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    雨/降

    @amefurashi8745

    続くかも分からない書きたいだけの小ネタをあげる場所/5受け大好き

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    雨/降

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    GEGODIG1WEEKCHALLENGEより
    2022年9月のお題『最後尾』
    in獄門疆での五の深層心理をイメージした夢のなかの話

    うしろの正面 目の前で行列ができていた。老若男女、多種多様なひとびとの行列。先を覗こうとしたら「ちゃんと並んで下さい」とぼんやりした白い影に注意された。なので仕方なく五条は列に並んだ。別に並ばなくてもよかったのだが、なんとなく並ばなくてはいけないような気がした。それに行列の周囲は闇に包まれていて、五条の六眼で見ても先は見えないし、呪力も感じない。ただ行列だけがぼんやりと光っていた。
     列は以外とスムーズに解消されていき、ようやく五条の番になった。そこにはどこまでも闇を呑みこむ昏い巨大なクレーターのような穴があるだけだった。よくよく目を凝らしてみれば穴は生きているかのようにざわざわと蠢いていた。
    「さあ、どうぞ」
     白い影に示され、戸惑いながらも五条が足を踏み出そうとしたその時、
    「妾が先じゃ」
     ぐい、と手を引かれ振り向くと、制服を着た三つ編みの少女が笑っていた。少女の反対の手にはメイド姿の女が控えめに立っていた。
    「……オマエ」
     五条はその二人を知っていた。名を呼ぼうとしたら、三つ編みの少女は五条を押しのけ、穴の方へと連れの女と一緒に歩いて行こうとする。思わず止めようとした。あの穴は二人の行く場所ではない、と思った。だが伸ばした手は二人をつかめず、二人はそのまま弾むような足取りで歩いて行く。穴には落ちずに見えない地面を走っていく。呆然と見ているうちに二人はやがて遠くで瞬いた光のなかに溶けていった。
     そしてあたりはまた闇に包まれた。白い影はただ黙って五条に進むよう指図する。なんなのだ、ここは。非現実的な空間だが、呪力は感じない。夢にしてはリアルだった。あたりを見回した五条の背後からまたひとり歩いて行く姿があった。ちらりと見た姿は男だった。その男にも見覚えがあった。口元に傷がある男は五条を振り向くこともなく歩いていく。男も穴には落ちなかった。穴には落ちずにその後ろ姿は闇に溶けていった。光はあらわれなかった。
     叫び声が聞こえた。五条にぶつかり何かがごろごろと転がってきた。それはヒトの形をしたナニかだった。身体の一部を欠損していたり、黒い影だけのものだったりと原形をとどめていないが、五条には人間だとわかった。人間だったものが先の見えない闇から転がり出ては穴へと落ちていく。落ちた先は生き物のように蠢く昏い穴で──違う。穴が蠢いているのではなかった。落ちた人間がもがいているのだ。深い深い穴に落ちてもなお生きて、足掻きのたうっているのだ。ぞっとして振り返ると、白い影が次々に人間を放り込んでいた。
    「止めろ!」
     怒鳴ると白い影は動きを止め、見えない目で五条を見つめた。
    「君のせいだ」
    「……何?」
    「君が生きているから争いが生まれる。すべて君のせいだよ──悟」
     五条を知っているかのような口ぶりに影を凝視した。影は影のままでやはり呪力は見えない。声は知っている気がするのに、思い出せない。すごく、すごく大切で、特別な存在だったはずなのに……。
    「君か私、どちらかだよ。君はどちらを選ぶ?」
     影の淡々とした問いに五条は思わず後退る。それを見た影はわずかに揺らいだ。五条はなんとなく影が笑ったのだと思った。
    「それには意味がある」
    「──す、」
     影は影のまま深い穴に音もなく吸い込まれていった。
     手を差し伸べることすらできなかった。
     ついに独りになった漆黒の空間で、五条は途方に暮れて座りこんだ。

     浮上する意識に目隠しをずらす。周囲は目覚める前と変わらない沼の底のような闇だった。寝心地の悪い人骨に包まれて、夢とも現実ともつかない先程の脳の幻を思った。
    「ほんとはオマエを救いたかったのかな」
     鼻で笑って寝返りをうった。
    「僕の順番はいつ来るのかな」
     どうせ行き着く先など、オマエと同じ深い地獄の底でしかないのに。
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    usagi_is_kawaii

    MAIKING夏五で都々逸ネタ
    学生時代に交わした約束を、夏が死んだ後にしっかり守る五。
    使用都々逸(?)は、
    “三千世界の鴉を殺し、主と朝寝がしてみたい”
    “お前死んでも寺へはやらぬ、焼いて粉にして酒で飲む”
    のふたつ。
    いつか漫画か何かにしたいけど、時間も気力もねぇからSSだけ先に書いた。
    傑とテスト前に日本史の勉強をしている最中、明治初期のところに差し掛かった時のことだ。

    「あぁ、そうそう。この時代、“ざんぎり頭叩いてみれば文明開花の音がする”という歌が流行るほど、髷を切り落とした者を先進的なものたちだという賞賛の声も増えてきた頃だね」
    と、補足の豆知識を教えてくれる。

    その今まで歴史で聞いてきた俳句や和歌とも違う音のリズムに少しばかり興味を抱く。

    「字余りすぎね?」
    「和歌でも俳句でもないよ。都々逸って言って、七・七・七・五の歌。有名なのだと、高杉晋作が遊女に送った“三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい”とかかな」
    烏を殺しとは随分物騒なこって。

    「へぇ、高杉ってカラスに恨みでもあんの?」
    率直な感想を傑に言えば、きょとりとした後おかしそうに吹き出した。

    「違う違う!三千世界はこの世界全て。カラスは、遊女が客に【浮気をしない】という約束を神に運ぶ役割を担っていてね。約束を破ると三羽のカラスが死ぬらしい。世界中の全ての烏を殺してでも、朝寝、つまりはセックスして一緒に朝を迎えたい。お前を独占したい、みたいな内容の恋の歌だよ」

    神に約束を運ぶということは、カ 1807