心地よい時間 雑誌に載っていたカミュのコラム。オフの日の心地よい時間と題されたそれ。
一通り目を通した翔は、わかるなぁと頷く。
『心地よいソファーに腰掛け、好きなスイーツを共に読みたかった本を読み、時折隣でスピスピと寝息を立てる愛犬のアレキサンダーの毛並みを撫でる。
その時間の穏やかさのなんと心地良い事か。
この時間があるかないかで、次の仕事への士気がどれほど変わることか』
書かれた文を数度噛み締め、横を見ればソファーの腕置きを枕に午睡を楽しむ那月の姿。
ベッドで寝れば良いのに、それではせっかく重なった時間を離れて過ごす事になって勿体無いなんて理由をつけて、翔の隣でその大きな体を縮こめている。
足先が軽く体に触れているが嫌悪はない。むしろそこから感じるわずかな体温が心地よい。
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