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    albatrosstale11

    刀剣乱舞は刀×女審神者の夢小説置き場

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    albatrosstale11

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    7/6は刀帳番号76
    🎀さに

    風に吹かれて雨に打たれて大般若長光は風のようなひとだ。
    するりと懐に入ってきて、気がついたらもういない。溶けるんじゃないかと思う夏の暑い日、吹き抜けた涼風のような流し目。髪を靡かせて、紅葉と舞うように敵を屠るところ。口許に浮かべた笑みは軽やかなのに、時には身を切るあからしよりも、冷たい眼をする。でも普段は桜の花びらを、ぬくもりとともに届けるような春風みたいにきらめいている。
    「ほら、寝るよ」
    寝る前に窓を開けて夜風に当たっていると、大般若が迎えにきた。おろした髪が、月に照らされる。
    「雨が降りそうだな」
    「うん、風が冷たくなった」
    さあっと風が吹いて、大般若は本当だ、と言いながら、私の頬に大きな手をあてた。紅い眼の奥がきらっと光る。
    窓を閉めて、寝室に向かう大般若の後ろにつく。後ろ髪を眺めて、ふと、
    「昔、夜に降る雨が嫌いだったなあ」
    「へえ?」
    「あ、ごめん、ちょっと思い出しただけ」
    夜に雨が降っている、その特に理由のない憂鬱や寂寥感が、閉じ込められた檻みたいに思えたのだろう。中高生の感受性ってすごい。今じゃ雨だ、か、頭痛いと思ったら雨か、くらいしか思わない。さらに、私がいた2020年代は異常気象の連続で、容赦のない日照り、水不足がしんどかったので、雨が降ったらほっとすらしたものだ──、なんて考えながら、床をととのえて、身を横たえて、じゃあおやすみ、と言おうとすると、ちゅっと、おでこに大般若の薄い唇が降ってきた。かれの前髪がはらりと私の顔にあたって、雨みたいだと思う。くすぐったくて、よけきれなくて、濡れたような感触で、撫でられているようで。
    「雨みたい」
    「俺の髪が?」
    「うん」
    大般若はすこし身を起こして、私に覆い被さる。銀糸にとじこめられて、かたちのいい額を見るともなしに眺めると、大般若が口を開いた。
    「雨、嫌いかい」
    「昔の話だよ、いまはむしろ」
    「どこが嫌いだった?」
    「え?……えーと、逃げ場がないところ、だったと思う」
    それはまた朝がきてしまうことでもあったんだろう。社会人になったら、どんなに憂鬱でも朝がきて、夜がきて、また朝が来るということに平等すら感じた。
    「俺は?」
    「す、すき」
    「……ふむ、そうか」
    よかった、と大般若は笑った。
    「どんなところが好きなんだい?」
    「ええ……強いところ」
    これいつまで続くんだろう、と思ってたらどいてくれた。重いから助かった。私の横にぴったりくっついて、腕枕をどうぞと腕を伸ばしてくる。
    「ああ、あんたが修行に出してくれたおかげでな」
    強くなった、と笑った。大般若は楽しそうだけど、私は眠くてたまらない。大般若のからだに腕を回すと、大般若も抱きしめ返してくれた。
    「……あんたのことは、雨からだって守るよ」
    「いいよ、一緒に濡れよう」
    「なんだ、つれないな」
    「……雨」
    さらさらと、雨の降る音が聞こえた。大般若は気に入らなかったらしく、私の耳をふさいでしまった。
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