山盛りにしたみかんの入った器を、静かに炬燵の天板の上に置く。
そのすぐ横で天板の上に頬を付けてすっかり溶けている姿をちらりと見遣って、その隣に腰掛けた。
布団を捲ればそこから漏れる暖かな空気に導かれるままに、その中に両足を潜らせる。
「しっかしすごい量だなぁ」
「この時期になると毎年親戚から届くんだ」
今年は豊作だと言っていたので、去年より些か量も多いように思う。
布団に取り込まれた姿が小さく身動ぎ、ようやく出てきた片手が器へ伸びる。
そのまま一番上に積まれたみかんをひとつ手にすると、天板の上を捏ねるように転がして手遊びはじめた。
「オレンジ、好きだろう?」
「そうだけどよ、オレンジとみかんって違うよな」
「そう違いはない気がするが」
「みかんよりオレンジの方が味濃いだろ?」
そんな取り留めのない会話をしながら自分も同じように山の上のものをひとつ手に取ると、裏側から皮を剥いていく。
手慣れた動作で剥き終わった実を半分に割って、さらにそこから一房分を剥がして手に取る。
そのまま口へ運ぼうとした腕を突然掴まれて、弾けるようにその方を振り向けば起き上がった姿がある。
その顔がこちらへ近付いてきたかと思えば、思わず身を引くより先に摘んでいた一房をそのまま一口に奪われてしまった。
「みかんは違うんじゃなかったのか」
「食わないとは言ってないだろ?」
ゆっくりと味わった後そう悪戯な顔で告げたその口に、手元に残る半分に割っただけの実をそのまま押し付けてやった。