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    singtuation

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    DOODLE新婚KA軽くドアノブを引くと、扉は記憶通りのゆるく軋んだ音を立てた。ぎ、ぱたん。
    実家を出て久しくなるけれど両親は俺の部屋をそのまま残してくれていて、帰るたびふるさとの旧友に再会したような気持ちになる。よく知りながらも懐かしい空間、遅れて部屋に入ってきた恋人、どちらも俺の大切なものだ。なのにそのふたつが結びつくことにはまだ慣れなくて、なんだか心のやわらかいところがくすぐったくなってしまう。
    さほど遠くない昔、初めて彼がこの部屋を訪れたとき、あいつはやけに目をきらきらさせて、堪えきれずにあちらこちらを眺め回していた。その姿はまるで初めて彼が俺の─大学時代の─寮を訪れたときのようで、でも俺は悪い気なんてしなかった。だってあいつはいま、俺の恋人なのだ。あの時とは違って。すこし恥ずかしいけれど悪い気なんてするものか。
    そんなことを考えていたらあいつは「寮の頃の先輩の部屋を思い出しますね」なんて言いながら、俺の雑多なフィギュアやポスターや高校時代の教科書なんかをあんまり愛おしそうに見つめるものだから、俺は自分が特別な人間なんじゃないかとしあわせな錯覚をおぼえてしまうのだ。おんなじ過去を思い返していたのさ 1878