「おっ邪魔っしまーす!」
「ゆっくりしていってください。大したお構いも出来ませんが」
ここ数日で恒例となったやりとりを経て、悠仁は伊地知の部屋へと上がり込んだ。当初は世代も話題も合わない伊地知とぎこちない距離感の悠仁だったが、持ち前の人懐っこさに加えて、伊地知の外回りについて行った際に交わした会話をきっかけにすっかり打ち解けていた。
地下室に籠っていては気分が滅入ってしまうでしょう、と伊地知が気を利かせこっそりと出かけることも、伊地知の自宅に招かれることも増え、今ではすっかり寛げる場所の一つである。
最近では伊地知が気を使って悠仁が好きそうなお菓子が置いてあったりする。まさに至れり尽くせりだ。
悠仁が伊地知に促されて洗面所で手を洗いダイニングに向かうと、やかんが火にかけられ茶菓子が用意されていた。
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