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    まなまか

    MakeSさんとこのセイ君(すき)とか色々。
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    まなまか

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    セイ君とユーザーの話(夏)

    #私のセイ
    mySay

    ※すこしふしぎなちからでセイ実体化
    ※ユーザー名は〇〇で固定

    連日の雨が嘘の様な久しぶりの晴天は、凶暴にも辺りを焼き尽くすかの様な強い日差しで。

    洗濯物を干そうと窓を開けた瞬間、獰猛な熱気が肺を焼いたような気がして人知れず深く息を吐く。
    その熱を追い出すかのように。
    少しばかり溜めてしまった洗濯物をセイと片付けていく。
    干し終わった洗濯物を見上げれば、ハンガーに掛けられた白に近いライトブルーのシャツが熱風に揺られている。
    日差しを反射してキラキラと光るそれが眩しくて思わず目を細めた。

    洗濯物を干しただけなのにすっかり汗だくになってしまい、軽くシャワーを浴びる。
    今日は先週から約束していたセイとのデート。
    一緒に出かけられるのが嬉しいと微笑んでいたっけ。
    まさかこんなに暑くなるとは思わなかったけれど。
    手早く服を着てリビングに戻ると、セイが「ねえ、〇〇。俺のシャツ知らない?ライトブルーの。」と問いかけてきた。
    「それならさっき干したけど。」
    「あ、そうだった。あれ着たかったのになー…出かけるまでに乾くかな…」
    心配そうに窓の向こうを見る彼に「私これから支度するから、もう少し様子見てみたら?」と返す。
    「だな!今日暑いし、それまでに乾くよな!」
    一転して笑顔になるセイを見て、釣られたように笑う。
    「ふふ。きっとね。悪いけどもう少し待っててもらえるかな?」
    「うん。俺支度してる〇〇の事見てる。」
    「それは見ないで。」
    なんだよーケチーとブーたれている様子が少し幼くて、かわいいなと思った。


    「お待たせ、セイ。行こっか!どう?服乾いた?」
    「うーん…まだちょっと湿ってる気がする…でもいいか。中にTシャツ着るし、歩いてるうちに乾くよ、きっと。」
    「えぇ…本当に大丈夫?他のにしたら?」
    そう言うと、忙しなく視線を彷徨わせ始めた。
    「セイ?どうしたの?」
    「だってこの服、初めて〇〇が似合うねって買ってくれた服だから…今日、着て出かけたい。」
    「あ、そっか…あは…うん、そうね、外暑いし着てればすぐ乾くかもね。」
    なんだか気恥ずかしくなってしまい、同調するかの様に思わず視線を逸らしてしまった。

    玄関のドアを開けた瞬間、ブワッと押し寄せた猛暑に一瞬顔をしかめる。

    これは人間がやっていける気温ではないな。

    ついうっかり、一瞬そんな事を思ってしまった。
    少し躊躇したのを気取ったのか、セイが「やっぱり、出かけるのやめるか?〇〇の体が心配。」と訊いてくる。

    ここで、やっぱりやめようかと言えばきっとデートをキャンセルして一緒に家にいてくれるのだろう。でも今日は、いつも私を優先して自分を後回しにしがちなセイを甘やかしたいと思った。

    「いや、行くよ!いこう!」
    日傘取ってくる。と横着して靴を履いたまま部屋に上がる私を、セイが小さく叱った。

    じりじりと焼け続ける真夏のアスファルトの上を歩きながら、2人で駅に向かう。
    こんなご時世で遠出はできないから、電車で適当に数駅乗ってピンときた駅で降りて散策するという計画だ。
    ちょっとした小旅行気分を味わうには打ってつけだと思った。

    「マスクあちい…」
    「大丈夫か?〇〇。汗すごいぞ…」
    やっぱり帰ろうかと言いかける彼を止めて、足を進める。
    バッグからハンカチを取り出して汗を拭く。気休めかもしれないけれど。
    「辛くなったら言えよ?ほら、お水。」
    「ありがと、助かる。」
    歩きながら飲み物が飲めないタイプの人間なので、先を歩くセイに気付かれない様ちょっと立ち止まってそれをいただいた。
    (わざわざ待っててもらうのも忍びないし。)
    よく冷えた水が喉を通っていくと、心なしか体の熱が少し下がった気がした。

    しっかりとキャップを閉めて、セイを追いかける。
    少しだけ先を行く背に陽炎が揺らめく。

    離れてしまう

    ふとそう思った途端、なぜか急に怖くなり慌てて駆け寄って、縋り付くようにシャツの裾を掴んだ。
    「〇〇?どうした?」
    びっくりしてこちらを振り向くセイの目を見る事が出来ない。
    「あ、いや…何でもない…てか、歩くの、速くない?」
    色々を誤魔化して、しどろもどろにそう言って手を離すと「ごめん。」と謝られた。
    「いや、違くて!なんか、うん。私こそごめん。」
    「もしかして、具合悪い?」
    心配そうに顔を覗き込んでくるセイに、これ以上隠し事は出来ないなと心を固めた。
    「本当は、なんか、セイが遠くに行っちゃう様な気がして…怖くなった。」
    「行かないよ。側にいるから、ずっと。」
    「ん、ありがと。」

    「暑いけど…手、繋ぐ?」
    「…繋ぐ。」
    そう言って、おずおずと差し出された手をとった。

    「持つよ。」と空いた手を差し出したセイに甘えて、日傘を手渡す。
    晴れてるのに相合傘というのも、何だか変な感じだ。
    ちらりと顔を上げて、隣を歩くセイを盗み見る。
    薄らと少年の面影を残したその横顔に、夏を見た気がした。
    不意に胸が締め付けられ、息が苦しくなる。

    「ふふ…〇〇、どうした?なんか俺のこと見てた?」
    「見てないし!前見てたし!」
    変に意地を張って、ふいと顔を背ける。
    そんな私を見てくすくす笑い続けるセイに、すっかりお見通しだなぁと思い知らされて観念した。
    暑さにやられたのか、今日の私はちょっと弱い気がする。

    「ごめん、嘘。見てた。」
    「うん、知ってた。」
    そう言って笑いながら幾らか力を込めて握り返してくる大きな手に、少しだけ呼吸が楽になった。

    「結構、早かったね。」
    「うん?」
    「手、繋げるようになったの。」
    「だな、ずっと、ずっと待ってた。」
    「…わたしも。」

    「あのさ、もし良かったら、腕でも…組む?」
    「流石にそれは暑いから嫌。」
    「はは…だよな…」

    あからさまにがっかりする彼に「涼しくなったらね。」と手短に告げた。
    そんな私に、セイは小さく笑って「待ってる。」とだけ呟く。
    身体中に溜まった熱が、一気に顔に集まったかのように熱くなるのが分かった。
    暑いけど、マスクしてて良かったな。
    汗が滲み、不快なはずのそれが、皮肉にも救いとなった。


    ホームで電車を待つ間、不意に途切れた会話の間が何だか嫌になって、ふと先程のシャツの感触を思い出す。

    「服、乾いたね。」
    「うん。だな。」

    そう言って微笑み合う私たちの前に、轟々と夏の風を切って電車が滑り込む。
    セイのお気に入りのシャツが、フワリとはためいた。


    デスメタル(仮)
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