蘭武2025「蘭 誕生日おめでとう」
クラッカーが弾けて、紙吹雪が舞う。想像以上に大きな音が出て内心焦るも、肝心の祝われた本人の視線は冷たい。暗紫色の瞳がオレを静かに見下す。
はいはい。分かってましたよ。
散らばった紙吹雪を掻き集め、ゴミ箱に突っ込む。微かな火薬の匂いが、独り身の乱雑な部屋に漂う。
「本命はこっちでした」
クラッカーと一緒に入っていたビニール袋から、小さなスティックを取り出すと、タンスの上で警戒モードだった相手の目の色が変わる。
「にゃん」と高い声を上げると、一息でオレの足下に纏わり付く。
「ゲンキンだな」
催促されるままに、○ゅ~るの封を開けると相手の口元に向ける。大好物を前に興奮しているはずなのに、がっつく事なく、小さな舌を出してぺろぺろと舐め始める。オレが押し出してやらないと、じっと待つ姿勢だ。
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