デートするなら最後にショーウィンドウで全身を確認した。無論、外見に懸念事項は一つもない。問題は振る舞い、喋り方、声。「HiMERU」も簡単ではなかったが、要の模倣は難易度が高い。あの子の生まれ持った愛される才能は、再現に限界がある。
どうせ遅かれ早かれバレるのだ。できる限り長引かせれば十分。
「……巽先輩! ごめんなさい、お待たせしました!」
手を振りながら駆け寄る。巽と要が決めた待ち合わせ場所は待ち合わせ場所として適切で、つまり巽はものすごく目立っていた。約束の時間の随分前だし、珍しく似合う服を着ているし、コンマ1秒だけ罪悪感が沸く。すぐに消えてよかった。
「おや」
巽は微笑みのまま顔を上げ、そのまま首を傾げた。
「どうしたのですか?」
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