暗がりにひそむ 大聖堂は、ユニティオーダーによって昼夜守護されるナーヴ教会の敷地の中でも特に厳重に守衛される最も威容を擁する聖域である。儀式の時を除き、平常その扉は堅く閉ざされ、立ち入ることを許されている者は教会内においてもごく僅か。
夜警のさなか、その扉がほんの隙間開いていることに気づいた。
生唾を一つ飲み込み、腰元の銃に手を伸ばしながら、そっと、ひと一人分が通れるだけの隙間に身を潜ませた。
天井高い聖堂内部は僅かに蝋燭が灯されていた。小さな光を受けてあちこちに架かる深い影の中を渡り、不届な侵入者を見定めるべく、視線を彷徨わせる。かすかな話し声と物音は広い聖堂の前方から聞こえてくる。近くの柱の影まで辿り着き、そっと目を凝らした。
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