ナルキッソスの憧憬 ゲートキーパーは息を呑んだ。
培養液に入ったそれが、すでに人の形を取っていたからだ。
つい数か月前に視察に来たときは、まだ肉塊だったというのに。それは幼児の形を取り、透き通るような白い肌を惜しげもなく晒し、肩まで伸びた銀色の髪がゆらゆらとガラス管の中で揺蕩っている。
「……いかがでしょう、御大」
「素晴らしい……!」
ああ、吐き気がする。男は体の横でこぶしを強く握った。
男に与えられたゲートキーパーという呼び名には、もちろんそのまま日本語で門番という意味もある。また、精神患者が過剰な服薬を繰り返す、いわゆるオーバードーズをする患者を静止し、そばについて患者の精神状態をコントロールする役割をもつ人物のことでもある。
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