【獣の城】
言うことを聞かない子にはいつの世も脅し文句を使うもの。
「いい子にしていないと獣の城に置いて行きますからね」
たった一言そう言ってしまえばどんな利かん坊でも素直に親の言うことを聞く。
この国の人間なら子供から大人まで皆獣の城を恐れている。人の手が入っていない森の先、魔王でも住んでいるかのような仰々しくも恐ろしげな城がある。
城に住む獣は摩訶不思議な術を使い人を拒む。無理に押し入った者の成れの果ては悲惨なものであった。
王国中追い回され最後に逃げ込むならここしか無かった。
屈強な兵だってこの城の周りには寄りつこうともしない。王の命令でもだ。
王城の地下で家族と別れた時から追って来るならきっと自分の方だろうと、わざと兵士に姿をちらつかせては国内を転々として時間稼ぎをしていたが、もうこれ以上逃げる宛ては無いのだ。
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