愛か、甘さか、『リュウガさんのこと好きだよ』
そう言われてスッと体温が下がるのを感じた。肝が冷えるとはこういうことか、と我ながら間抜けな現実逃避をしたものだ。
「俺も好きだよ、お前のような甥がいてくれて嬉しいくらいだ」
そう告げることで好きの意味をすり替えた。ショウザは何か言いたげだったか、最後には同意してくれた。
俺はショウザにとって伯父に当たる。つまりは血縁関係があるということだ。男同士であることを差し引いても、彼の為になることなんて何もない。ましてや相手は未成年で、俺は成人してどれだけ経っていると思っているのか。
だというのに、一度口にしたからか、ショウザは積極的に行動するようになっていた。好きだなんだと言葉にすることこそないが、ハグやスキンシップが増えた気がする。最初こそどうしたものかと対応に困ったが、最近は慣れてしまいともすれば俺の方から頭を撫でたりしていた。
大人しかった妹や傍若無人な弟と違い、素直に甘えてくる甥というのはどうにも可愛く思えた。子供のように扱われることに抵抗がない訳ではない様だが、それよりも褒められることや触れあえることの方が良いらしい。喜んでいるようにすら見えた。
そんなこんなで、気づけば俺はショウザとの暮らしにすっかり慣れていた。当初の目論みとはかけ離れた現状ではあるが、それでも意外と上手くいくものである。俺には仕事もあるし、彼ばかり構ってはいられないのだが、それでも気づけばできるだけ一緒にいる時間を増やしていた。
そんなある日のことだった。
「一緒に…?」
ショウザのお願いに、俺はキョトンと間抜け面を晒していた。
「うん、一緒に寝たらダメかな?」
夜も遅い時間にショウザが俺の部屋を訪ねてくるから何事かと思えば、共寝の誘いだった。共寝というか、添い寝というべきか。
枕を持ってきたショウザが少しおよび腰なのは、俺が断ることを予想してのことなのだろう。寝室のベッドは広めのクイーンサイズ。二人で寝ようと思えば可能なだけの広さはある。
「まぁ、構わないが…」
俺としても断る理由はない。それに、なんとなくだがショウザとなら同じベッドでも眠れそうな気がしたのだ。俺の返事に表情が明るくなるのを見るとこちらまで顔が綻んでしまう。
こうして俺達は共に眠ることになった。
「子供みたいだよね…」
ベッドに寝転び俺を見るショウザは気恥ずかしいのか縮こまっている。
「子供っぽいが、悪いことじゃない」
部屋の明かりを消して、俺もショウザの隣に寝転ぶ。なんだか楽しいね、と笑うショウザの顔はふらふらと落ち着かない父親に似たらしい。
おやすみ、と言葉を交わして目を瞑る。互いの呼吸音だけが聞こえる。不意に袖を引かれる。ショウザが縋るように、でも控えめに俺の袖を掴んでいた。
少しでもこの子が安らげるのなら、と俺はその全てを受け入れてしまいそうだった。