ししゆま「はい、こっちふたりの荷物ね。教室から持ってきておいたよ」
孝臣と悠馬が閉じ込められていた準備室からひとつ挟んだ隣の空き教室。そこへ立ち寄った千里が三人分の荷物を抱えて出てくる。
開いた扉の隙間から見えた室内の設備に、ここで柳と千里は自分たちを出歯亀よろしく覗き見ていたのだろうことは簡単に察しがついた。こっちは狭くて埃っぽい場所に閉じ込められていたというのに、ソファで寛いでいたのかと思うと少々、いやかなり腹立たしい。
けれどふたりのお節介のおかげで互いの誤解が解け、悠馬との仲も修復どころか進展したのだ。今回ばかりはそこには触れまいと孝臣はひとりため息を吐くだけに留めた。
「ん」
「ありがとう新兎」
「決着がつくまでどれくらいかかるかわかんなかったしね」
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