華が咲く 季節は夏を過ぎ、秋の気候を楽しむ期間も短くすぐに冬の風が吹いた。
陽が登るのが遅くなり、沈むのが早くなった11月中旬。陽が出ている日中でも空気は冷たく上着を羽織っている人間が大半だ。早朝はさらに一段と冷え込みが強く、野外にいれば漏れる息は白い靄となって消える。誰もが身を縮こませ、暖かい我が家への帰宅が早くなり、外出することを控えるだろう。
時間帯にすれば早朝。しかしまだ外は暗く、太陽も出てきていない。皆がいまだに布団でぬくぬくと暖をとりながら睡眠をとっている中、静かな住宅街で一人の男性が足を止めずに…目的もなく歩く足音が響いていた。
ふわふわとした…日本人離れした白銀の髪を揺らし、コートのポケットに手を突っ込んで一人歩いている。
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