼリーを。
    (うわー……やっちまった……!!)
    「…………最悪だっ……!」
    「……ポップ……?」 
     バッグに手を突っ込んだまま項垂れるポップの様子を訝しんだダイが声をかける。
    (……どうする。ゼリー無しでするか? いや、流石に無しはダイも痛てえだろ。ダイが持ってたり……は、しねえよな多分。…………しょうがねえか)
    「なあ、ポップ……!」
    「すまねえ、ダイ。オレ、ちょっとひとっ走り行ってくるわ」
    「は?」
     固まったままだったポップがようやく口を開いたかと思えば、意味不明な言葉を口に出し、ダイはぱちくりと瞳を瞬かせる。
    「ゼリー、忘れてきちまったからよ。ちょっとドラッグストアまで行って買ってくる」
     今しがた脱いだばかりの下着を、力なく拾うポップ。
    「ゼ、ゼリー……?」
    「無いと困るだろ。お互い痛てえと辛えし。……帰ってきたら仕切り直ししようぜ」
     下着を履き、のろのろと今日履いてきたデニムパンツをバッグから取り出そうとするが。
    「あ……あるよ」
     ダイの言葉に、ポップの動きはピタリと止まる。
    「え……ほ、本当か」
    「う、うん。一応……あるけど」
    「な、なんだよ~。用意しておいてくれたのか?」
    「……まあ……そんなところ」
     行為をこのまま継続できると分かりポップは途端に安堵の笑みを浮かべた。ところが、ダイの方は煮えきらない顔で。
    (ん?)
    「ほら、どこにあるんだよ? 貸してくれ」
     疑問に思いながらも、ダイに先を促すポップ。履いたばかりの下着は、再びぽいと床に放られる。
    「うん……」
     ポップの目を見ないようにしながら、ダイはベッドの脇にある机の、その引き出しのひとつを開ける。奥に仕舞ってある紙袋を取り出し、そしてそれをポップの側に置いた。 
     早速がさごそとポップが覗き込むと、中にはポップが持参したものと同じスキンが一箱、そして持参しそびれたものと同じゼリーのチューブが一本。
     手を中に突っ込み、紙袋からまずスキンを、そしてゼリーを取り出し──ポップは、気づいた。
    「あれ? ……何でこれ、こんな少ねえんだ?」
    「…………」
     ダイは答えない。先程から、気まずそうに目線をポップから外したままだ。
     ポップが取り出したチューブは、重さから推察するに恐らく半分ほど、いやそれ以下かもしれない。要は、開封したばかりの物より明らかに量が少ないのだ。
    「へぇ…………まさか誰かと・・・使ったわけじゃねえ……よな?」
     ほんの一瞬その可能性を想像し、思いのほか低い声が出てしまった。だが、これはダイに対して問うた訳ではなく、自問自答のようなものだ。
    「へーえ……ふーん…………」
     ポップは、相変わらず沈黙したままのダイを再びベッドに押し倒す。身体をダイの脚の間に潜り込ませると、チューブを見せつけ、今度はダイに問う。
    「なあ、おまえが使ったんだろ? ……これ、どうやって・・・・・使ったんだ?」
    「……っ!!」 
     にやあと笑いダイを見下ろすポップと、無言のまま羞恥に顔を真っ赤にして視線を逸らすダイ。
    「言えねえなら、オレが当ててやろうか? それとも……」
     チューブのキャップを開け、中身を手のひらに出しながらポップは更に言った。
    「身体に聞いてやろうか……?」
     チューブの中身を纏わりつかせた指をダイの後孔へと添えると、躊躇することもなく、まずは中指を挿入する。
    「あっ……!」
     ダイの身体が強張るが、苦痛を感じている様子は見られず、ポップは己の予想が当たっていることを確信する。
    (なるほどね……)
    「四か月ぶり……の割には、ズブズブ挿入ってくけど?」
    「んんっ……あっ……! ち、ちがっ……」
    「違わねえよ。ほら、二本目ももう挿れて平気そうだし」
     既に内部に入り込んでいる中指に添えるように、人差し指も挿入していく。抵抗することもなく、あっさりとポップの指を飲み込んでいくその様は、酷く淫猥で。
    「あ! あっ…! ふぅ…んっ!」
     ぐちぐちと内部を擦りながら抜き差しを繰り返すと、ダイは切なげに眉根を寄せ、甘い吐息を漏らす。それが快楽から生じたものであることは、再び頭をもたげたダイの雄が明らかにしていた。
    「なぁ、ダーイ? いつの間に、おまえこんなにエッチな身体になっちゃったワケ?」
    「……っ!! ~~~っっ!!」
     ポップが意地悪く耳元でそう囁くと、ダイはいつものきりりとした目を今にも泣き出しそうに潤ませ、ぷいと横を向く。
    「ふぅーん……。あっそ。言うつもりはねえ、ってか」
    「……っあ! ん……ぅ……!」
    (それなら、こっちも作戦を変えるか……!)
    『言わぬなら言わせてやるぜ恋人に』。ダイが自ら言うつもりがないのであれば、どうしても言わせたくなるのがポップという男であった。もともと頭脳とスケベに関しては、ダイよりも数手は上手うわてであるという自負がある。 
     ただ迫るよりも、あれやこれやと周りから追い立てていく戦法をポップは取ることにした。
    「ま、それならオレの推理を聞かせてやろうか」
    「は……っ……推、理?」
    「っそ。まずー?」 
     ダイの胎内で蠢かせていた二本の指はそのままに、三本目の指を追加する。
    「ひ、ぁっ!」
    「さっきも言った通り、四か月ぶりにしちゃあこぉんなにスムーズに指が入ってくだろ? そして、さっきのおまえの風呂の長さから推測するに……おまえ、準備したんだな? ここ、自分で」
    「っあ……!!」
     トン、と中のしこりを中指で突いてやると、ダイが悲鳴を上げた。
    「あ、んっ! それっ……やめ……っ!!」
     びくびくと戦慄くダイを、ポップは笑みを湛えたまま見下ろす。勿論、そうして口を動かしている間も、その手の動きが止まることはない。
    「で、だ。初めて準備をしたにしちゃあ、風呂を出るのが早すぎる。これは、初めて解してやったオレが言うんだから間違いねえ。つまり……」 
    「んぁっ……!?」
     ダイの内部をぬぷぬぷと掻き回していた指を、ポップはさっと引き抜く。そしてダイと数センチの至近距離で目を合わせると、その推理を突きつけた。
    「おまえが自分でここを解すのは、今日が初めてじゃねえっつうことだ。違うか? ん?」 
    「……っっ! ぅうーーーっ……」
     悔しさと羞恥の入り混じった表情で唸るダイのなんと可愛らしいことか!
    (くうぅっ……! もう挿入れちまいてぇ……!!)
     とうにポップの方も臨戦態勢にある。随分前から熱を帯びたソコは、既にぎちぎちに硬く張り詰め苦しいほどだ。
     しかしポップは内心の興奮と暴れ出しそうな下半身を抑え、側に放置していたチューブを手に取り、ダイに見せつける。
    「それにこのゼリーの量。今日初めて使ったんなら、こんなに減ってる訳ねえもんな?」
     残りはあと数回分。恐らく今夜中には使い切ってしまうであろう。
     ぽいと再びチューブを放ると、ポップは代わりにスキンの箱を手に取った。チューブとは違い、未開封のままの箱のセロハンをぴりりと破り、箱を開けて中身を取り出す。
    「で? どうよ、オレの名推理は?」
    「…………」
    「ダーイ? ちゃあんと答えを言えたら……お前の欲しいモン、やるぜ?」
     真四角のパッケージの隅を歯で咥え、引き裂く。中身を取り出し、自身に装着し、そして。
    「なあ? ……答えは?」
     ダイの両太腿を抱え、期待にひくりと収縮する蕾に、先端を擦り付けると、ようやく観念したのかダイが引き結んでいた口を開いた。
    「……~~~っ……せいか……ひっ…ぁあんっ!」
     分かりきったダイの答えを完全に聞き取る前に、ポップは昂った自身をずぷりと挿入する。
    (う、わ……っ!! これ、マズい……っ!)
     久しぶりに味わう感覚。きゅうきゅうと締め付けるダイの胎内は熱く、そして蕩けそうなほど心地良く。 
    「は……っ! あ、あ……っ!」
    「くぅ……っ!」 
     四か月ぶりのセックスで、自分にあまり余裕のないことは分かっていた。けれどダイの方は、ひょっとしたら慣れるまでは少々の苦痛を伴うかもしれない。この部屋に来るまでは、そんな風に思っていたのに──!
     ポップの昂りに絡みつくように蠢くダイの胎内は、ポップのそんな心配をまるで意味のないものにしてしまった。
     四か月という隔たりを感じさせずに、ダイの蕾はポップの昂りを拒むことなく受け入れた。いや、受け入れるどころか、もっともっとと催促するかのように、嬉々としてポップを締め付けているのだ。
    (こんっな……エロい身体だなんて聞いてねえぞ……っ!?)
     根本まで飲み込まれた自身をギリギリまで引き抜き、また再びずぶずぶと差し込んでゆく。上部の肉襞を先端で擦りあげながら、ゆっくりとストロークを繰り返す。
    「あ、うっ…! はんっ! あ、アッ! …あっ…はあぁ……っ!」
     ポップの突き上げる動きに合わせ、ベッドの上でダイの身体が弓なりにしなる。まだ挿入したばかりだというのに、とろりと目は融け、半開きになった口からぽってりとした朱い舌が覗きいやに艶かしい。
    「ずいぶんとっ、気持ちよさそうにしてんなっ…! 四ヶ月ぶりのチンコの味はっ、どうだよっ!?」
     今度は浅い部分を小刻みにとんとんと突くと、堪らないというように、ダイは左右に頭を振りながら、嬌声を上げた。
    「あんっ! ア! それっ…! やっ! や、だぁっ……!」
    「なーにが、『やだ』だよっ! チンコ欲しくて自分で弄ってたんだろうがっ!?」
    「うっ…あ、それ、はぁ……っ! お、まえのっ……ぁ、ア!」 
    「オレの?」
    「ん、んっ! おま……えの……っ! おま、えのぉっ! せ……っい、ひぃっ! や、あぁ……っっ!!」
    「オレの、せいだって?」 
     ずぶり、と再び奥まで差し込みながら弱い部分を突いてやると、きゅうと一層ポップを締め付けるダイの後孔。
    「そうだな…っ! 確かに、おまえのことを後ろでも気持ち良くなれるようにしたのはオレだよな…っ!」
    「あ……あぅッッ! ア! そこッッ…!! や……っっ!!」
    「けど……おまえが自分で弄ってるとか予想外だっつのっっ!!」
     パンッと肌のぶつかり合う音に、ぐちゅりと粘着質な水音が混じる。
    「あ、ひぃ……っ! んッ! あっ……だ、だってぇ……! ん、あっ!」
    「わーかってるって」
     体勢を変える為に自身を一旦引き抜くと、ダイの両膝裏に手を添えぐいっと持ち上げ、ダイの身体をくの字に折り曲げた。物欲しそうに収縮する後孔が目に入り、その卑猥さにポップは上唇をぺろりと舐める。
    「ちゃーんと満足させてやるから」
    「っ……!! あ! あぁぁあっっっ……!!」
     宣言と共に、再び熱い胎内を一気に穿つ。身体を隙間無く密着させるように上から体重をかけると、より繋がりが深くなった為か一層高い嬌声と同時にぎゅうぅと内部が締まった。
    「あぅ…っ! あンッ!! ア!! それ…っ!! だ、めぇっっ!!」
    「は……うっ…! クソッ……持たねぇ……っ!!」
     これまで余裕のある振りを見せていたポップも、もう既に限界を迎えていた。断続的に、上から打ち付けるように、一心不乱にダイの熱い内部を貪る。
    (あー……無理無理っ! 我慢なんかできるかっつーのっっ!!)
    「ひ……あっ…! ポッ……プッ!! あっ…! ンッ! ……だめ…っ!! やッ! ア! あっっ!!」
    「う、ぐっ……! やべぇ…も……っ!」
     ダイの身体が小刻みに震え、そのつま先が強ばり丸まって。
    「は…あっ! ポップ……ッ!」
    「あっ……! ダ、イッッ…!!」
     互いに高みへと上り詰めるその瞬間、どちらともなく顔を引き寄せあい、そして唇を重ね。
    「んッ! ふ、むっ…! んっ! んんーーーーっっっ!!!」
    「っっ……!! ん……っ! ぐ、うぅっっ……!!!」
     どくんっと、熱が弾け。本能のままに、先端をダイの身体の奥へと数度に渡ってぐぐと擦り付ける。頭を占めるのは、ふわふわとした解放感とそれに勝るとも劣らない多幸感。
     じゅうっと強めに舌を吸った後に唇を離せば、二人の間をつうっと透明な糸が伝わった。
     まだ快楽の名残があるのか、ダイは恍惚とした表情のままベッドに沈んでいる。
     ポップは、まだダイの胎内に収まったままの自身を抜くと、重さを増したスキンを外して結び、ティッシュに包みゴミ箱へ放る。ひとまず第一ラウンドは終了だ。
     ポップは再びダイに上から覆い被さると、ちゅ、ちゅと軽めの口づけを順に落としていく。唇に、眦に、頬に、耳に、首筋に……と唇で触れ、時折ちろりと舌先で悪戯をして。
    「なあ……気持ちよかったか?」
    「んぁ……え?」
    「久しぶりにエッチして、気持ちよかったか、って」
    「え……あ、うん……!」
    「ん……そりゃ、よかった。けどよ……おまえ、本当にソッチ側でいいのか?」
    「ん?」
    「オレに抱かれる側でいいのかって」
     とりあえず、第一ラウンドは今回もポップが抱く側だった。しかし恋人ならばやはり確認はすべきだろうとポップはダイに尋ねる。
     そんなことを聞かれるとは思っていなかったのか、少し考えるような素振りを見せるダイ。
    「んー……ポップは、おれに抱かれたいのか?」
    「え。あー……おまえが抱きてえっつうなら、まぁその……受け入れる、つもりではあるけど……よ」
     ぼそぼそと、昨夜から考えていたことを口にする。何度も言うように、二人は男同士。ダイにその気があるのならば受け止めてやるのが恋人だろう、とポップは思っていたのだ。
     しかし、実を言えばそれだけではなく。
     元よりスケベな気質、快楽には弱いと自負のあるポップ。『気持ちのいいことなら、一度経験してみるのもアリか』。ダイを抱きつつ、そんな興味も内心で沸々と湧きつつあるのであった。
    (ダイのやつ……さっきすげえ気持ちよさそうにしてたけど、チンコ突っ込まれんのってそんなに気持ちいいのか……!?)
     そんなポップの内心など知らず、きょとんとした顔でダイは言う。
    「おれは逆に、ポップが抱かれたいって言うならそうしてもいいけど……」
    「……やっぱり?」
    (だよなー……)
    「どうする? おれは……このままでもいいよ? ポップに抱かれるの気持ちいいもん」
    「そっ、か……けど、そ、そんなに……気持ちいいのか? その……ソッチ側って」
     ダイの返事に従うのならば、このまま抱く側でもポップは何ら問題はなかったのだ。しかしスケベに関しては人一倍旺盛なその好奇心を、ポップは抑えることが出来なかった。
    「……やってみれば? ポップも」
    「……っ! ……あー……えっと……そ、そこまで言うならやってみる……か、な」
     頬を掻きながらポップが呟く。にっこりと笑うダイ。
    「いいよ! じゃあ、交代しよっか!」
    「お、おう……よろしく頼むぜ……!」
    (……い……言っちまったあぁぁ~~!!)
     立場逆転。第二ラウンドのスタートである。


     先程とは逆に、ポップは仰向けに身体を横たえ、ダイを見上げる。これから抱かれる立場だというのに、ついついダイの胸元に目線がいってしまうのは、ポップの性だ。
    「じゃあ……するよ? いい?」
     チューブからゼリーを多めに手に取りながら、ダイはポップに最終確認をした。
    「ああ……いいぜ」
     ごくりと一つ唾を飲み込むと、ポップは脚を開く。初めてのことに少しだけ羞恥心が湧き上がるが、ダイもこうして全てを曝け出してくれたのだと思えば、耐えられることではある。
    「力、抜いててね」
     粘液を絡ませたダイの指が、そっとポップの後孔に触れ、ゆっくりと中へ侵入してくる。
    「う……」
     反射的に声が出るが、痛みはない。
    「平気?」
    「あ、ああ……けど、すげえ違和感あるよな。やっぱり」
    「うん、おれも最初はそうだったよ。……少しずつ動かしていくね」
     ダイはそう言って、ポップの様子を伺いながら挿入させた指をそろそろと動かす。自らを慰めていたやり方を思い出しつつ施しているのだろうか。ポップが痛みを感じぬよう気遣うダイの優しさは嬉しいのだが、ポップにはそれが少々もどかしくもある。
    「ダイ、もっと、その……してもいいぜ?」
    「え、でも」
    「い、いいから! ほら……」
    「う、うん……」
     ダイは戸惑っているようだったが、ポップに促され、少し動きを強める。くちくちと円を描くようにして入り口を少しずつ拡げていく。時折指先が前立腺を掠める度に、ポップの口からは短い悲鳴が漏れ出た。
    「……ん……っふ……ぁあっ……!」
    「ここ、声出ちゃうでしょ?」
     ダイの指が、とんっとしこりを叩く。
    「んぁ……!」
     思わず上がる声と跳ねる身体に、ポップは顔を赤らめる。
    (ダ、ダメだっ! 声、出ちまうっ……! 昨夜は、こんな風にならなかったのに……!)
    「前立腺、だっけ? 前にポップ言ってたよね。ねえ、どうかな? 気持ちいい?」
    「あっ……バ、バカッ……! んなこと……っん! き、聞くな……っあ!」
     この感覚が果たして『気持ちいい』という感覚なのかどうか、まだポップには判断出来ない。しかしダイがその場所を重点的に擦り始めたことと、何より先程ポップ自身が受け入れる側のダイに対して同じことをしていたことから、恐らくそう・・なのだろうと、ポップは思った。
     その証拠に、ポップの後孔は徐々にダイの指を受け入れることに順応しつつある。ダイは挿入する指を二本に増やし、更にポップの内部を拡げていく。
    「んっ……な、なんで……こんな……ひぅっ! 昨夜は……っあ! こんなに……っくぅ……!」
    「昨夜?」
     ポップの胎内をぐちぐちと弄っていたダイが、その言葉を聞いて手を止める。
    「昨夜って……もしかして、ポップ準備したのか?」
    「……っ!!」
    (なんでこういう時だけカンがいいんだよっ! おまえは!?)
     かああと羞恥に顔を紅く染め、目を見開き固まるポップ。ダイはその様子をイエスと捉えたのだろう。嬉しそうににこぉと微笑む。
    「おれのこと、気にしてくれたんだね。嬉しい」
     ポップのことを揶揄う風でもなく、ダイはそう言ってそっと触れるだけのキスをポップに落とす。
     ポップとしては、先程ダイに対してあれだけの名推理を披露した手前、実は自分もそうでしたと白状するのはかなり気まずいのだ。もうここは、さっさと進んでしまうに越したことはない。
    「ほ、ほら! さっさと進めちまえよ! オレの気が変わらねえうちに……っ!」
    「あ、うん。じゃあ……」
    「んぁっ!」
     再び動きを再開するダイの指。的確にポップの弱い部分を擦るその動きに、ポップは翻弄される。
    「……っあ! ひっ……ぐ……っ…ぁあっ!」
    「なんか……自分でやるよりやりやすいね、これ」
    「そ……かよ……っ! ふ…ぁ……っ! あ!」
     先程までは、己がダイを翻弄する側で。昨夜自らで準備をしていた時は、こんな上ずった声など出なかったのに、今は見事にダイに翻弄されている。
    (昨夜と……全然違げえ……っ! 声は出ちまうし、身体はビクビクするしっ!)
    「ふぅ……っん! んぁ…! あ! く……っ!」
    「ちょっと慣れてきた? もう一本いけそうかも」
     増える圧迫感。けれど想像していたような痛みはなく、自分が受け入れる側の身体になりつつあることをポップはまざまざと思い知らされる。
    「あ、んっ! ひっ……んぁ……っ!」
    (クソッ……! さっきからダイにやられっぱなしじゃねえか……っ!)
     想定外の事態に、ポップは涙目で悔しまぎれにダイを軽く睨む。が、余裕の表情を浮かべているかと思われたダイの、何かを耐えるかのように潜められている眉が、引き結んだ口元が、そして何よりも、先程のポップ同様ギチギチと固く勃ち上がっているダイの雄が目に入り、ポップは考えを改める。
    (なんだ……余裕ねえの、オレだけじゃねえじゃん……!)
     これまで受け入れる立場であったダイも、結局は同じ男なのだ。決して余裕がある訳ではなく、初めて受け入れる側になるポップの負担を考えて丁寧に進めてくれていただけなのだと分かり、ポップの中でダイへの愛おしさが増していく。
    (オレも、受け入れてやんなきゃな……!)
    「な……もう……いいぜ……っ。挿れろよ……っ! ……っあ!」
    「……いいの?」
     ごくり、とダイの喉仏が上下するのが見えた。
    「ああ。おまえも、限界だろ?」
    「……っ!」
     片手でダイの雄をきゅ、と軽く握ると、ダイが小さく息を詰める。
    「……ほら」
     ダイを招き入れるように、ポップは両手を広げへらりと笑った。招かれた方のダイは、小さく息を吐くと、傍らに無造作に置かれた長方形の箱へ手を伸ばした。中からパッケージを一つ取り出して破る。
    「本当に、いいんだね?」
    「今さらだろ……早く、挿れろよ」
     今度は煽るように、にやりとポップは笑う。
     ダイも、今度は躊躇わなかった。手早く自身にスキンを装着すると、ポップの脚を両手で持ち上げ、先端をポップの後孔にひたりと押し付ける。
    「……いくよ」
     ずぷ、とダイの雄がゆっくりと侵入してくる感覚に、ポップは息を詰める。
    「ぐ……っ……う……」
    (うぁ……苦し……!)
    「ポップ……! ちょっと、力抜いて……!」
    「ンなこと言っても……っく……!」
     は、は、と短い感覚で呼吸をするポップ。ダイの方も少々苦しいのか、眉を寄せ、歯を食いしばる。
    「ぐ……もうちょっと……!」
     少しずつ、少しずつ、ダイはポップの内部を圧迫していき。ようやく奥まで侵入したのか、大きく息を吐き出したダイが動きを止めた。
    「……ポップ、平気?」
    「ああ……なんとか、な」
     想像以上の苦しさに、ポップも大きく深呼吸をする。
    (一応挿入ったんだ、よな? コッチ側、やっぱ慣れねえとキツいな……)
    「ポップが落ち着いたら、動くね」
     そう言って、ダイはポップに口付ける。
    「ん……ふぁ……」
     唇を優しく食み、舌を絡めとり、けれど咥内を蹂躙するような荒々しさはない、慰めのようなキスを受け止めながら、ポップは強ばった身体から次第に力が抜けていくのを感じていた。
     唇を離したダイは、ポップに緩く微笑む。
     先程はダイを抱く立場。今度は、自分がダイに抱かれる立場。立場が逆転したとしても、ダイを愛おしいと思う気持ちに変わりはない。
    (……色々心配しちまってたけど、全然必要なかったな)
     ダイの背中に回した手に力を込める。
    「もう、動いていいぜ」
    「……大丈夫?」
    「ああ……早く、コッチも気持ちいいのを教えてくれよ」
    「もう! そうやって煽るなよ……!」
     先程と同様にゆっくりと、ダイは律動を開始する。内部が馴染み、挿入時に感じた苦しさは少し和らいだように感じる。
    「はっ……ん…あっ! ……うっ……」
    「……っ……!」
     とん、とん、と一定のリズムで、ダイはポップの奥を突き上げる。まだその感覚には慣れないが、弱い部分に擦れる度に、ポップの身体は自然と戦慄き、口からは嬌声が漏れた。
    「ひっ……ぁあっ! あ! ん……んぁっ!」
    (声、とまんねえっ……! けど、ちょっと……イイ、かも……?)
    「は……っ! っく……」
     苦しさと痛みで一旦は落ち着いた身体が、ダイに穿たれ再び高まっていく。
    「ダ、イ……ッ! あ、あ…っ…! ん、ふっ……」
    「ポップッ……! ん、む…っ」
     口づけを交わせば、先程はゆったりと穏やかだったダイの舌が、今度はポップの口内を貪るような動きに変わり。ダイが、ポップの身体で興奮しているのだと否が応でも分かり、ポップは思わず笑みを浮かべた。
    「は…っ…ちょっと、慣れて…きた……っ?」
    「ん、あ……っ! ちょ、と……っ…だ、けな……ぁうっ!」
    「そ、か……! よかった……」
     ダイは額にうっすらと汗を滲ませて微笑む。
     ダイが、初めて抱かれる側に回ったポップを気遣っていることは充分分かっている。そしてまた、ポップを抱く側として快楽を感じていることも。
     しかし、先程はポップに穿かれて乱れていたダイが、今度は何だか余裕があるように見え、ポップはどこか面白くない。
    (なんか……こう……必死さが足りねえ……っ!)
     段々と快楽に流されそうになる頭をどうにか回転させる。最早、聴きなれない自分の喘ぎ声が自然に出ることにも、身体がビクビクと震えることにも抗うつもりはない。けれど、同じようにダイにも快楽に溺れて欲しいのだが。
     そんな風に考えながら必死の抵抗を続けていたポップだが、あることにふと気づいた。ダイの胸が、すぐそこに無防備に晒されていることに──。
     くにっ。
    「ひぁ……っ!」
     思わず声を上げたダイは、動きを止め、ポップを見やる。
    「へ、へへへ……」
     にやあと笑うポップ。自分が責められる立場でも、さがには逆らわないのがポップという男だった。
    「……胸、触るの禁止」
     むぅと唇を尖らせてダイは言う。片手で胸を庇うように、上体を上げてポップから距離を取る。
    「えぇ〜……!」
    「『えぇ〜』じゃないよっ! 集中できないだろっ!」
    「だってよぉ……そこにおまえのおっぱいがあるからさぁ……」
     立場が変わり抱く側になったとしても、変わらず胸への刺激に弱いダイの反応に、ポップはにへらと愛好を崩す。しかし、それがいけなかった。
    「おれの胸触るってことは、もう余裕ってことでいいんだよね?」
     ポップを上から見下ろすダイの瞳がギラリと光り、剣呑な雰囲気を纏わせる。
    「ん!?」
     ダイは一旦自身を引き抜くと、ぐるんとポップの身体をうつ伏せに反転させる。ポップよりも力のあるダイには、造作もないことだ。
    「……おれは、『煽るな』って忠告したよ?」
     ダイはポップに覆い被さるように身体を密着させ、ポップの耳元でそう言い放つ。そしてずぶりと今度は躊躇いなくポップの中へ自身を侵入させた。
    「あ……っ!  ああぁ……っ!!」
     一気に中が埋まる圧迫感に、ポップの口から一際大きな悲鳴が上がる。
    「あ! ま、まて……っ! ま……ダイッ……!」
    「待たない」
     ポップを腕の中に閉じ込めるように抑え込むと、背後から思い切り穿つ。先程のゆるゆるとした律動とは打って変わって、荒々しく身体の奥まで掻き回される動きにポップは身を捩らせる。
    「んあっ……!! あ! は、ぁ……っ! ぐ……ぅあ……!」
    (う、動き……全然違えっっっ……!!)
    「ん……っ! ポップのなか、きもちぃ……っ!」
     背中から伝わってくる、ダイの少し高い体温。弾力のある胸。耳元にかかる、ダイの熱い吐息。
    (う、わっっ……!)
     繋がった下半身からぞわぞわと快楽がせり上がってくる。感覚から逃れるように、枕に顔を埋めるポップ。しかしそれは逆効果で。
    (あ……ダイの、匂いする……)
     匂いと、体温と、身体の隅々でダイを感じ、ポップの脳内は益々とろりと蕩けていく。
    「んんっ……! ン! う、ぅ〜〜ーっっっ!!」
     ぐぷっぐぷっ、と奥を突き上げられる度、まるでぐずぐずと身体の内部から崩されていくようで。
    (こ、れ……マズい…っ!!)
     ポップは枕に顔を埋め、声を抑えようとした。
     しかし、上から覆い被さっていたダイは体勢を変える。ポップを背後から抱き締めたままベッドに横向きになり、片手でぐいとポップの片脚を腹につくように抱える。
    「声、出してよ……っ」
    「っ! っや! ダッ……! み、み……ひっ…! しゃべ…っなあ…っ! ひ、っあ……!」
     ダイが腰を打ち付ける動きに合わせて身体が揺さぶられるが、ポップにはどうしようもなく、手元にある枕をただ必死に掴むことしかできず。
     かき乱されるポップに追い打ちをかけるかのように、ポップの腰に添えていた片手を前に伸ばしてダイはポップの雄に触れた。ゆるゆると上下に扱かれると、既に先走りがとろとろに溢れたソコは、ダイの手の動きに合わせ、ぬちぬちと卑猥な音をたてる。
    「う、あぁっ…! やめッ! そ、れ! だめ……っ! ッあ! イ……っまう……ぁらあ…っ!」
    「うん……っ! いいよ……イって…!」
     耳元で、そうダイに囁かれ。ぐぷんと音が聞こえてきそうな程に、一層深く、身体の奥を何度も穿かれ。無防備にさらされた自身は、なすすべもなくダイの手の中で震え。
    「ア! ダメだっ! イくっ! イっちま……っ! っああぁァァぁっっっ…………!!」
    「ぐ……っ……おれも……っっ!!」
     ポップはダイの手の中に、びゅるりと精を吐き出す。身体がびくんびくんと痙攣し、ダイを受け入れた後孔がぎゅうと一層締まる。
     ポップの身体を強く抱き締めるように下半身を密着させ、低く呻くダイ。ダイもポップの中で達したのだとポップには分かった。
     未だ覚束ない意識で、ポップはくったりと脱力しぜいぜいと呼吸を繰り返す。
    「っはぁ……はぁ……」
     ダイもまた、ポップの肩口に顔を埋めるようにして大きく呼吸する。その吐息が首筋にかかり、ポップは無意識に身体をふるりとさせた。
     ポップよりも先に呼吸を整えたダイが、ポップの胎内から自身を引き抜く。後処理をしたスキンとティッシュをゴミ箱へ放るのを、ポップはぼんやりと眺めながら思う。
    (あー……やっぱ好きだわ……)
     ポップを容赦なく責めるギラギラした雄の顔と、ポップに抱かれて融けたトロトロの雌の顔と。ギャップは凄まじいが、それが堪らなく愛おしく、そしてそれがどちらも自分にだけ向けられた表情なのだということがどうしようもないくらいに嬉しい。
    「はぁーーーー……」
    「ど、どうしたの? もしかして……よく、なかった?」
     思わずポップの口から漏れた溜息を勘違いしたのだろう。ダイがしゅんと不安げな顔でポップを伺う。
    「ちっげえよ!」
    「うわ!」
     僅かに上半身を持ち上げぐいっと両腕でダイを引き寄せると、ポップはそのまま再びベッドへ倒れ込んだ。
    「うん……いいんじゃ、ねえの。コッチ側も」
    「そ……っかぁ……! よかった!!」
     先程のような獰猛さは欠片も見せず、へへと嬉しそうに笑うダイ。
    (このギャップに弱えんだよな……)
     ダイに釣られ、ポップも笑みを浮かべる。
     結局のところ、ポップの昨夜からの懸念事項は悩むだけ無駄だったということだ。相手がダイならば、抱く側であろうと抱かれる側であろうと、ポップにとっては『気持ちいいこと』に変わりはないことが分かった。そしてきっとそのことを、ダイも同じように感じているのだろう。
     ポップは机の上のデジタル時計にちらりと視線を送る。早めに寝室へと移動してきた為、まだ時間はたっぷりある。
     近づいてくるダイの唇を迎えながら、ポップはそろりとダイの胸へ手を伸ばすのであった。
     二人の夜はまだまだ終わらない──。


     ✽✽✽


     翌朝、目覚めた二人が揃って階段を降りてきたところで、家の電話が鳴り響いた。
    「母さんだ」
     ディスプレイを確認したダイが電話に出る。
    「もしもし、母さん? おはよう。……うん、大丈夫。問題ないよ。そっちは?」
     母ソアラと会話するダイの言葉を聞き流しながら、ポップはこの後の段取りを考える。
     ダイの部活は午後から。まだ八時半過ぎだから、これからシャワーを浴びて、朝食を食べて。それから証拠隠滅の為に、ぐちゃぐちゃに汚れのついたシーツと、皺の寄っていない未使用のシーツを洗濯して。それでも十分に余裕があるだろう。
     バードケージの中のゴメに朝の挨拶をしながらそんな風に思案していると、後方で電話口に向かって話しているダイの声が大きくなった。
    「え!? 珍しいね。それ大丈夫なの? ……うん。……そんなに? ……そうなんだ。……ううん、気にしないで。こっちは平気だからさ……え?」
     ちらりと横目でポップを見るダイ。
    (……なんだ?)
    「……あ、うん。……わかった。……うん。……うん、じゃあまた」
     通話を終えたダイは、ガチャリと子機を置く。
    「どうしたよ? 何かあったのか?」
    「うん……それがさ……」
     ふうと一息つき、ダイが再度口を開く。
    「父さんが……二日酔いでダウンしてるって」
    「は!? マジかよ!?」
    あの・・酒に強そうなダイの親父さんが!?)
     目を見開くポップに、ダイは今しがた母と話した内容を説明する。
    「親戚にめちゃめちゃ呑まされたらしくて、真っ青な顔して横になってるって。一緒に呑んでた母さんは何ともないみたいなんだけど」
    「おまえの母さん、やるなぁ……」
     昨夜のダイとの会話では、ダイの母も酒を結構・・呑むとのことだったが、まさかそれほどとは思わず、ポップはううむと唸る。
    「それで、親戚の家にもう一泊させてもらうみたいで……」
     ほんのりと頬を染めたダイは、小首を傾げポップを伺う。
    「その……母さんが『せっかくだからポップ君にもう一泊してもらったら』って言ってたんだけど……どうする?」
    「……!!」
     ドラッグストアで、今日は色々買い足す必要があるな──そう思いながら、ポップは笑ってその答えを口にするのだった。
     


     終
     
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    Replies from the creator

    🍞けい🍞

    DONE7/1~2開催「デルパリバリバ!」の展示。
    現パロポプダイシリーズ『オレの知らないあいつの事情』のリバver.の話。
    【相手が望むなら逆の立場もあり】と匂わせたまま結局ポプダイで終わった本編を、実際にリバにしてみました!!
    リバ(ダイポプ)を書くのは初!となります。書けてるといいな……!!
    前半ポプダイ、後半ダイポプ です。
    あいつの知らないオレの事情【ここまでのあらすじ&キャラ設定】
     
     ポップとダイは幼馴染。なんやかんや遠回りしつつも、半年前の夏に二人は恋人となった。
     秋には初めて身体を重ねた二人は、現在遠距離恋愛中。人並みに性欲も持ち合わせている彼らは、中々会えないそのもどかしさをテレセクで解消することもあった。
     そして季節は巡り春を迎え。両親が遠方に泊りがけで外出するのを利用し、ダイはポップに自宅へ来ないかと提案したのだが……。


     【ポップ】
     都会で一人暮らしをする大学生。二十歳。ダイのことはずっと昔から密かに好きだった。
     頭が良く、特にスケベに関しては更に頭の回転が早い。ダイとダイのおっぱいをこよなく愛している。
     初夜では抱く側だった。そのことに満足はしているものの、実は内心である心配事を抱えている。
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