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    Souka_R9

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    Souka_R9

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    未来機関if・年齢捏造(成人済)・捏造多めの多分義手アイ(要素ないです)狛日(狛)です。狛枝が風邪ひいて日向クンが看病します。

    「あー……風邪、だな。」

    ピピピ、と警告を鳴らす赤外線式の体温計と、
    いかにも風邪をひいていますっていうようなボクをしかめっ面で交互に睨みながら日向クンはそう言った。

    身体中に鉛でも流し込まれたのかと錯覚するほどの倦怠感に治まらない鼻水に頭痛。
    めまいも酷く、立っているだけでもフラフラするしなんなら今すぐ目の前の日向クンの胸にダイブする勢いだ。

    ただの風邪じゃない、随分と悪化してしまった風邪だと言うことは誰の目にも明らかだ。

    「ズビッ……ひいてないよ……ボクはほら!この通り元気だよ」

    それなのにボクが風邪だと認めない理由、

    それにはとある事情がある。


    丁度先週頃だろうか。
    あれは仕事が一段落した祝いに、とボクと日向クン、左右田クンとかとボク達の家で呑んでいて……
    そのあとの事だ。


    「……おい、……!!……きろって……!」

    「ん……あと5分……」


    暖かいコタツの温もりとほろ酔い気分の幸福感に包まれる中、ボクは微睡む視界を渋々と開けた。

    部屋のLEDが眩しくって、それから遠ざかるように寝返りをうった。
    これまで床……というかコタツで寝ていたせいか、身体中がバキバキだ。
    それに、左手を枕にして寝ていたせいか、跡もいって横頬が少し痛い。

    「あと5分ってもう10回は言ってるだろ、ほら、もう皆帰ったんだし……せめてベッドで寝ろよな。風邪ひくぞ?」

    コタツの上の鍋やらビールの空き缶やらをせっせと片付けながらそう言い放った日向クンは少しお怒りだ。

    「やだ……ボクはもうここで寝るんだ……いくら日向クンのたのみだからって……」

    まだこの多幸感を手放すのは惜しい。
    いくら呼びかけたってコタツから離れない……いや、離れられないボクに日向クンは呆れたようで、

    「もう……俺はもう寝るからな!風邪ひいても看病しないぞ」

    とだけ言って、リビングの電気を消して寝室へと消えていってしまった。

    翌日は……二日酔いと筋肉痛、その他諸々で身体中が悲鳴をあげたというのと、風邪をひきはじめていたのは言うまでもないだろう。


    ……という事情で、ボクは日向クンを頼ることが出来ない。
    思わず先週のボクを殴りたくなったが、そうできる方法も気力もない。

    「あぁっ、ほら!もう倒れかけじゃないか……それに39度も熱出しといて何言ってんだよ。ほら、さっさと部屋戻れって。連れてってやるからさ」

    フラフラと足取りも覚束無い、今にも倒れそうな
    ボクを心配してくれたのか、日向クンはよいしょ、とボクの右側に回って、それから肩を組んで二人三脚のようにして寝室へと向かった。


    確か、前にこんな話をした気がする。

    キスをするのに1番いい身長差は何センチだとか、じゃあハグはどうだ、とか。

    テレビの恋愛ドラマ番組を見ながらした、そんな会話。

    その時に、名前はなんだったか忘れちゃったけど、
    人気の俳優が
    「肩を組むのには少し背の低い人がいい」って言っていたのを思い出した。

    それを見て、ボクと日向クンは身長差あまり無いし、やりにくいかもねって言ったのを覚えてる。

    そもそも肩を組む機会なんてないだろ、なんて軽くあしらわれちゃったんだけど。

    「ねぇ日向クン……あの時の話、覚えてたの?」

    わざわざ少し腰をかがめてるのは、やりにくいかもねなんて言ったボクの言葉を覚えてくれていたからなのか……だなんて、自惚れすぎだろうか。

    「そうだったら悪い……かよ……」

    少し顔を赤らめて、少々乱暴に言った言葉は後半になるにつれ勢いが弱まり、ついには消え入りそうなまでであった。

    「ふふっ……日向クンも可愛いとこあるんだねって。」

    普段、皆の前では凛々しく振舞っているのに、ボクと2人っきりになった時にだけちょっと気が抜けたり、時には子供っぽくなったり。

    そんな恋人が、愛らしくてたまらない。


    「う、うるさい!面倒見ないぞ!」
    「ごめんごめん……冗談だよ」

    これ以上怒らせて本当に看病して貰えなくなったら大変だ。
    ここは大人しく、日向クンのお言葉に甘えて寝ることにしよう。

    ベッドに横になり、瞼を軽く閉じる。
    フローリングの床を、スリッパがぱたぱたと跳ねる音や忙しなく棚を開ける音。

    日向クンに、また迷惑かけちゃったな。

    風邪をひいているせいなのか。
    やけに低迷する思考と自己嫌悪に陥りながら、ボクはそのまま眠りに落ちた。



    トントントントン、ボクが再び目覚めた時のBGMはキッチンの方から聞こえてくる規則的な音だった。

    普段、料理をするのはボクだから日向クンは滅多にキッチンに立たないのに……どうしたんだろう。

    さっきと比べると随分マシになった身体を起こし、音の正体を探るべくキッチンへと向かう。

    「あぁ、起きたのか。」

    「うん、大分マシになったからね」

    それを聞くと日向クンは少し安堵したように顔をほころばせて、じゃあもうちょっとで出来るから向こうで待ってろと言って、また作業を開始した。

    「何作ってるの?」

    「お粥……と林檎。カットしたやつな。昔、風邪ひいた時に母さんがよく作ってくれてたんだ。」

    さっきのトントンという音は林檎を切っていた音なのか。と一人で合点し、キッチンに目を配らせる。

    1人用の鍋に入った、まだコトコトと音を立てて煮えている卵がゆに、ウサギの形に切り揃えられた林檎。

    「ふふっ……日向クンらしいね。」
    「どういう事だよ」

    俺だって「料理」くらい出来るんだからな。と言う日向クンはちょっと誇らしげで、可愛かった。

    あんまりまじまじと見ているものだから、
    日向クンにキッチンから追い出されてしまったけど、もうすぐ出来るからといわれたからには大人しく待とう。

    その後、1分も経たないうちに日向クンはお盆にお粥が入った鍋と林檎が入ったガラス皿をのせてリビングへとやってきた。

    「ねぇ日向クン、あーんしてくれないの?」

    「馬鹿言え、自分で食べれるだろ」

    とか言いながら、日向クンはボクに押されて結局やってくれるのをボクは知っている。

    「日向クン、どうしてもダメ?」
    「……1回だけだぞ」

    なんやかんや言ってやってくれる所に日向クンの優しさを感じる。
    やっぱり風邪をひいて良かったのかもしれない……なんて、絶対に日向クンには言えないけど。

    次の日、日向クンに風邪が移っちゃってボクが看病することになったのはまた別の話。
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    Souka_R9

    CAN’T MAKE未来機関if・年齢捏造(成人済)・捏造多めの多分義手アイ(要素ないです)狛日(狛)です。狛枝が風邪ひいて日向クンが看病します。「あー……風邪、だな。」

    ピピピ、と警告を鳴らす赤外線式の体温計と、
    いかにも風邪をひいていますっていうようなボクをしかめっ面で交互に睨みながら日向クンはそう言った。

    身体中に鉛でも流し込まれたのかと錯覚するほどの倦怠感に治まらない鼻水に頭痛。
    めまいも酷く、立っているだけでもフラフラするしなんなら今すぐ目の前の日向クンの胸にダイブする勢いだ。

    ただの風邪じゃない、随分と悪化してしまった風邪だと言うことは誰の目にも明らかだ。

    「ズビッ……ひいてないよ……ボクはほら!この通り元気だよ」

    それなのにボクが風邪だと認めない理由、

    それにはとある事情がある。


    丁度先週頃だろうか。
    あれは仕事が一段落した祝いに、とボクと日向クン、左右田クンとかとボク達の家で呑んでいて……
    そのあとの事だ。


    「……おい、……!!……きろって……!」

    「ん……あと5分……」


    暖かいコタツの温もりとほろ酔い気分の幸福感に包まれる中、ボクは微睡む視界を渋々と開けた。

    部屋のLEDが眩しくって、それから遠ざかるように寝返りをうった。
    これまで床……というかコタツで寝ていたせいか、身体中が 2656

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