【サンプル】Wake up my music選択肢が増えた黒石勇人の話
冷たい風が体を包み、黒石はフッと息を吐きました。その息は白くなることこそありませんでしたが、寝巻に上着を羽織っただけの格好は、防寒をしているとは言い難いものでした。しかし黒石は気にしたそぶりを見せず、家からずんずんと離れていきます。
数時間前、風間に促されてベッドに入った黒石ですが、一向に眠気が訪れずベッドから抜け出しました。その後、リビングのソファで五線譜と向き合ってみましたが、結局外に出ることにしました。眠れない夜というのは風間にはあまり馴染みがないようでしたが、黒石にとってはよくあるものでした。
木々の揺れる音、風の音、草の揺れる音、色んな音を聞きながら、黒石は適当に村の中を歩いていました。電気の通っていないこの村は、住人達が寝静まった月のない夜は真っ暗になります。今日はほっそりとした月が出ているため、村はふんわりと照らされていました。眠れない夜、いろんな音のする暗い村の中を歩いたり、村の外を歩いたりすることは、黒石にとって悪くない時間でした。
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