海の思い出「おかえりなさいませ、お兄様」
「はあ……何度言えば分かるんですか、アナタは……」
永里は由可里を見るなり、盛大に溜息を吐いた。
P地区には来るなと言われているにも関わらず、こうして足を運んでいるのだから当然の反応だろう。
しかし彼は決して由可里と顔を合わせることを嫌がっている訳ではない。
P地区には外の人間を良く思わない超能力者もいる。
中に入ることで彼らを刺激してしまい、事件に発展することもある。
そうなれば人間側にどんなに落ち度があったとしても、処罰を受けるのは超能力者の方だ。
双方の安全のために、あまり頻繁に出入りするべきではないのである。
「本日はきちんと変装をして、広夢様にお迎えに来ていただきましたわ」
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