プロメポリスは自由の街だ。
プロメアによる地球崩壊騒動から 原理は包み隠さず全て世界中に公開された。しかし結局はクレイ・フォーサイトという黒幕の無期懲役、及びフォーサイト財団内のパルナッソス計画中枢部の懲役と社会貢献の責務を課すことで世間的には落ち着いたらしい。
……あんな奴でもマスメディアではただの極悪人に仕立て上げられているのを見ると、妙な怒りが湧いてくる。あの男に一切の同情はないがこの気持ちを何と表せばいいだろう、憐憫と言えばきっともの凄く嫌な顔をするだろうか。
さて、表向きは司政官を失ったプロメポリスだが……今の元バーニッシュの扱いからプロメポリスの在り方に至るまで、牢獄の奥深くに居る筈のクレイがしばしば口を出しているらしい。その成果は街を歩けば嫌でも分かる。かつてはバーニッシュと非バーニッシュのデモ隊の衝突が絶えなかったらしいが、今は街中で元バーニッシュの処遇について声を上げる者はいない。僕達を含め、元バーニッシュは手厚い支援を受けていた。プロメポリスに住む者は勿論、他所の街や国に移住した者達にもフォーサイト財団の抱えていた資産のほぼ全てを費やして安寧を与えられている……事が全て終わってからようやく僕が目指していた『バーニッシュ達の町』が作られもした。ああ、なんて皮肉なものだ。
そしてプロメポリスは元バーニッシュだけに留まらず、この街の人々は皆自由であるべきだというポリシーを掲げた。
結果、この街は自由になった。そう、僕が世界で一番愛しい相手と結婚が出来、僕が世界で一番愛しい相手と幸せになるべき相手も結婚が出来る街になった。
つまるところ、僕……リオ・フォーティアは、ガロ・ティモスと結婚が出来る。そしてガロは僕だけでは満たせない幸せを抱く為にも、アイナ・アルデビットとも結婚するべきだ。
「という訳だ。ガロ、アイナと結婚して僕とも結婚してくれないか」
デリバリーピザの空き箱とドリンクカップが散乱したテーブルを背に、僕はガロへ指輪を差し出しプロポーズをする。呆けるガロ、背後のテーブルの奥からはアイナが飲み物を喉に詰まらせ噎せる声が聞こえた。
呆けたままのガロに指輪を握らせてアイナの方へと振り向く。声にならない声を上げながら何とか言葉を紡ごうとするアイナに向き合い彼女の手を取り、揃いの指輪を嵌める。アイナも一緒だ、と微笑み掛ければ彼女はとうとう口をぽかんと開けて固まってしまった。
それからの僕の行動は我ながらもの凄い勢いだったと思う。やや流されやすいところのあるアイナを丸め込むようにしたのが功を成した。
自由の街プロメポリスの法的に全く問題のない結婚。バーニングレスキューの皆は僕の並々ならぬガロへの好意をとっくに知っていたし、アイナがガロへと寄せる好意もまた知っていたので、プロポーズ翌日の出勤開口一番にその旨を報告したところ「ようやくか」というレミーの声と「式の日は皆が出られるようにする、早めの用意と日時の報告をしろ」とのイグニス隊長の声。とても理解が早い。遅れてやって来たゲーラとメイスは隊長から言伝を聞くや否や号泣していたが祝福してくれたので何よりだった。理解者に囲まれて僕は本当に幸せものだと、己の幸福を噛み締めて結婚式の準備に取り掛かった。主にアイナと共に。
ガロは式が終わるまで心此処にあらずといった状態だったからだ。