話し相手※暁月6.0クリア推奨※
時系列的には前回の話より前になります。弊光の妹の名前ちらっと出る。エレンヴィルの口調が分からん
\\強めの幻覚//
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オールド・シャーレアンの哲学者の広場前。最果ての地、ウルティマ・トゥーレへ向けて飛び立った魔導船ラグナロクの帰りを待つ者で、広場は溢れかえっていた。そこに、暁に協力を依頼され了承し、こき使われた俺も居た。...すると、どこからかリンクパールの鳴る音が聞こえる
「あら...こちらクルルよ。どうかしたの...。え、それは本当えぇ、えぇ、分かったわ。気をつけて戻ってきてちょうだい」
「ルーチェさん達からでっすか」
「えぇラザハンやガレマルドで終末に染っていた空が、突然澄み渡った青空に戻ったそうよそれに伴って終末の獣も消え去ったって」
「こちらにも連絡が届いた。終末現象が発生していた全ての地域で、現象の収束を確認したと」
「本当でっすかという事は....」
「あいつら、終末を退けたって事か」
クルルが大きく頷く。広場に集まっていた者達も、話が聞こえていたのだろう。皆手を取り合って喜んだり、抱き合って泣きながら喜んでいる者もいる
「皆さん...やり遂げたのでっすね...」
「あぁ...本当に、『明日』を届けるとはな」
広場に集った者達が、皆一様に空を見上げる。終末を退けた英雄達が、無事に帰還出来るように、祈りを込めて
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「あれは...」
その先には、1つの白い飛行物体が居た。広場に居た人達が、俺の声に反応して前方の空を見上げる
「間違いない、ラグナロクだ。戻ってきたぞ」
広場に歓声が広がる。手を挙げて喜ぶ者や踊って喜ぶ者が居れば、泣き出した者も居る。皆、英雄達の帰還を心の底から喜んでいた
「皆さん、おかえりなさい...」
タタルが一目散に走り出す。それを見たクルルが後を追うように駆け出す。俺もまた、2人を追い掛ける。...ララフェルって、あんなに足が早かったか距離が縮まらないぞ...
距離が縮まらぬまま、2人は知神の港にたどり着く。遅れて俺もたどり着いた
「ラグナロクの乗降扉は...あっちの方ね。行きましょう」
「はいでっす」
「ちょ...忙しないな」
追いついたと思った瞬間、すぐさま2人は乗降扉に向かって走り出す。文句を言いつつ、また追い掛ける。...後方から声が聞こえる。どうやら、他の面々もラグナロクの傍へ行こうと、走ってきているようだ
「着きまっした...皆さんは、まだ降りてきてないみたいでっすね...」
「エンジンを、停止させてる途中みたいね。終わるまで待ちましょうか」
「分かりまっした」
「やっと追いついた...。降りてくるまで待機か」
「えぇ」
「ん。了解」
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しばらくして、エンジンの音が止まり、ラグナロクの傍へ集まった人の声だけが残る。...すると、ラグナロクの乗降扉がゆっくりと開いていく
「あ...皆さん...」
最初にクルーのレポリット達、次にアルフィノとアリゼー、ヤ・シュトラ、サンクレッドと続く。そしてウリエンジェとエスティニアン、最後に暁の英雄...ユアルが降り...て。...全身血みどろに染まった、英雄の姿があった
「ユアルさん怪我...すぐに治療を...」
「怪我ならほとんど治って.......あ、れ」
笑いながらそう言いかけ、ぐらりと身体が傾く彼女を、既のところで受け止める。服や手袋に血がベッタリと着くが、気にせず彼女の脈を確認する
「...脈はある。気絶しただけみたいだ」
「良かった...。でも、念の為治療しないと」
「船では、応急処置しか出来てなかったんだ。...お父様、腕のいい治癒士を数名、バルデシオン分館へ派遣して頂けませんか」
ラグナロクの傍へ集まって居た人の中にルヴェユール夫妻の姿もあった。呼びかけられたフルシュノ議員は、すぐに手配しよう、と言うやいなやリンクパールで連絡を取り始めた。俺は彼女の向きを変え、背中と膝裏に腕を回して抱えあげる。...身長はほとんど変わらないが、酷く軽いように感じた
「よっと...。バルデシオン分館に運べば良いんだな」
「あぁ。頼む」
「承った」
「私は、先にバルデシオン分館に向かうわね。オジカに事情の説明と、彼女を受け入れる準備を急いでやっておくわ」
ラグナロクの傍へ集まった人集りが割れて、道が出来る。クルルが走り出そうとした瞬間、双子が口を開く
「私達も手伝おう。人手が多い方が良いだろう」
「えぇ。急いでバルデシオン分館に戻って準備しましょ」
クルルは頷くと、3人一緒にバルデシオン分館に向けて駆け出した。そして、ヤ・シュトラから声をかけられる
「ごめんなさい。私達は、各所に連絡を済ませないといけないから...ユアルをお願いね」
「あぁ。任せてくれ」
彼女を抱え直し、あまり揺らさないよう慎重に、だが少し急ぎ足でバルデシオン分館を目指す。彼女は気を失ったまま、ぐったりとしていた
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バルデシオン分館の彼女の部屋にたどり着き、ひとまず担架の上に横たえるよう言われ、指示通りにする。全身血みどろの為、着替えさせるようだ。俺とアルフィノ、オジカが部屋から一時的に追い出される。...まぁ、仕方ないか。そのまま、オジカは分館入口の受付に戻った。男2人、扉の前で待つ
しばらくすると、扉が開かれる。患者服を着せられ、血の着いた担架から綺麗な担架の上に乗せられた彼女は、依然として目を覚ましてはいない
「エレンヴィルさん、悪いのだけど...ユアルさんを、ベッドに運んでもらえるかしら。私達だけじゃ難しくて」
「あぁ、分かった」
担架の上に乗せられていた彼女を抱き上げ、ベッドに横たえる。...耳が変な方向に曲がってるな。畳んでおこう
「うぅ...、早く大きくなりたいものだわ」
「ふふ、すぐ大きくなれるわよ」
「時間は、あっという間に経つからね。彼女に頼ってもらう為にも、精進しようじゃないか」
「...そうね沢山牛乳を飲むわ」
意気込む双子を微笑ましく眺めていると、受付に戻っていたオジカが、3人の治癒士を連れて部屋までやって来た。3人の治癒士は、すぐさま治療に取り掛かる
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「...ふぅ。かなりの重症でしたが、応急処置のおかげでしょう。後遺症は残らないはずですよ」
「本当ですか良かった...」
「ただし、英雄様には1週間ほど絶対に、安静にしているようお伝えください。絶対ですよ」
「えぇ分かったわ」
「それでは、私達はこれで失礼致します。お大事に」
「ありがとうございました」
3人の治癒士達はお辞儀をすると、ナップルームから去っていった。俺達4人は、ユアルが眠るベッドの傍へ歩み寄る
「...うん、傷1つ残ってないみたいね。せっかくの美人なんだもの。良かったわ」
「本当に...良かった」
「そういう2人も、怪我は大丈夫なのどこか痛むとか...」
クルルが双子に向き直り、心配そうに尋ねる。2人は顔を見合わせると、クスクスと笑いながら答える
「えぇ、大丈夫よ終焉を唄うものに、コテンパンにやられたけど...この人に船まで転送させられてね。治療する時間はあったから、チャチャッと治しちゃったわ」
「心配してくれてありがとうございます、クルルさん。彼女のおかげで、無事とはいきませんでしたが、致命傷は免れました」
「...そう。お姉さんほっとしたわ。でも、きちんと2人も休む事ヤ・シュトラ達にも言っておくから、体を労わってあげてね」
ほらほらとクルルに言われた2人は、彼女を名残惜しそうに見た後、観念したようにナップルームを後にする。...さて、俺も...と、部屋を去ろうとすると、クルルに呼び止められる
「あ、エレンヴィルさん、ちょっと待って」
「ん彼女は運んだし、俺はいなくても良いだろう?」
「それなんだけど...1週間、彼女の監視も含めて話し相手になってあげて欲しいの」
「...俺が」
「えぇ小耳に挟んだのだけど、ついに収集担当のグリーナー達が、ボイコットを起こしたのでしょうそれで、1週間ほど休みをもぎとったとか」
「...おたくの情報網はどうなってんだ」
暁の情報網、恐るべし。と、でも言うべきか。確かに、大整理の後片付けまで休み無しでさせられそうになったグリーナー達が、ボイコットを起こしたが...
「ふふ、それは秘密よ。報酬は彼女の冒険の話どうかしら引き受けてくれると、嬉しいのだけれど」
「あー......分かったよ。確かに、冒険の話は聞きたいと思っていたからな」
「ありがとうそう言ってくれると思ってたわ」
ニコニコと笑うクルルに、自分の心を見透かされているような、なんとも言えない気持ちになるが...気にしないでおこう。純粋に、彼女に興味があるのは違いない。明日から休みだと、仲間のグリーナーから聞いている。今日中に出来る依頼を、さっさと片付けておくとしよう
明日からお願いね。とクルルに言われ、了承の言葉を返し、分館を後にする。...さて、もう一仕事、やってしまおう
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「...そういう訳で、1週間毎日来るからな」
「抜け出せないじゃないか」
「だろうと思ったよ。ほら、ラストスタンドで飯買ってきたから、食えよ」
「もごっ......美味しい。じゃなくて」
ベッドで上半身だけ起こした状態の彼女は、1週間絶対安静の伝言に固まった所に、俺が来た事により逃げられない事を悟ったのか、抗議の声をあげた。抜け出す気満々だったな、この英雄様
「治療してくれた皆には、本当に感謝してるけど...それはそれとして暇なんだよ」
「だから俺が来てるんだろ」
「何故エレンヴィルが来てるのかも、よく分からないんだけどな」
「クルルに、おたくの話し相手になるよう頼まれたんだよ」
「えぇ...グリーナーの仕事もあるだろうに、クルルは人使い荒いな...」
ベッドの傍に椅子を持ってきて、そこに座る。困惑した表情で話す彼女と、目線を合わせる
「あぁ、心配しなくていい。1週間は休みだからな」
「...え、休み」
「収集担当のグリーナーの仲間達が、ボイコットを起こしてな。休みをもぎ取ったんだよ。その間の依頼は、全て冒険者の方に回されるそうだ」
「ついにボイコットを...」
わぁ...と、言う彼女を見て、思わず笑いが込み上げる。コロコロと変わる表情は、見ていて飽きないな
「さて...クルルの依頼の報酬は、おたくの冒険の話なんだが...、どうかな、英雄様」
「...良いけど、とても長くなるよ1週間で話し切れるかな」
「ははそれなら、暇を見つけて、いくらでも聞きに行くさ」
「ふふ、それなら沢山話せそうだね」
それから1週間、彼女が完全に冒険者業に復帰するまでの間、朝から晩まで語り明かした。最初に言った通り、1週間では到底足りず、また後日続きを聞かせてくれるそうだ。...また、彼女に会える日を楽しみにしている自分が居た
to be continue...