【鋭百】西日のシャッター 一番後ろの車両にして良かった。自分たちの他に三人ほどしかいなくなった車内を見てそう思った。三人は早朝からのロケが正午過ぎに終わり、夜からの事務所でのプロデューサーとの打ち合わせのために、電車に乗って事務所に向かっていた。土曜日の昼下がり、都心から外れた郊外を走るローカル線の車窓は、東京であることを忘れるくらいのどかな風景を映していた。
先程までロケの感想を話し合っていたが、車内の人がまばらになってゆくにつれて三人の口数も少なくなっていった。足元にあたる暖房の風を感じながら、百々人はぼんやりと窓の外を見やる。ふと視線を隣に移すと青い頭が鋭心の方に傾いていることに気が付いた。電車の振動に合わせてこくり、こくり、と傾いてゆき、やがて鋭心の肩にこてんと乗ってしまった。鋭心は肩に乗った丸い頭に目を落とし、その様子を見ていた百々人と目が合うと、ふと口元を緩めた。
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