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    mari_kmtp

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    mari_kmtp

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    kmt📿さん。
    死にネタな上に嫁さん名前出てるし、子供までいるよ!気をつけてね!
    ティッシュを口に詰めながらお読みください。

    #kmtプラス
    kmtPlus
    #kmtの夢
    dreamOfKmt

    行冥様が夜に出ていった翌朝、無言でご帰宅なされました。敵陣にて玄弥くんが亡くなったことも知りました。二人とも死力を尽くして戦い、立派な最期を遂げたと聞きました。もう鬼のいる世界ではなくなった、平和が戻った。
    ですがわたくしにはそんな事どうでも良かった。二人とも生きて帰って来て欲しかった。無言で穏やかに眠る行冥様が滲んで見えます。ぱた、と雨が零れます。


    どうしてただいまと言ってくださらないのです。帰ってきたらただいまと言いますでしょう。

    いつものようにわたくしの名を呼んで下さらないのです。

    泣くなと、起き上がって抱きしめて下さらないのです。

    行冥様、玄弥くん。


    わたくしを独りにしないで。


    あふれ出る悲しみはいつしか激流となり、隠の方の目も憚らず慟哭が口から流れました。




    わたくしはあの日から、意味のない生活が始まりました。広すぎる家で意味のない食事、意味のない湯浴み、意味のない働き、意味のない…生。
    寂しい、悲しい、寒い、あの方の元にいきたい。そんな事を思えばあの方は怒るでしょうか。
    時折、宇随様が様子を見てきて下さいます。わたくしは貼り付けた笑みで大丈夫ですから、と言っています。宇随様は何か言いたげでしたが何も言うことなくまた来るとだけ言ってくださいました。


    何が大丈夫なものか。
    わたくしは、独りなのだ。
    もう、意味のない事はやめよう。


    その日から、食事も最低限に摂るだけで行冥様に寄り添うように形見の羽織を肩にかけて数珠を手にしぼんやりと縁側で座るだけの日々。行冥様がまだそこにいてくださる気がするのです。最近、身体がひどく重いのです。不摂生をすれば当たり前です、ですがもうどうでも良いのです。
    無気力になってしまったわたくしには、もう、何もかも、どうでも、よいのです。


    次に目が覚めた時は、見慣れない天井でした。
    「あっ、起きた!」
    「天元様!生き返りました!いだっ」
    「物騒なこと言うんじゃないの!」
    この女性たちは誰でしょうか。
    「おう、気がついたか、悲鳴嶼さんの嫁さん」
    この声は宇随様でした。そういえばここは蝶屋敷に似ています。
    「あんた、悲鳴嶼さんのカラスが俺を呼ばなかったら死んでたぜ、二人ともな」
    …?つまり、私は死に損なったということでしょうか…。
    「命を無駄にするんじゃねえよ。悲鳴嶼さんが残した物…」
    「お説教はうけたくありません」
    ピシャリ、と空気が変わったように思えました。わたくしは無意味なことをやめただけです、ほっといてくださいましと言うと、「あんた、分からねえのか」とため息をつきながら宇随様はおっしゃいました。

    「あんた、孕んでる」

    は?
    今、なんと…?

    「あんたの腹に悲鳴嶼さんの子供がいるんだよ。危うく死なせちまうところだったぜ…」

    わたくしのお腹にやや子がいる。
    その事実が信じられなくて、お腹に手を添えます。
    「悲鳴嶼さんの残した物、繋がなきゃ駄目だろ」
    「そうだよ!悲鳴嶼さんの子供、死なせちゃダメ!」
    「死んじゃだめだよー!悲鳴嶼の奥さん!」
    「あんたはひっつくな!」
    「いっだぁ!?」

    視界が滲んで、ついでに笑いたくなってきました。行冥様が残したかけがえないものが、今私の中にいる。それだけで闇の中から行冥様と玄弥くんが引っ張ってくれて救われた気持ちになりました。

    何故でしょう。
    嬉しいのに、涙が零れて仕方ないのです。

    わたくしは、独りじゃない。

    それが余計わたくしを泣かせるのです。そして、三人の女性も泣いてて、鼻声の宇随様はおっしゃいました。
    「悲鳴嶼さんの伝言だ。『来るべきその時まで待っている』だとよ。…愛されてるねえ」

    それはいつかの日、わたくしが言った言葉の一部でした。

    そのあとはみっともないくらいに泣きました。



    行冥様、ありがとう存じます。
    わたくしは生きていきます。

    そしてもうわたくしは独りではないのですね。


    そしてもう早くて数年、また花咲く季節がまいりました。亡き夫、行冥様の墓前に手を合わせます。その隣には、
    「かかしゃま」
    「なんですか、行乃(ゆきの)」
    「ここにはだれがねてるの?」
    わたくしの可愛い娘、悲鳴嶼行乃。行冥様とわたくしの名を一文字取り、つけた名前です。
    「ここには貴女のお父様が眠っているのですよ、お花をあげて差し上げて」
    「はい、ととしゃま、どうぞ!」
    そう言って墓前に花を供えて、手を合わせる姿は行冥様そっくりで母としては色々と心配です。


    愛する行冥様、貴方様が命を賭して得た平和を、わたくしたちは生きてゆきます。どうか来たるその時まで、見守ってくださいませ。


    私も愛している、時乃、行乃。


    行冥様の声がしたような気がして、振り返ると誰もいません。

    「かかしゃま!早く、はやくー!」
    「はい、今行きますよ」


    わたくしは、独りではありません。
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    mari_kmtp

    DONEつなぐ。

    kmt📿さん。
    死にネタな上に嫁さん名前出てるし、子供までいるよ!気をつけてね!
    ティッシュを口に詰めながらお読みください。
    行冥様が夜に出ていった翌朝、無言でご帰宅なされました。敵陣にて玄弥くんが亡くなったことも知りました。二人とも死力を尽くして戦い、立派な最期を遂げたと聞きました。もう鬼のいる世界ではなくなった、平和が戻った。
    ですがわたくしにはそんな事どうでも良かった。二人とも生きて帰って来て欲しかった。無言で穏やかに眠る行冥様が滲んで見えます。ぱた、と雨が零れます。


    どうしてただいまと言ってくださらないのです。帰ってきたらただいまと言いますでしょう。

    いつものようにわたくしの名を呼んで下さらないのです。

    泣くなと、起き上がって抱きしめて下さらないのです。

    行冥様、玄弥くん。


    わたくしを独りにしないで。


    あふれ出る悲しみはいつしか激流となり、隠の方の目も憚らず慟哭が口から流れました。




    わたくしはあの日から、意味のない生活が始まりました。広すぎる家で意味のない食事、意味のない湯浴み、意味のない働き、意味のない…生。
    寂しい、悲しい、寒い、あの方の元にいきたい。そんな事を思えばあの方は怒るでしょうか。
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