朝火「わわ、本が降ってきちゃった……ん?『時待人』……?」
烏丸「大きな物音が聞こえたが大丈夫か?」
朝火「はい、私は大丈夫ですが」
烏丸「……その本を握りしめているが、気になるのか?」
朝火「あ、はい。なんとなーくですけれど」
烏丸「これは別の世界にいるとある作家が描いた本だな。エーラ様…というよりかはニクルと縁がある者だったか」
朝火「ふええ…そんな方が。えっと作者さんの名前は」
烏丸「確か、ディウスという名だったはずだ。それとその妻が元時計人形であったことも聞いている」
朝火「ええっ!?」
烏丸「元時計人形の方は、一度破壊されて人の器を手にし、生き永らえたと聞いたな。この話を聞いた瞬間、無茶をしていると思ったが」
朝火「そうだったんですね……。え、てことはその二人って人と時計人形さんが結ばれてるってことですよね!?」
烏丸「そういうことになるな」
朝火「なんだか素敵ですね。ふふっ」
烏丸「その本が二人の出会いを描いた物語……とエーラ様から聞いたな。読む者はいないだろうから、朝火、君が持っていくといい。金はいらん」
朝火「ええ……(売り物とは……)。じゃあお言葉に甘えて……」
その物語は、黄昏時に時が止まった街で出会った一人の物書きと、時計屋を営む女主人が奮闘する物語。