探傭 モグ明俺は、この男に買われた。
こいつが何を考えているか分からない。
契約書を書いている、この男…何者なんだ?
「契約完了です。これは、貴方のものです。」
「どうも。」
男が近づいてくる。俺は、少し恐怖心があって、顔を見ないようによそ見をする。
「よそ見をしなくても、僕は君に何もしないですよ。」
顎をクイっと上げられて、男を見つめる。
「ふふ。可愛い。」
「…///」
急に言われて恥ずかしさで顔を赤くする。
「ふふ。自己紹介が遅れましたね。僕はモグラ」
「……俺は、明瞭。」
「よろしくお願いします。」
「……。」
少し無愛想な顔をする。やはり、こいつは何を考えてるのか、分からない。
「さぁ、ついて来てください。」
フードを深く被って、モグラのあとをついて行く。俺は、これからどうなるんだ。
外に出て、空を見上げる。(空だ…)
「車に乗って。」
少し警戒して、一歩後ろに下がる。その時、モグラが優しく背中をポンと叩く。
「大丈夫だよ。」
そう言われた時、少しホッとした。なぜ、ホッとしたかは、分からなかった。
車で移動中、緊張なのかよく分からない感情になって、下を向いたまま喋らなかった。
しばらくして、少し大きな屋敷に着いた。
俺は、少し驚いたと同時に、ここで一生暮らすんだと思った。何人もの使用人がモグラを出迎える。モグラが俺の部屋を案内した。
「ここが、君の部屋だよ。」
俺は、部屋を見回した。
「気軽に過ごしてていいよ。君の荷物はそこに置いてあるから、片付けたら僕の部屋においで。」
と言ってモグラは部屋を出て行った。少し荷物を片付けて、モグラの部屋に向かった。扉をノックして部屋に入る。モグラは仕事をしていた。
「そこのソファーに座ってていいよ。」
何も返さないでソファーに座る。少し周りを見る。仕事を終えて、隣に座ってくる。
しばらく、固まっていると、
「そんなに緊張しなくていいよ。」
と、頭を撫でてくる。少しして、紅茶とケーキなどが運ばれてきた。
「食べていいよ。少し気が楽になるでしょ?」
少し警戒しているが、「毒は入ってないよ。」と言ったので一口食べる。
「!……お、美味しい」
ぱぁと目を見開いて、美味しく食べた。
「ふふ。喜んでもらえてよかった。」
「…ご馳走様。」
少し照れくさそうに言う。モグラはじっ、と見つめてくる。
「な、なに…」
「いいえ。とても可愛いと思って」
「か、かわいくねぇ…//」
「ふふ。かわいいよ。」
下を向いて赤くなる。(俺……可愛いか?)
ここでひとつ疑問が浮かんできた。なぜ、俺を買ったのか…。
「なぁ…なぜ、俺を買ったんだ?…」
「なに?急に…」
「いや…なんとなくだ。」
「うーん。気まぐれかな」
気まぐれって…そんな適当で大丈夫なのか…。
「気まぐれっていうか……まぁ、一目惚れもありますかね。」
「………!!え、え、ひ、一目…惚れ…//?」
「ふふ。可愛い反応しますね。まぁ、それが1番大きいですかね。」
「はへぇ……ほ、本当なのか?…」
少し、ソファーでリラックスして座った時、モグラが前に立って来た。
「本当ですよ。…」
顔を近づけてきて、目をギュッと閉じた瞬間、何か唇に触れた。目を開けた瞬間、キスをしていた。
「…//」
「ふふ。本当に可愛いですね♡これで、信じてくれましたか?」
「…//…誰も信じないとは言ってない…//」
「ふふ。これからもよろしくお願いしますね。明瞭♡」
「…//あぁ…//」
こいつとの生活が始まる。なにが起きるかは、分からない。