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    21yua48

    @21yua48
    好きなものを好きなように置いておく場所

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    21yua48

    DONE大好きな方へささやかな贈り物
     窓から漏れる朝日と、隣で身体を起こす衣擦れの音で目が覚めた。
     俺がまだ目が完全には開ききらなくてくずぐず目元を擦っていると、いつもなら同じくあくびを繰り返しながらぼんやりしているはずの青年から声がかかった。
    「賢者様」
    「……ん、おはようございます、ミスラ」
     いつもと違い挨拶もなく呼ばれたことを不思議に思って目を上げる。ベッドの壁側にいる赤毛の青年の視線は俺の上を通り越した向こう側にあって、「どうかしました?」首を傾げればようやくこちらへ顔を向けた。
    「俺の指輪がひとつなくなりました」
    「え、なくしちゃったんですか」
    「昨夜まではあったんですよ。そこに置いたはずが見当たりません」
     言って机を差す指の先には、ふわふわと彼がいつも身につけているアクセサリーが浮いて輪を描いている。その指をひと振りすると指輪や耳飾りはいつもの場所へと収まっていった。「ほら、ないです」右手を俺の顔の前に突き出して見せてくれたが、ミスラの装飾具は彼の気分や使用用途(呪具として都度適したものを選んでいるらしい)によってころころと変わるため、正直なところどれがなくなったのかわからなかった。
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