名が表すもの/尾谷尾谷のお話
S N Sを見ていると、目の端に映る広告によくある漫画の煽り文句にも、生まれ変わり、前世の記憶、と言う言葉はよく見かける。
俺自身が前世の記憶を持って産まれ落ちたからか、幼少の頃から抱いていた疑問を埋めてくれるような、出会いに少なからず期待していた。
顔に傷のある男や、やけに大人っぽい青い目の少女、脱獄王と名乗っていた飄々とした男、狐の毛皮で作られた首巻きをした、赤い着物の美しい女。
酒が飲める年齢になっても、一切出会うことはなかった。
広告に紹介されている、生まれ変わりや前世の記憶がある漫画を読めば、出会い方がわかるのかもしれない。何冊も読んだが、漫画のような偶然とは言えない出会いはなく。次第にこの記憶は、幼少の頃に俺自身が作った妄想を信じているだけかもしれない。とさえ思い始めた。
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