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    12251225yu

    @yuzu2z

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    12251225yu

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    ゲちゃの水着が可愛すぎたやつ。夏に滑り込み間に合いました。
    時期としては造船期間くらいのつもり。
    千(→)←ゲ位のつもりで気持ちえちおねゲ♂️
    司くんに年相応に海で遊んで欲しいと思いました。

    海+ロードマップ=バカンス澄んだ塩水を足の甲で蹴り飛ばしてすうっと大きく息を吸えば少しだけしょっぱい気がする。足元には警戒心が薄いのだ、ほんの浅瀬だというのに小魚たちの群れが纏わりついてきていて、気付いたら踏みそうで蹴りあげた足の下ろし場所がわからなくなってしまった。
    「うわ、わわっ」
    そこに緩い波でもって足許を掬われる。他の誰かならいざ知らず、ゲンには致命傷的な攻撃だ。
    思わず目を閉じた瞬間、バシャッと派手な水音、そして全身に水飛沫がかかる。
    激しい衝撃の後に、結局足どころかもっと大きなものが降ってきてしまったのだから潰しやしなかっただろうかと本来の不安を思い出してそろり水の中を見れば件の小魚たちはまるで歓迎するかのようにゲンの周りを泳いだり、突然現れたのに興味津々と言わんばかりに口先で腹をつつくものまでいる始末。
    水の中では当たり前だが魚たちの方がずっと自由なのだ。少しだけ可笑しくなって口許に笑いを浮かべたまま肌をつつく魚たちをみていればにゅっと腹の当たりに影が出来た。思わず仰ぎ見る。
    「ゲン、大丈夫かい」
    そこには立派な体格の男がいて、丁度日光を遮る形になっている。それでもゲンがとんと圧迫感のようなものを感じないのは彼が心底心優しい青年だというのを知っているからだろう。現に今もゲンの方を向いてすっかりと普段は凛々しい眉を、目を下げて不安そうにしている。
    「ああ、司ちゃん、大丈夫よ。へーきへーき」
    差し出してくれた手を素直に受け入れて自分の手を重ねる。司の大きな手ががっしりとゲンの腕を掴むと力強く引き上げた。
    「転んだのか」
    「やー……ねぇ、」
    照れ臭くなって誤魔化すような笑みを口許に浮かべながらふと、気付いた。相変わらずゲンの周りには小魚がくるくると踊っているし、それは徐々に司の周りにも移り始めている。
    少しだけ口許に悪い笑みを乗せたゲンは声を潜めてその顔を隠すように下を向きながら口に乗せる。
    「……魚、踏んじゃいそうでさぁ」
    言われて司も足元のうようよとした小さき生き物たちに気付いたらしい。
    「え、魚?!っ、わ、」
    ちょっとした群れのようなのだ。いくら司の体躯が大きくても小魚一匹いないような場所は見渡せる辺りにはとんとない。司がたたらを踏んで、引っ張ってもらっていたゲンがその胸元に飛び込む形となる。無論平素ならば霊長類最強の男だ。ゲンの一人や二人受け止めることなど造作もないことだろう。けれど今、司の注意は足元の小さな魚たちにすっかりいってしまっていたし、引いたのは確かに司であるがゲンはその胸元に明確な意志をもって飛び込んだのである。即ちがら空きの司の胸元に彼を押し倒そうというはっきりとした意識でもって入り込んだ。
    司の方もすっかり安心しきっていたのだろう。少しよろけて抱き止められる、くらいの積もりでいたゲンはふわりと浮いた足元に、咄嗟に抱き込まれた厚い胸板に青くなった。
    「わわ、司ちゃんっ」
    バシャンとゲンの時よりも更に大きな音がして再び水飛沫が全身に掛かる。
    「バイヤー」
    水を含み重くなった長い横髪を掛けながら顔を上げると真っ直ぐな瞳とかち合った。
    「だ、大丈夫かい、ゲン」
    真っ直ぐな瞳は全くゲンの下心なんて気付いていないのだろう。ただ純粋に巻き込んで転ばせてしまったことに申し訳なさそうにしている。
    「う、うん。メンゴ~、てか司ちゃんこそ大丈夫?重かったでしょ?」
    「……いや、というか……ゲン、君軽すぎないか、」
    まるで抱き上げるようにして起こされながら、当然ながら司の方は受け身をとったようで全く平気な素振りである、眉を潜めて言われたのににこりと笑う。
    「フツー、こんなもんじゃない?」
    そう言ってもまだ司は少しばかり眉を寄せていたが「司ちゃんが転けても避けるんだからお魚ってゴイス~よねぇ」という明らかに誘導染みたゲンの言葉にもあっさりと其方へと注意の矛先を向けたようだ。
    「やあ、本当だ。潰さなくてよかったよ」
    先程までモリ片手に魚にも引けを取らない位に海の中を駆けていた人物とは思えない、柔らかな笑顔で司は周りの小魚たちに視線を落とすと頬をゆるめている。
    「優しいよねぇ、司ちゃんは」
    「え、、俺が、」
    きょとん、とした司は年相応らしいゲンよりも幼い、十代らしい顔をしていた。そうだ、彼は堂々とした体躯で落ち着いた立ち振る舞いをしているがまだ年端のいかない青年なのである。
    「ゲンー!つかさーっ!!大丈夫かー!」
    少し沖の方から大きな声と共に太陽に照らされて眩しいくらいの金髪を揺らせたコハクが駆けてくるのが見えてゲンは司の胸元から少し外れて手を振った。
    「だいじょーぶ!コハクちゃーん、」
    それからふと同じように、しかし控えめに手を上げた司を見つけてゲンは唇を小さく上げた。そして同じくらい大きな声でもってコハクの方へと叫ぶ。
    「コハクちゃーん!司ちゃんが投げてくれるって!!」
    突然の言葉に司がコハクとゲンを見比べておろおろとしている。戸惑う顔もやはり凛々しいながらも十代の、若者の幼さが薄く覗いていてゲンはまた柔らかく笑った。
    「コハクちゃんがね、さっき飛び込みたいって言ってたのよ」
    笑ってそう告げてやれば司も心得たようである。
    「コハク、その、俺で良ければ……」
    「いいのか?頼む!嬉しいな。そうだ!あと、後であの岩まで競争しないか?」
    「構わないよ。ただし手加減なしで」
    「当然だ」
    競争と言われて途端に引き締まる司が、それでもその横顔に楽しさを滲ませているのにゲンは作っていたはずの笑い顔が戻らないままになっているの気付いた。けれど戻す必要もないのだ。
    「ゲン、ゲンも競争する?それとも投げよっか?」
    そして傍らにいるままの司が明るい声のままにそう言って、少しだけ驚いた。司は霊長類最強と言われる程腕っ節が強いがそれだけではない、冷静で思慮深いところも持ち合わせる男だ。その彼がそんな提案をしてくるなんて。戻せないどころか更に締まらなくなった顔のままゲンは横に首を振った。
    「うーん、司ちゃん、俺は、……」
    首を振った時に横目にちらとそれ程遠くないパラソルの下で座っている人影が見えてそろそろだろうかと思い出す。
    「千空ちゃんにね、」
    「おーい!メンタリスト!!」
    頼んでて、という言葉に重なるように丁度パラソルの下の人影が立ち上がって手招いた。口に手を添えて大声でもって呼ばれている。
    「うん、千空が呼んでるね」
    「ゲンも後で来いよ。審判がいないと困るから」
    手をぶんと振って千空に応えると「オッケー」と笑ってゲンは浜辺に向かって駆けだした。


    「なぁに、千空ちゃん」
    走って付いた砂を払いながら彼の座っていたシートの隣に腰を下ろすと少しだけ剝れたような顔がそこにあってゲンは頬を緩めた。
    「……テメェが一時間したら呼べっつーから、呼んでやったんじゃねぇか」
    ぷいと顔を背けてそれだけではなさそうな苛立ちのようなものを滲ませながらそれでも傍らにあった布を渡してくるのに湧き上がるのは嬉しさか、それとも。
    「へへ、メンゴメンゴ~。ありがとね、千空ちゃん。」
    「……随分お楽しみじゃねーか」
    少しはなれた所からでも海の方の喧騒は耳へと流れ込んでくる。海の中では腰よりも深い位置に進んだ司がコハクを投げるようにして潜らせたり合流したクロムにもまたせがまれるままに共に潜ったりしているようだった。
    濡れたところを拭いながら顔を上げると隣にあった横顔の赤い瞳が細まっている。口よりもずっと千空の表情は彼の気持ちを雄弁に教えてくれるのだ。
    「テメェは、ンと」
    呆れたように言って、けれど海を見やる千空の横顔は酷く穏やかだ。
    「……だってもう十分魚は採ったでしょ。司ちゃんは無益な殺生はしたくない派だしねぇ」
    今日の海は魚を得るためというのが大義名分であったがそれに間違いなくゲンは必要がなかったはずだった。それでも千空がゲンに声を掛けたのと、ならばたまには気分を変えようとゲンが千空を引きずってきたのにはやはり同じような思惑が根底にあったので間違いがないようだ。
    「、おら。日焼けすんと痛くなるって拒みまくってたのはテメェだろが」
    ぽんと瓶を渡されて「ありがとねぇ」と笑う。
    「流石に防水まではすぐ出来ねぇっつたら人を時計代わりに使いやがって」
    「だって千空ちゃんのが時計より正確なんだもん」
    蓋を開けて傾けるとトプトプとゲンの手のひらには白色の粘度の高い液が広がってゆく。それを指で掬って頬や首に塗り付ける。
    「でもゴイスーよねぇ。いつの間にか日焼け止め作っちゃってんだもん」
    「……まぁメンタリスト様にご足労願わねぇといけねぇことがあったからな」
    「うん。……これで日焼け止めロードマップは最終作業かな」
    「まぁな」
    今日千空の言った採集作業なんてものは本当は口実でしかないのだ。
    人のある程度集まった今、各々に与えられた作業の合間に休暇が振り当てられるようになった。皆休暇となる日には各々好きに過ごしていることをゲンは知っている。皆おおむね羽を伸ばして、散歩をしてみたり惰眠を貪ってみたり、気の置けない相手と過ごしたり、そんなことに使っているのをゲンは把握していた。そしてそれが幾人かの、一握りの責任感の強い生真面目なものや、休暇というものを知らないで生きてきたような人物以外であるということも。
    海で止めどなく湧き上がる声を聴きながらゲンは手元の瓶を千空へと渡す。
    千空の考えていたロードマップは恐らく完成したのだろう。海の中で年相応の、石化前に幾度か出会った時でさえゲンが見たことのなかった弾んだ声をして、生き生きとした幼い顔を見せた司を思いだした。
    「今回も俺、ゴイスー良い仕事よね。」
    なんて微笑んでみせながらゲンは内心でぐっと気持ちを引き締める。正直千空の思っていたことを実現させることなんぞはゲンにはそこまで難しくはないのだ。司は人の裏を読もうとするわけではない。正直海のバカンスと日焼け止めならばお釣りがくるくらいのものである。だからこれからがゲンにとっては本番だ。
    でもその前に。
    ゲンにだって年相応に夏の、海のバカンスの鱗片くらいは味わいたいのだ。だからその前に、少しだけ、ほんの少しだけ自分へのご褒美が欲しくなってしまった。
    「千空ちゃん……あのね、背中塗ってくんないかな」
    「あ?」
    「ほら、さっきこけちゃったからさぁ」
    言いながら背を向けると後ろになった千空が一瞬身動ぎをする。しかし少しの沈黙の内にきゅぽ、とコルクを外す音が聞こえた。
    「……ま、まあ……背中痛ぇとか言って作業サボる口実にしそうだしな、てめえ」
    「ドイヒー!そんなこと、……いや、言わないよぉ。多分」
    ぺたりといつも扱う薬品に少しかさついた、ゲンの指とは違う手が背にふれる。それがぬるぬると滑る液体を丁寧に背に伸ばしていく。
    戸惑うようにゲンのあまり広くない背に不馴れな手付きでそっと触れるのがくすぐったいような、こそばゆいような。
    「首も、塗ってね」
    言いながらうつむくと言葉に合わせて手がそろそろと首と髪の境の方までもまるで余すところを作らぬように丁寧に動く。
    「……前、ちゃんと塗ったんだろな」
    「うん。新しいの出来たんでしょ。またドイヒー作業頑張んなきゃだからねぇ」
    先程まで千空が折角の海だというのにパラソルの下で何かしら熱心に紙に書き付けていたのを知っている。そして、それが丁度ゲンが転んだ辺りから、司に助け起こされた頃から視線がゲンの方へと向くようになっていたのだって、確りと気付いていたのだ。痛いくらいの視線が、司に起こされてそのまま縺れるように海に雪崩れるときにまるで吸い付くように注がれていたから。
    果たしてその視線の意味に千空は気付いているのだろうか。張り付くようなあの視線を向けていた意味に。
    いや、恐らくはそんな視線を向けていたことすら千空は気付いていないだろう。
    「ね、千空ちゃん……水着の、ゴムのとこも、ちゃんと塗ってね」
    「は、……はあ?……そんなの、自分で」
    「だって背中見えないじゃん。変に焼けちゃったらゴイスー恥ずかしいし」
    「ッ……テメェ、」
    ぐっとまた動きを止めた千空はしかしゲンが少しだけ水着を浮かせてずらすと観念したかのようにその隙間からそっと手を差し入れた。先程にもましてたどたどしい手が水着のゴムの跡になっているところを辿るように動いている。ゆっくりと腰から少しだけなだらかに臀部に向かい肉の付いた方へと。
    千空は同性なのだからそんなに意識しなければいいのに。なのに酷く辿々しい動きからどうしても彼の戸惑いのようなものが伝わって、普段はコントロール仕切れる筈の心拍が、体温が上昇してしまう。
    そしてこんなことを頼んだくせに思うのだ。
    どうか、千空にはそんなことに一切気付かずにいてほしい。恋愛脳なんて封じたままの、微塵もそんな心を認めないまま、そのままでいてくれと。
    そうでなければ、そうでなければゲンはとても傍には居られなくなってしまうから。
    やけに長いような、短い時間を、普段は触れるどころか誰にも見せない所を余さぬように這って、そうして千空の指は離れていった。
    「……後は」
    「うん、だいじょーぶ。ありがとね」
    ふっと一呼吸して体温と心拍を落ち着かせる。いつもと変わらないメンタリストの顔を、浅霧幻に張り付ける。
    「お、おう」
    振り変えると少しだけ頬を紅くした千空があわてて顔を背けて、可愛い~とわざと茶化すように心で呟いた。
    「千空ちゃん、手ぬるぬるでしょ?一緒に海行って洗お?」
    少しだけ口許に悪さを残した笑みを見せると、漸くゲンの方を向いた千空はうっと詰まったような、悔しいようなそんな歪んだ表情でその顔いっぱいにする。
    「メンタリスト……テメェ、狙いはこれか」
    「ええ?何のことかなぁ」
    ふふっと笑えば怒ったような、けれど観念したような千空は立ち上がってバサリとその体に掛けていた羽織を落とした。
    「あーーーー、クソ、行くぞ」
    どうやらゲンのロードマップも無事完成したようである。
    まだ高いところにある太陽はキラキラと海面を光らせている。
    千空に続いて立ち上がったゲンは後ろから千空の手を掴むと海の方へ大きく手を振って駆け出した。
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