My Lovely Heart in a Raincoat ソファに身を預け、気怠げにネクタイを緩めた。鞄は床に放置。雨の日というのはどうも疲れて嫌になる。それに明日は土曜なのに出勤だ。気分が沈んで仕方がない。
天井を見ながらぼーっとしていると、外からがちゃんと音がした。誰かが自転車をマンションの駐輪場に停めたのだろう。聞き慣れた音に恋人かもしれない、という希望は持たなかった。急な雨の中、連絡もなしに自転車で来るはずがないのだ。
会いたい。でも明日も出勤。憂鬱だ。
ピンポーン。
こんな日に誰だ。インターネットで何か頼んでいただろうか?変な勧誘でなければいいけれど。
無視しようかと思ったが、雨の日に待たせて風邪でも引かれたら此方も気分が悪い、と重い身体を起こして扉を開けた。
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