秋の初め頃に ※大正軸
※杏(→)←千
いつからかわからない、散る枯れ葉は彼が一番嫌いな景色になった。
少年は隊服を着てる男の背中を見つめ、静かに部屋の隅に立っていた。両手には綺麗に畳まれた真っ白の羽織、その上には赫き炎刀が置いてあった。物静かな雰囲気の中、布が擦れる音だけが聞こえ、外から吹く風は秋の深まりを感じさせた。時々、先ほど男が言った言葉を連れて、彼の耳元へ何度も何度も繰り返す。
『千寿郎、そろそろ時間だ。』
遠くに響く悠々とした鐘の音が静謐な空間に広がる、その言葉が絡み合い、頭の中の一番空っぽな場所に鳴り響いている。千寿郎は我に返り、机の上にある置時計をチラッと見ると、指針は午後4時にきちんと止まった。
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