Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    12251225yu

    @yuzu2z

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 3

    12251225yu

    ☆quiet follow

    抱き枕ゲに思わずカッとなって書いた様子のおかしいんくちゃんの千ゲ
    多分一回目米航海位の時間軸。初夜未遂。

    捏造をいっぱいしました。
    パパとゲちが僅かに顔見知り。実はんくちゃんがゲちのファンだったみたいな話です。
    抱き枕えっちすぎ。

    大きくもないし柔らかくもない羽織は分厚いがその中は酷く薄っぺらな体をそっとベッドへと転がせる。肩を軽く押しただけでコロンと柔らかなスプリングへとゲンが背を預けたのは彼がもやし等と揶揄されるからだけではないだろう。
    「……千空、ちゃん」
    少しだけ高くて柔らかな声が待ちわびるように、誘うように足元から俺を誘う。そうだ、付き合って数ヶ月。早いのか遅いのかも分からない。ゲンならばその答えを知っているのかも知れないがとても聞く気にはならなかったし、例え聞いたとて多分答えは簡単だ。別に他人が言うタイミングなんて関係はないのだから。俺はゲンを抱きたいと思ったし、ゲンの心の準備もできた。そして都合の言いように船では酒盛りが始まって誰も俺たち二人が抜けたところで気には留めなくなっている。そんな最高のタイミングが今日だったというだけで。
    けれどゲンは知らない。気付いてもいないだろう。俺がずっと前、それこそ三千五百年以上も前からゲンを抱きたいと思っていたことなんて。
    そっと足元に視線を落とす。
    ベッドの上に転がしたゲンは幼気な脚をそのシーツに無造作に投げ出して、胸元に右手を添え、そしてもう片手をパタリとシーツに。
    「ーーーーーー、、、」
    途端に腹の奥からまるでマグマが吹き上がる様であった。予想もしていなかった休火山の噴火。正に僅かな兆しを見せていたそれがまるで一気に、何らかの弾みで、溶岩ドームを破るように体の奥底から沸き上がり先端から吹きこぼれる。とても止められるものではなかった。
    「……千空、ちゃん」
    頭の上でゲンが驚いたような戸惑ったようなそんな声をしている。そりゃそうだろう。ゲンは多分知らないのだ。つーか俺も知るわけがないんだ。あんなことさえなけりゃ。



    「おう、千空!元気か?」
    いつも通りの電話だった、と思う。やけにご機嫌な百夜からの電話だった気もするが、そもそもいつも機嫌のいい電話だったからあまり気にしちゃいなかった。いつも通り学校と大樹や杠と、後は最近した実験の話を幾つかして、それから百夜がふと思い出したように言った。
    「そういやお前の気に入ってた、芸能人、マジシャンだったか、」
    「あ?」
    「そうだ、マジシャンのあさぎりくん、こないだ会ったぞ」
    百夜の前で言ったことはなかったはずだが、いつかの一時帰宅してきた時に偶然アイツの出ていた特番か何かを共に見たことがあったのだ。とはいえそれは偶然流れていたテレビで偶然出ていたというだけだったし、まぁ、俺はその時には売れっ子芸能人のあさぎりゲン、が割と嫌いではなくて、というかアイツのマジックはまあ、嫌いではないというか、キャラの割には本気で上手ぇなんてちょっと思ってたもんだからその番組を珍しく真面目に見てしまってはいた。しかしそれで気に入っていると覚えてんだから親っつーのは大概侮れねぇ。
    「……あー、あのマジシャン、まぁ、悪くねぇだろ」
    しかし気に入っていただとか好んでいるなんてのを親に知られるのはどうにもこっぱずかしいものだから適当に答えた。事実、俺はアイツがするマジックは確かに好きだと思ったし気に入っていたがそれだけだったのだ。同級生の持っていたアイツの出したとかいう心理本は思ってた通りのゴミ本だったし、冠番組だってやらなくても出来んだろうにイカサマしてやがる。だからただマジックだけは好きだと、そう思っていただけだった。
    「そうなのか!?いやー残念ながらマジックはしてもらえなくてなー」
    「はぁ?なんでだよ」
    「インタビューだったんだよ。彼、マジックの勉強でこっちいたことあるんだってな。若いのに英語ペラペラでなぁ、しかもいい子だったわ」
    そういや百夜の心象はかなり良かったんだよな。いや、今更言ってもゲンには意味のないことだろうが。つーかアイツ会ってるはずなのにそんな話言わねぇな。まぁ五分やそこらのみじけぇインタビューで知ってるなんて言わねぇか。どっちかっつーとそれでファンの息子に電話かけてくる百夜のほうがなにやってんだよって話なんだが、それはまぁ事情があったんだからしょうがねぇ。
    「いい子って、アイツぺらっぺらのトークじゃねぇか」
    「そうか?よく話きいてくれて話しやすかったぞ。しかもな、息子がファンだって言ったらよぉ、その場で出したっつー本にサインくれて来月出すグッズと一緒に送ります、だってよぉ」
    「は?何言ってんだよ……大体そんな、」
    「いや、たぶんほんとに送ってくれると思うぞ。別れるときに彼のマネージャーに住所聞かれたし、教えといた。ついでに指定時間は夕方にしてあるからちゃんと受け取れよー」
    多分電話の目的はそれだったのだろう。荷物を受け取れというのが目的だったのだ。
    事実その電話の二日後の夕方に宅配便が届いた。やけに大きな段ボールで、俺宛に。
    本とグッズにどうしてと思うくらいには大きなそれのガムテープを引きはがせばご丁寧に『石神くんへ』と宛名付きのサインの入った件のゴミ本とあと数冊のこれまた恋愛心理学だのなんだののゴミ本。これは今になっちゃ読んどいてもよかったか、なんて思っちまうがどうせゴミ本だろう。そう思いたい。そいつを読んだところでどうせその著者サマ以上の知識はねぇ訳だから現状打破はできねぇだろう。流石にそんなぺらぺらの恋愛本に恋人との初夜のハウツーなんてものはないだろうし、あったとしても状況が特殊すぎる。つーかあったら嫌だわな。例えペラペラでもそんないかにも手馴れてますみたいな話は見たくねぇのが本音だ。
    そんでまぁその本と、あとはこれから出るらしいあさぎりゲン監修のマジックグッズ。にしてもアイツがやるようなのじゃねぇ。ホントに素人向けのアイツの言葉を借りるならゴイスー簡単なやつだ。しかし手先が器用じゃねぇと難しいんじゃねぇかなとは思った。球が消えるだの増えるだのよくあるそれだが片目瞑って出来るようなもんじゃねぇ。ゲンなら両目瞑ってても鼻歌交じりで出来るんだろうが。まぁ、二、三回やってみて宴会にはいいだろうななんて結論付けた。そんな詰め合わせの最後にやけに柔らかくてでかいものが入っていたのだ。それは多分ゲンも知らなかっただろう。送り先は事務所からだったしマネージャーが住所を聞いたというのなら多分任せたのだ。それにしてもどうしてそれが入っていたのか。手違いだったのか、バイトあたりの冗談か悪乗りか。大体どんな奴かもわかんねぇのに送り付けるもんじゃねぇだろ。
    しかし兎に角なぜか俺の荷物にそれは入っていたのだ。
    『あさぎりゲン等身大抱き枕』
    段ボールから引っ張り出して包装紙を引っぺがして、そこでそんなものが出てきたときはこんなモンどうすんだよと毒付くしかなかった。俺は別にあさぎりゲンが好きなわけじゃねぇ。いや、なかったんだ。その時は。マジックは上手い。それだけは知ってはいたがそれ以外はペラッペラで、インチキのゴミ本出してる芸能人。そんな認識の脳にそれは否が応でも飛び込んできた。
    誘うように笑って、シーツに体を投げ出している。右手は胸元で、左手はとさりとベッドに落としたままの、まるで招くようなそれ。つーかなんだよこれ。俺も一応高校生だった訳でそういったものが存在するっつーのは知識としては知っていた。知ってたけどこういうのはアイドルとかグラビアが出すもんじゃねぇのか。なのになんでペラッペラのインチキマジシャンが、こんなもの。
    気持ちとは裏腹に俺の下半身はやけに張りつめていて、痛いくらいだった。生理現象として経験はあったがこんなにもそれが強いものだとは初めて知ったのだ。悲しいことに。


    いや悲しいことになるはずだったのだが、結局今となってはそれも懐かしい記憶だ。ある意味忌まわしくもあるが。
    なにせそんなことは露とも知らねぇインチキマジシャン、基恋人様は抱き枕そのままの格好で無駄に柔らけぇそいつとは違ってしっかりとした質量でベッドを沈ませて、同じような皺をシーツに刻みながら薄らボケたようなプリントとは違う、鮮明でくっきりした、肌の張りも表情も鮮やかなままでそこにいるのだ。
    「せん、くうちゃ、」
    少しだけベッドが軋んで目の前の現実が身を起こす。
    「……なん、でもねぇ」
    絞りだしたような声に戸惑ったゲンは、しかし俺がのそり立ち上がったのを見てまた素直にベットへと身を沈めたようだった。ここからはメンタリストのお手並み拝見といったところだろうか。なんせこちらとら抱き枕で性欲を知るくれぇには純情科学少年だったもんでベッドの上の恋人を見るだけで暴発しちまうくれぇには余裕なんてものはない。よく言うような親の顔思い出して鎮めるみたいなのも記憶はそれすらもしっかりあさぎりゲンに結びついちまうんだから打つ手はねぇんだ。これはもうペラッペラじゃねぇ恋人様の恋愛心理学とやらを存分に発揮していただこうじゃねぇか。
    そんな恋人様がインチキペラッペラの蝙蝠男だということを忘れるくらいにその時の俺に余裕なんてものはなかったのである。投げ出していた手を掴んで覆いかぶさった時にその顔が見たことのないくれぇ真っ赤になっているなど思っていなかったのだ。
    「……千空ちゃん、俺、どうしよう……」
    頼りなさげな、揺れるようなその声に思わず天を仰ぐ。幸か不幸か船上の宴会はまだまだ終わらないようだった。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works