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処分の前に望みはあるかと問えば、行きたい場所があると聖職者は言った。
拘束の類いは付けなかった。逃げたとしても捕まえる自信があるからではあったが、予想に反して聖職者にその気はないようだった。
市街から離れた場所の礼拝堂、目的地かと思っていたそこを通りすぎる。坂を歩いて下ってゆくにつれ、街頭の数は減り、あたりは暗くなってゆく。
「この先かァ? 地下じゃねえよ。市街のやつらが上段に森を造ったせいさ。物を落とせば下まで落ちるが、上からゴミは見えねぇワケ」
一番暗い場所にあるのが墓地なのだと、聖職者は言った。
「気が付いたら墓地になってた、ってのが正しいとこだなァ。しょっちゅう人間も落ちてくる」
まだ使えるものを捨てるのは褒められた行いではないが、それで暮らせている者もいるのだろう。
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