同じもの 届いたLINEは那月から。今日は誕生日祝いで食事会をスタッフ達がしてくれると言っていたが、何の用だろうかと開いてみれば、誕生日祝いの食事の様子だった。
「へえ、珍しい。中華に行ったんだ」
スタッフさんにお願いして、と書いているから那月が望んだのだろうが、那月はそんなにこってりしたものを好んで食べてはいない。
中華なんてこってりしたもの、大体が翔や音也が希望する事で選択に入るくらいなのに。
だけど、その珍しさも添付されていた食事の写真ですぐに納得へと変わる
「事務所からバースデーコメント出たもんなぁ」
事務所で書いてその場で提出したから、那月が目にしたのはファン向けに事務所が出してからのはず。それを見て店を選んだのだろう。
「……俺の夕飯ねぇ」
那月から届いた翔ちゃんの夕飯は?という質問。俺だってバースデーコメントには目を通してるに決まってるだろ。なんて笑いつつポケットから取り出したクッキーの包み。動物の形をしたやけにかわいいそれは、仕事の隙間で食べたから、2枚ほど減っている、
別に約束したわけではないのに、お互いがお互いのオススメやハマっているものを口にしている。
写真を撮って送ったあと、「でもこれだけじゃ足りねぇから、俺も回鍋肉食って帰る」と送れば、少ししてハートを乱舞させたやさぐれうさぎのスタンプが返ってきた。
ならばこちらもとハートを抱えたピヨちゃんを送ってやろうとして、だけど彼の周りにはスタッフ達がいることを思い出し、ぐっと羽を突き出しているピヨちゃんを送ってやる
「ま……どうせあとで会うしな」
食事が終わったらこちらの部屋に来ると言っていた。プレゼント交換しましょうねなんてウキウキしていたから、たぶん終わり次第すっ飛んでくるだろう。スタンプで送れなかったハート以上の思いはその時に贈ればいい。
「この辺で回鍋肉やってる店……あ、そういやこの間行った店にあったな」
今度来たら食べてみよう、なんて思っていたから覚えていたそれ。幸い店はここからそんなに遠くはない。
食べて帰っても那月が来るまでには帰れるだろうと、翔はタクシーを捕まえると目当ての店を運転手に告げた。