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    koma_hex

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    koma_hex

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    ヒュンポプお題「水着」「麦茶」をお借りしました。
    夏の海でおヒュの片思いが実るお話です。キスまで。
    ダイレオもいます。ラは名前だけ。

    #ヒュポ
    bubonicPlague
    #ヒュンポプお題
    hyunpopuSubject.

    夏の感触 海に来るまでは浮き立つような気分だった。

     照りつける太陽、灼熱の足元、城とは何もかも違う開放的な天地。
     姫のお忍び休暇、限られた者だけ連れてやってきた真夏のデルムリン島の午後。


    --- Popp

     ヒャドで作ってやった氷バケツに飲み物を差し、姫さんの為に大きな傘を砂浜に立ててやり、先に海に入っていたダイに向かってようやく駆け出した。飛び散る水しぶき、青い空! 端の方に陰鬱な白いイケメン!

     少しは気が晴れると思っていた。しかし相変わらず背中に張り付く視線が重い。

     パプニカでの生活の中で何度も感じた物言いたげな視線。声を掛けてみたがうまくかわされ、それなら見るなと言いたいがそれもなされ、今日もああして端の方からおれを見てる。言いたい事があるなら言えってんだ。
     何言うかなんて分かってる、ヒュンケルの様子を見兼ねたラーハルトがなんとかしろって耳打ちしてきたからだ。貴様に懸想して面倒だと、いっそ振ってやれと。
     この夏のうちに決める、終わらせる。この夏の海で首根っこ捕まえてきっぱり振ってやるんだ。それで元のおれたちに戻れるはず。


     不意に強い浜風が吹いた。バンダナが空へと吸い込まれ、あっと言う間に黄色い点になる。考え事をしていたからか、ぼうっとそれを眺めているうちにバンダナは岩場の方へ落ちていった。
     ちょっと拾いに行くだけのつもりだったからダイたちに何も言わず、確かこの辺に落ちたはず、背丈よりも大きな岩の向こう……そこにヒュンケルがいた。

     大きな岩に乗っかったバンダナを取ってくれようとしているのか、岩に足をかけて太い腕を伸ばしている。陽の下で見るその体はあまりにも白く、夢でも見ているのかと錯覚する程だった。
     声も出なかった、日焼けしないのかってくらい白いし、陽気な海パン全然似合ってないのに。

     こんな凄えいい男が、おれの事好きなのか……

    「やはりお前のか」
    「あ、ああ……」
     汗すらまぶしくて半端な返事しか返せない。ヒュンケルからは暑さにやられたように見えたのか、大きな岩の影に誘われた。



    --- Hyunckel

     オレは海をあまりよく知らない。
     この辺りの岩場は潮溜しおだまりと言って、潮の満ち引きによって残された水溜りに魚がいる事があると言う……太陽の熱さに顔を上げた時、一面の青景色の中に一点の黄色。見覚えのあるその色に胸が踊った。
     風に飛ばされたのだろうバンダナを拾おうと腕を伸ばす。岩の頭に引っかかったそれに触れた時、足元に持ち主が現れた。

     バンダナを拾い、岩から降りるとポップの様子がおかしい。暑さにやられたのか、ぼうっとこちらを見ている。岩陰に入れてやるが顔が赤い。

    「違うから……」
     顔が赤いと伝えるとますます顔が赤くなる、困ったように頭を振るポップは妙に悩ましかった。
     少しでも冷やせるかと頬に掌を当てると、驚いたように大きな目をより大きく見開き、閉じる。そのさまが妙に愛らしく……顔を近付けても逃げないポップに口付けた。

     暑さにやられて動けないのをいい事に、誰の目も届かない岩陰で、触れるだけの口付けを盗んだ。
     いけない事だと知っていながら潮の香りの中で際立つポップの吐息を感じる。この島で味わうどんな果物よりも甘いだろうポップの吐息、きっと永遠に忘れられない。

     離れがたいが離れなければ、きつく閉じられたポップのまぶたが震える。



    「……すまん」
     忘れてくれと、小さくそれだけ口から出すのが精一杯だった。何も言わないポップにバンダナを巻き直す。握りしめて少ししわの付いたそれを上手く巻けずにいるオレの手に、ポップの手が伸びる。
     一瞬ポップと目が合った。一瞬と言うのはすぐ目の前がポップでいっぱいになり、離れたからだ。唇に残された感触、ポップが真っ赤な顔でオレを見ている。

     日陰にいなければ夏の幻かと思うほどに熱い。本物だろうかと汗ばんだポップの頬に掌を滑らせると、くすぐったそうに表情を崩した。
     言葉は後でいい、今しばらくはこのまま、夏の感触を感じていたい。



    ---

    「二人ともどこ行ったんだろ」
     ダイは並べられたパプニカ一行歓迎の果物を一人で片付ける勢いだ。
     レオナ姫からは岩の向こうの白い頭が見えていた。それが少しの間隠れ、また出る。それほど激しく動かないのを問題無しと判断し、目線を健康的に日焼けしたダイに戻して微笑んだ。
    「そのうち帰ってくるわよ、仲直りして」

     ゆったりとした時間の流れる島の午後、冷たさを保つヒャドのバケツでは麦茶のボトルが大粒の汗を作っていた。



    END
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