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    春夏秋冬 美雷

    @blind_white

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    春夏秋冬 美雷

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    nano時代に書いたポップンミュージックの擬人化ししゃも×サトウさんの山なし落ちなし意味なし文

    ##ポップン
    ##SS

    もう7月だというのに梅雨は明けない。
    世間ではもうアスファルトが炎天下に晒され熱を持ち始める時期だというのに、空から落ちるのは暑さではなく冷たい雫だけ。
    本日も曇天。それも週末である。

    「はあ…何で毎日こうやって憂鬱にならないといけないんだろう…」

    青い安物の傘を片手に溜め息をつく。
    鞄が塗れないように空いている方の脇に挟め傘を開いた。
    パンッと心地よい音と共に歩き出した瞬間に、雨が一定のリズムでメロディを奏で出す。
    道行く人と同じメロディ。大小様々な音。
    耳を傾けているだけでもまた溜め息が出そうだ。

    僕は週末の雨が嫌いだ。
    理由は分からないけれど、多分次の日が休みで出かけるにしても道が湿っていて気分が良くないだからだと思う。
    それと、バスがいつも以上に混むこと。
    視線の端で子供たちが長靴を履いて空の落し物ではしゃぐ姿を見ていると学生時代に戻りたくなるなぁ、なんて。

    今日は珍しく夕方には上がれた。その証拠に学生があちこちにいる。
    この職に就いてから見ることのなかった光景にまた懐かしく思ってしまう。
    たった数ヶ月前のことなのに、なんだかおかしくて。

    「今日もししゃもいるかな」

    ふとこぼれた言葉。
    嫌いな週末の、嫌いな雨の日に出会った可愛いネコの相棒・ししゃも。
    僕が待つバス停のゴミ箱で帰りを待つ、今となっては家族の一人だ。

    「疲れたし、帰ってきたらたくさん甘やかしてやろう」

    笑みが溢れるほど、僕には大切な存在。
    仕事の疲れを癒してくれる大好きなネコ。
    時々イタズラしてきたりするけど可愛くて思わず許してしまう。
    いわゆる親バカみたいなものだ。

    ししゃもに会えるのが楽しみになるなら雨の日もいいかなと思えてきて。
    周りがうるさいことに気付いたのは信号を渡ってからのこと。

    「ねえ、あのイケメン誰?」

    「知らない…声かけてみなよ」

    「やだやだ、だって不審者かもしれないでしょ?」

    女子高生の話し声に傘を少し傾けて前方が見えるようにする。

    「……!」

    目線の先、おかか行きバス停の近くに立っていたのは金髪の美青年だった。
    整った顔立ち。隙のない鋭いブラックの瞳は何を見つめているわけでもなく。
    薄いレモン色に近い黄金の髪の隙間から覗くのは、ふわふわのネコミミ。
    服装はまるでRPGの悪役の魔術師が着るような黄色いローブと蓑のようなものを羽織っている。
    そして後ろでゆるゆると揺れる、シッポ。


    ―――どうやら僕はだいぶお疲れのようだ


    幻覚まで見えるほどストレスを溜めていたという暗示だろう。
    体調管理には気をつけていたつもりだったのだが不覚だった。来週は有給休暇でも取ろう。そうしよう。絶対そうしよう。
    やれやれ、あと有給休暇は何回あることやら。

    必死にバス停に佇む場違いな男性から意識を離そうと思っていたが運悪く彼がこちらを向いた。
    反射で目線を逸したつもりだったのだが……

    「おお!サトウ!今日は早いのだな!」

    僕を見るなり鋭い目つきが和らいだ。
    傍観者の目線が一気に僕たちに集まる。
    だが着目点はそこではない。


    どうしてこの人は僕の名前を知っているのか。


    男性はこちらに駆け寄り雨に濡れるのも気にもせず僕を足元から頭の先までジロジロと見始める。

    「どうしたサトウ?具合でも悪いのか?顔が青白いぞ?」

    この人はストーカーだ。
    僕は悟った。
    同性にストーカーされていたとは。最悪な週末だ。

    「サトウ?いつもみたいに頭を撫でてくれないのか?」

    不意に男性は僕の頬を舐めてきた。
    途端に周りにいたギャラリーが黄色い声をあげる。

    「ふあっ…!!やめてください!セクハラで訴えますよ!!」

    熱くてザラザラした舌の感触に今までにない悪寒が背筋を走る。
    突き放すように小脇に抱えていた鞄で男性に殴りかかった。

    パシンっ―――

    鈍い感触がなかった。
    鞄を掴んでいた腕は男に捕らわれて身動きが出来ない。
    今ここで傘を投げ捨てることが出来たならどうにかなるであろう。
    だが鞄が濡れるわけにはいかない。

    「ぐっ…」

    更に力を込めて振り払おうとした瞬間、ふわりと体が軽くなった。
    黒く澄んだ瞳と視線がかち合う。息を呑んだ。

    「サトウ、私をお忘れか。私はししゃもだ」

    「は?」



    ――愛猫が人間になった憂鬱な雨の日の憂鬱なお話
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