誕生日(一年目)酷く空気の澄んだ夜だった。
満月を過ぎ、欠け始めた月が東の空に浮かび始める頃、池の畔に張った天幕の口からディアマンドは空を見上げていた。
無理矢理にでも身体を休めなければと横になっても中々寝付けず、部屋に居ることすらも耐えられなくて、急遽思い立ち、こうして野外に天幕を張ってみたものの、やはり寝付けずにいた。頭に過るのは先日のことばかりで、ディアマンドは唇を噛み締めた。
先日――デスタン大教会での戦闘、そして退却戦のことだ。
父王を助けることも仇を取ることも出来ず、それどころか戦局も正しく判断出来なかった己の我が侭のせいで神竜様や仲間を危険に晒し、挙句の果てには今まで集めた指輪を奪われてしまった。
そして圧倒的不利の中の退却戦については己は記憶すら曖昧なのだ。これほど情けないことはない。
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