結論、うちの酔っ払い风息はキス魔なのである。よその酔っ払い风息がいるのかは置いておいて。
そんな書き出しで物語でも書けそうだ、などと考えながら、无限は先程なら頬を食われ続けている。キスと言えば聞こえはいいが、彼はつまり唇で相手の感触を味わうのが好きなのだろう。はぐ、という音を聞くたびに、このままはんぺんのように食べられてしまうのでは、と不安になる。ふいに、おでんが食べたくなった。
「风息、水を飲もう」
ここまで酔うのは珍しいが、翌朝に頭を抱える彼を何度か見てきた。身体にも良くないし、あのどうにも辛い時間を彼に味わって欲しくはない。そして何より、
「明日は海に行くんでしょう」
早朝の海に行きたい、彼はそう言っていたのだ。行きの車は自分が走らせるとして、せっかくの時間を隣で唸らせるのは勿体無い。実に、1ヶ月ぶりのデートなのだ。穏やかに、さわやかに、冷たくなった空気を吸いながら朝を過ごしたい。そうしたらきっと最高の1日になる。そんな時間を表す、もっと適した言葉がありそうだと頭の辞書をめくるが、見つかるのは顔を吸う唇の感触を表す言葉ばかりだ。
「风息、返事をして」
唇では飽き足らず、頬を擦り合わせるようにしていた彼がようやく腕を伸ばした。起きたら忘れてしまうんでしょう、という言葉はついに口から出ることはなかった。
「ふふ、お前、ほっぺた、赤いぞ」
それはお前が吸ったから。そんなことすら言えないまま、うっとりと、楽しそうに笑う恋人から漂う酒の香りが、酸素とともに鼻を抜けていった。