優しい眼「優しい眼」
ある日の夕暮れ時。
セブンスヘブンでティファと談笑している時だった。
久しぶりに顔を見せた相棒を見てアタシは絶句した。
あまりに似つかわしくない"それ"を抱いたヴィンセントが現れたからだ。
「ちょ、どしたのそれっ!?」
「・・・いや、辺境の地を進んでいた時に見かけたんだが…」
「だからって絶対アンタ世話できる人間じゃないでしょ、どこかに預けようと思わなかったの⁉︎」
仲間達(・・ユフィ、それは流石に言い過ぎじゃ)
「私もそう思ったんだが・・・、預けるにも辺鄙な所で見つけたもので、ここに連れてくる他浮かばなかった。」
「でも、その子がそこに置いてあったって事は、人が通る場所ではあるってことよね??」
ティファが、ヴィンセントに抱かれている赤子を覗き込みながら訪ねる。
「ああ、そんなに人が通るわけではないが、だからといって全く通らない日もあるような場所だ。」
「・・というか、連れてきて大丈夫だったの??母親が現れたりするんじゃ・・」
「私もそれは考えてしばらく待ってはいたんだがな。流石に何時間も赤子を飲まず食わずで放っておくわけにもいかなくてな。
すまないが、湯を沸かしてほしい。」
そうティファに頼むと、赤子を横にして
手慣れた手つきでおしめを変えていくヴィンセントに周りも少し驚いたように見ていた。
「ヴィンセント、やけに手慣れてるな??」
「フ、意外か??これでもお前達より長生きなんだ。色々経験はするさ」
「クラウドとは、場数が違うってことだね♪」
ニシシと、揶揄いながらユフィがいうと、
「そうでもない、私もここまでできるのはさっき奮闘したからだ。」
苦笑しながらそういうヴィンセント。
「あ、そうか、しばらく待ってたんだもんね・・!」
「慌ててるヴィンセントも見たかったけどな」
クラウドが笑いながら言うと
「お前にだけは見せられないな」
と苦笑いされてしまった。
「クラウドとヴィンセントってさ、いつの間にそんな打ち解けたの??」
「「 ?? 」」
突拍子もなくかけられたユフィの言葉にお互いに困惑した顔になるヴィンセントとクラウド。
「いや、だって前はさ、そんなにお互い歩み寄って話す感じじゃなかったじゃん?だからなんでかなーって。」
ユフィの純粋な問いにクラウドはどう答えるべきか悩んでいたら、隣から思わぬ返答が降ってきた。
「それは私たちが、命の誕生を待ち望む者と同等の関わりを持っているからな。」
「ヴィンセント、それはっ」
「うわっ!ちょっと何のことか考えちゃったじゃん、馬鹿じゃないの⁉︎」
うっわー、ないわーとかいう感じの表情でユフィが捲し立てた後、でもころっと表情を変えてクラウドにユフィが詰め寄ってくる。
「な、なんだよユフィ…」
「でもさ、お似合いだと思うよ。アタシは応援する」
「 へ? 」
「男ドーシとか、色々ツッコミどころはあるけどサ、アンタもあいつも幸せになりたい者ドーシなわけでしょ?そう思えるようになったんだから、アタシはいいと思う!」
ニシシ、と笑いながらそう言ってくれるユフィの懐の柔らかさに感心しながら、クラウドは「ありがとう」と返すとユフィは満更じゃなさそうに頭をかいていた。
振り返ると、赤子に哺乳瓶でミルクを与えているヴィンセントが先程のことなど露知らずで、ただ優しそうな顔で赤子を見つめている。
命の誕生を待つ者と同じ、か。
俺たちには経験できない事柄なのに、それを言うって一体…
——ああ、そうか。
俺もヴィンセントも命の寿命がいつになるかわからない。
俺たち以外の生きとし生けるものを見守る意味もあるのか…。
そんなことを考えていると視界の隅で少し元気のないユフィの姿が見える。
「ユフィ?」
「放っておいて。アタシ今アンタ達と話す気分じゃないの」
先程まであんなに明るかったのにどうしたっていうんだ?
クラウドの表情にそれが出ていたのか、ユフィが剥れて
「アタシだってね、失恋くらいするわよ!ニブチン‼︎」
ああ、そうか、ユフィはヴィンセントの事を慕ってたもんな。俺も気が効かない事をしたな…
などと考えているとユフィが一言
「今絶対ヴィンセントの事だと思ってるでしょ?」
「えっ⁉︎」
「アンタもうちょっとモテる自覚持った方がいいよ、女の子可哀想だよ。」
もういいや〜、と何か吹っ切れたように去っていくユフィ。
まいったな…
全然気付かなかった