おそろい(同じ傷) 身体中にある傷だけが俺たちが共に持つものだった。俺たちは生き方すら違っていて、愛情の持ち方すら違っていて、同じところを探すのなら、仕事で負った傷ぐらいしかお揃いのものがなかった。銃弾をくり抜いた傷、ナイフで切り付けられた傷、爆弾の破片が減り込んだ傷。俺はそれが自分の身体にあることを、それほど気に病んではいなかったが、同じものが恋人の体にあることは気になった。あの美しい身体が、俺と同じもので汚されてしまった、そう思うと辛かった。
だから一度だけ、傷をとってみないかと、任務にかこつけて言ったことがある。あの時は潜入捜査をすることになっていて、身体に目立つ傷があるとよくなかったのだ。一流の諜報員は傷一つから過去を探るから、少ない方がいいと俺は言った。しかし彼はすぐにはそれに同意しなかった。これは自分の勲章だと、かつていた、頑固な軍人のように譲らなかったのだ。それに自分と俺とを繋ぐものだとも言った。俺は信じられなかったが、彼のそのロマンチストな部分を見てしまうと、もう何も言えなかった。
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