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    ginyo_0101

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    さねぎゆワンドロワンライ
    お題【いたずら/魔法使い】お借りしました

    ・記憶なしなしDK現パロ
    ・ぎゆさんに嫌な感じの彼女ができますが最初からさねぎゆです

    長くなってしまったので、ぜひ読みやすい方でお読みいただけたら嬉しいです

    トロフィーの証明 ただのいたずら心だった。

     放課後、不死川は校門に向かう途中で友人の冨岡と女子生徒が連れ立って体育館裏に消えたのを見た。リボンの色から同じ二年生なのはわかるが、不死川の記憶にはない顔だ。
     冨岡はモテる。容姿端麗なことに加え、剣道の大会でも全国に名を馳せているものだから、学校内外問わず女子たちが黙っているはずもない。今回のように体育館の裏で告白だとか、下駄箱にラブレターだとか、およそ令和の世とは思えないようなことが日常的に起きていた。冨岡に対して『記念告白』という言葉すらあるのだと人伝に聞いた。道理で無謀な挑戦者はあとを絶たないわけである。
     中学で出会ってすぐに意気投合した不死川が初めて冨岡の部屋を訪れたとき、トロフィーの数に驚いた。これはいつのだこっちは何のだと興奮しながら尋ねても本人は至って素っ気なく、家族が飾れと言うから仕方なく置いているのだと迷惑そうにしていた。常々「トロフィーが欲しくて剣道をやっているわけではない」と言っている冨岡にとって『告白してくる女子』の存在はまるでトロフィーと同じようなものかもしれないと不死川は思っていた。
     告白をされた冨岡が、どのような反応をしてどのような顔をするのか、ちょっとだけ覗いてみたい。腕時計に目をやれば、アルバイトの時間までまだだいぶ余裕がある。他人の一世一代の告白を覗き見するなど悪趣味極まりないと思いながらも、不死川は一度膨らんだ思春期の好奇心に抗うことができなかった。
     気配を消しながら建物の陰に隠れてふたりを観察してみる。女子生徒が何か話しているようだが、冨岡の顔は死角になっていて見えない。見たいのは冨岡の方なのにと不死川が思っていると、女子生徒がきゅっとと口を結んだ。きっと次は冨岡が何か言って、あの娘はそれを受け入れる他なくて多少なりとも俯きながら去っていくのだろう。さすがに泣かせるようなことが無いように祈る。冨岡のことだからやりかねないと思った。
     しかし、不死川が心配したようなことは起こらない。頷いたのは冨岡で、女子生徒はとびきりの笑顔で飛び跳ねている。なんだよ、お前の方が受け入れたのかよ。とうとう彼女持ちかよ。実は見てたんだぜ、おめでとう。次に会ったら、なんと声をかけようかと逡巡するが、うまくいかない。
     自分が冨岡に恋心を抱いていたのだと、不死川は他人事のようにそのとき初めて知った。

     あの冨岡義勇に彼女ができた。翌朝、すでに学校中に知れ渡っていたことに不死川は驚いた。やはりあれは現実だった。
     現場を目撃し、自分の気持ちに気が付いてしまって、不死川は戸惑った。アルバイト先では小さなミスを繰り返すし、食事は喉を通らないし、家族の話は耳に入らないし、眠れない。ぼろぼろだった。バチが当たったのだろう。自業自得だ。
     なあ知ってるか、冨岡のこと。そんなふうにいつも通り気安く話しかけてくるクラスメイトにさえ、どんな顔をしたらいいかもわからない。
     スマホがヴヴッと低く唸る。アプリを開けば冨岡だった。
    『土曜日、久しぶりにうちに来ないか』
     正直、会いたくない。でも、会いたい。生憎アルバイトは十四時に終わる。考える前に『OK』のスタンプを送信していた。

     クラスが離れている不死川と冨岡は、学校で会うことのないまま約束の土曜日を迎えた。アルバイトを終えたあと真っ直ぐ冨岡の家に向かうのも手持ち無沙汰な気がして、縋るように近くのコンビニに入る。手にカゴを持って飲み物や菓子を放り込んでいると、はたと手が止まった。出会ったばかりの頃、冨岡は炭酸が苦手だというのに不死川の飲んでいるメロンソーダを「ひとくちくれ」と欲しがった。飲んでみて「やはり炭酸は苦手だ」と文句を言う。それでも味が好きなんだと言うから、かき氷のシロップを買って水で割りベストな配分を研究したこともあった。そんな遊びにちょうど飽きた頃にメーカーから微炭酸のメロンソーダが発売されて、少し遠くの大きなスーパーまで一緒に探しに行った。初めは嬉々としていたのに、まるまる一本はやはり多いらしい。それ以来、いつひとくちを強請られてもいいように、不死川は冨岡と一緒のときは自然とその銘柄を選ぶようになった。カゴに入っているのはただの微炭酸のメロンソーダでも、ふたりにとってはそうでない。他のものもそうだ。甘いものは食べ慣れないという冨岡に「これは餡子が練り込まれててお茶と一緒に食うと美味いから」と教えて以来、セットで彼の好物になったソフトクッキーと濃いめの緑茶。近所ではここのコンビニしか置いてないマイナーなスナック菓子もふたりのお気に入りだ。共に過ごした数年を振り返ればたくさんの思い出があって、それらは形になっていま原色のカゴに収まっている。
     こうやってあの子とも思い出を作っていくんだろうな、と独りごちる。胸が痛んだが、気付かないふりをした。

     高校に入ってからはめっきり遊びに来る機会が減ってしまった冨岡の部屋は、相変わらずトロフィーだらけだった。しかし、同じように見えても実はひとつひとつに思い出があって、特別なものもあるはずだ。あの彼女も、そんな存在であるに違いない。なにせ、冨岡に選ばれたのだから。
    「これ、土産」
    「気を使わせて悪い」
     半分払うというのを断って、飲み物を選ぶように促すとシェアしようということになる。
     懐かしいゲームをしたり、子どもの頃に夢中になって読んでいたのにオチを忘れてしまった連載漫画の最終巻を一緒になって読んだり。何をするわけでもなくダラダラ過ごしていると、冨岡が深くため息をついた。
    「不死川」
    「ん?」
    「何も聞かないんだな」
     不死川の胸が大きく一つ跳ねた。聞かないんじゃなくて、聞けないだけだ。
    「聞いてほしいのかよ」
    「いや」
    「……」
    「不死川、魔法使いにひとつだけ願いを叶えてもらえるとしたら、何を願う?」
     現実主義の冨岡から発されたセリフとはとても思えないが、その様子からふざけているわけではないとわかる。
    「……中学の頃に戻りてェかな」
     不死川は蒼くまるい瞳に見つめられ、急に恥ずかしくなって「そろそろ受験のこととかあるだろ、面倒くせェじゃん、いろいろ」と、しどろもどろに続けた。「お前は?」と問えば「俺もそう思ってた」と笑っているような、泣き出しそうな、何かを諦めたような表情で返される。なんでそんな顔をしてるんだよ、という言葉は飲み込むしかなかった。ただ、あの頃には決して戻れないのだと思った。

       ◆ ◆ ◆

    「冨岡くんって、不死川くんのこと好きだよね?」
     そう言われたとき、頬を叩かれたような感覚があったことを覚えている。
     あの日、話があるからちょっと来てほしいと放課後の体育館裏に呼び出された。いつも通り部活のある日で、早く道着に着替えないと自分をよく思っていない部長にまた嫌味を言われてしまうなと思いながら、冨岡はぼんやりとその子の後をついていった。
     気持ちのおおきさに大小はあれど好意を吐露されたあとは『ありがとう』と『ごめん』を返せば収まるから、そういった場には慣れていた。しかし、そのときは違ったのだ。
    「びっくりした? わたし冨岡くんのことみてたから、気付いちゃったんだ」
     人の好意とは恐ろしいものだと思う。好きな人がどんな人を好きになるのか、誰のことが好きなのか…… 恋をしたら、それを考えない人はいないだろう。答えには行き当たらなかったが、冨岡にも覚えがあった。
    「言いふらされたら困るんじゃない? 不死川くんが」
     いよいよ脅迫まがいなことを言われて、怒りでサッと血の気が引いた。
     冨岡は心底、自分が未熟だと思った。不死川のことが好きなのかと問われてすぐに否定することができなかった。仮に言いふらされても淡々と否定し続けていれば、周りだって何かの間違いだと思うだろう。しかし、顔に出さない自信がない。そうすれば不死川が好機の目に晒されるだろうし、本人からどうなんだと問われでもしたら、そもそも否定なんてできるはずもない。もう以前のように穏やかな時を共に過ごすことなんてできないだろう。大切な人との大切な関係を失いたくない。
    「日曜日にデートしようよ」
     勝手に話を進めている彼女を拒否する気力はすでに失っていた。
    「わかった」
     そう答えると、彼女は文字通り飛び跳ねて喜んだ。こんなかたちで支配して満足するなんて、本当に自分に好意があるのか甚だ疑問に思うが、全て受け入れることにした。
     それなのに翌日にはどうしようもなく心許なくなって、つい不死川にアプリでメッセージを送ってしまった。日曜日がこなければいい。不死川と一緒に、中学生の頃に戻ってしまいたかった。
    「魔法使いにひとつ願いを叶えてもらえるとしたら、何を願う?」
     そう聞いたら不死川も同じことを願うというから、思わず全てを曝け出したくなってしまう。そんなことができるわけがないのに。

     日曜日、デートの待ち合わせは彼女の都合で十六時。まずお茶をして、少し離れたターミナル駅にある大きな公園のイルミネーションを観に行きたいという。
     彼女とは最寄りが違うから公園のある駅で待ち合わせをする。駅に向かう道すがら不死川のバイト先が入っているショッピングモールが見えて、なぜだかつい早足になってしまった。

    「本当に来てくれた」
     待ち合わせの駅に着けばすでに彼女は来ていて、いきなり腕を絡めてくる。独特な甘ったるい匂いが鼻をついて、すぐにでも腕を振り解いて逃げたくなるのをなんとか耐えた。去年遠方に嫁いだ姉はこんな匂いをさせていただろうか。思いを巡らせて記憶を辿ってみても、まるで思い出せなかった。
     カフェにいる間は気楽だった。対面になっているふたり席なら凭れかかられることもない。彼女の話に相槌を打ちながら、ただコーヒーの苦味に集中する。
     公園に着くとすっかり暗くなっていて、あちこちに小さな灯がいくつも燈っていた。気が付けば周囲はカップルばかりでほどほどに混雑している。その顔はきらきらと光を纏い、ますます幸せそうだ。はたから見れば、自分たちも同じように見えるのだろうか。冨岡はそれでいいと思った。そうやって誰かの目に景色のように溶け込んで、自分の意思や感情などは消えてなくなってしまえばいい。
    「ちょっと向こういこ」
     歩き疲れたというので、誘われるまま人の波から外れ、通行人の邪魔にならない場所へ行く。遠巻きにイルミネーションを眺めていると、こんなところで自分はいったい何をしているのだろうかと、体と心がバラバラになっていく気がした。
    「ねぇ、キスしておかない?」
    「は?」
     キスとは『しておく』ものだったか。好きあっている者同士が気持ちを通わせたとき、愛情表現のひとつとしてするものだと思っていたけれど、違うのかもしれない。世の中のカップルたちの気持ちなど冨岡にはもうわからなかった。
    「冨岡くん、全然楽しそうじゃないし。キスしたら少しは私のこと好きになるかもしれないじゃん」
    「したくない、って言ったら?」
    「それでもいいけど」
    「やっぱり付き合えない、って言ったら?」
    「……いいよ、別に」
     『いい』なんて、まるで思っていないという顔をして言う。
    「私の友だち、みんな口軽いんだよね。冨岡くんに『不死川くんのことが好きだから』って振られたなんて言ったら、明日の朝にはこの前みたいになってると思う」
     『この前みたい』というのは、告白された翌朝には学校中に知れ渡っていたことを指すのだろう。
    「不死川くん、困っちゃうだろうね」
     冨岡は己の諦めの悪さに自嘲した。結局、それを言われたら従うしかないのだ。これから付き合いを続けていたら、いつかキスの先も要求される事になるのだろうか。まるで人質にでもなった気になって、おとぎ話に出てくる囚われの姫というのはこんな気持ちなのかもしれないと柄にもにもないことが頭を過ぎった。
    「……目を瞑って」
     せめて、と思った。支配に屈する姿なんて当事者だとしても見られたくない。彼女が目を閉じたのを確認して、顔を近づけて冨岡も目を閉じる。目を開けるまでは、何も考えない。
    「待った」
     突然降ってきた声と共に、後ろ側から伸びてきた手に口を塞がれる。どう考えても危険な状況なのに、冨岡に不安はなかった。その声の持ち主が、いま誰よりも会いたい人だったから。

       ◇ ◇ ◇

     ショッピングモールに入っている書店は日曜日の昼間らしくなかなかの盛況ぶりであった。不死川は店のロゴが入ったエプロンを身に着け、気もそぞろなままに業務にあたっていた。
     今日、冨岡たちがデートなのは知っていた。昨日の別れ際、冨岡がつい吐露したからだ。その様子がどうしても引っかかった。なにかおかしいのを感じながら、理由は聞けないままだった。どこに行くかは聞いていない。何時に待ち合わせているかも聞いていない。だからこそ、余計に気になって仕方ない。このショッピングモールには映画館が入っていて、開場までの時間を調整するのにこの店を利用する客は少なくない。二人揃ってここに来ることもあるかもしれない。来たら嫌だなと、まるで子どものように思った。
    「!」
     棚の陳列を整理しているとき、見たことのある顔を見つける。冨岡の彼女の友達だ。クラスメイトが盛り上がって「あれが冨岡の」と騒いでいるときに一緒にいるのを見た。どちらかというと友達のほうが冨岡の好みのような気がしたから、はっきりと覚えている。
    「あの」
     あとのことは何も考えず、つい声をかけてしまった。急に声をかけられて、気持ち悪かったかもしれない。自己紹介するにも、なんと言えば良いんだ。
    「俺、冨岡の」
     冨岡の、何だって言うんだ。
    「不死川くん?」
    「え、なんで」
    「有名人じゃん、目立つもん。バイト? どうしたの?」
    「冨岡たち、今日どこ行くって言ってたか知らねェ?」
    「え?」
    「あ、実は彼女にサプライズで渡したいっていう本を頼まれてて。昨日渡せなかったから、今日届けられねェかなと思って」
    「スマホは?」
    「あ〜〜、なんか調子悪ィんだわ」
    「そうなんだ」
     時間は知らないけれど、イルミネーションを見に行くと言っていたという。このあたりでイルミネーションといえば、一箇所しかない。時間帯もだいたいあたりがついた。苦し紛れの嘘を信じてくれたらしいその娘に、不死川は心の中で謝罪した。
     嘘をついて、ストーカーみたいな真似をしようとしている。自分がやっていることが友達の範疇を超えているのはわかっている。不死川は、それでも夕暮れの中で発車直前の電車に飛び乗らずにはいられなかった。

     暗い公園内で冨岡たちを見つけられたのは本当に偶然だった。不死川は実のところ、見つけたところでどうするつもりなのか自問しながら冨岡たちを探していた。幸せなら邪魔をするつもりはないし、むしろそうであってほしかった。元来、冨岡は感情が表に出る質ではない。輝くイルミネーションにさんざめくカップルたちとは対極の表情をしている冨岡を見つけて、どうすればいいか答えはすぐにみつかった。偶然を装って適当に声をかけ、絶対に無理にでも連れて帰る。
     お一人様の男は目立つから、できるだけ周囲に馴染むよう堂々としながら冨岡たちに近づく。後ろ側、なんとか話し声が聞こえそうなポジションを確保した。このあたりは人が少ないから、まるで三人連れのように見えるほど不自然かもしれない。しかし、そんなことを気にしている余裕はない。
    「キスしておかない?」
     彼女の積極的な様子に動揺するが、その後の会話を聞いて肌が粟立つのを感じた。
    「不死川くん困っちゃうだろうね」
     沈黙のあと、冨岡が動いた。
    「目を瞑って」
     ふざけんな。諦めんな。俺はまだお前から何も聞いてねぇ。想いは言葉にはならず、先に身体が動いた。 
    「ッ、待った」
     ぎりぎりそれだけ絞り出して、冨岡の口を手で塞ぐ。
    「嘘でしょ」
     幽霊でもみたように驚く彼女との間に割って入って、ようやく冨岡を解放した。
    「不死川、なんで」
    「聞かせてもらったわァ」
    「冨岡くんが呼んだんじゃないの?」
    「こいつがそんなことするわけねぇだろ」
     自分に迷惑がかからないようにしたためにこんなことになってしまった冨岡のことを、この娘はなにもわかってないのだと悟って不死川は急に力が抜けた。
    「……帰るぞ」
     振り返って冨岡に言う。
    「ちょっと待ってよ。みんなに言うよ。困るでしょ?」
    「不死川、俺のことは気にするな」
     この際冨岡は無視して、不死川は彼女に向き合った。
    「困らねぇよ」
    「え?」
    「困らねぇから」
     何を言おうか、何が言えるか考えているらしい彼女を一瞥し、冨岡の腕をつかんで不死川が歩き出す。
    「不死川、ちょっと待ってくれ」
     冨岡は不死川の手を静かに解いて、所在なげに立ち尽くす彼女に近づいた。
    「すまなかった」
     冨岡は、告白されたあとはいつもこうして慈しんで相手に謝罪をしていたのだろうか。お前が謝ることじゃないだろうと思うものの、不死川も冨岡に倣う。
    「……悪かったな」
     彼女は、何も言わなかった。
     歩きながら冨岡が「イルミネーション、綺麗だな」とつぶやいた。たしかに綺麗だし、いまの自分たちはそれなりに浮かれても許される立場だと思う。しかし、この場に留まるのには罪悪感があったから不死川が「来週にでも、また来ようぜ」と言うと、冨岡は「楽しみだ」と言った。その表情は周囲のカップルたちのそれと変わらない。次にここに来るときは、きっと自分たちの関係にもはっきりとした名称があるだろう。不死川はまだ手をつなぐこともできないいまの関係を最後までじっくり楽しむのもいいと思った。この先に進んだら、もう戻る気はないのだから。
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