たなごころに黎明積みて 飯を作るのもひとり分なら、食うのだって当然ひとり。洗い物だってひとり分で。夜に響く寝息も、気配も、ひとつきり。
その空虚とは一年近い付き合いとなり、そろそろ寄り添われるのが当たり前になりつつはあるのだけれど――唐突に、どうしようもなく受け入れ難くなる時がある。
胸中にて起こる、通りもののごとき凪いだ嵐は、自身にすらどんな契機で発生するのか予測もつかない。
けれども、いかなる手段によるものか。この男は毎度、その瞬間を予め見越しているかのよう、姿を現すのだ。
「久しいな、ゆな。息災であったか」
「……あんたに比べりゃあね」
同じ言葉をそっくりそのまま叩き付けてやりたい衝動をぐっと抑え込んだ代わりに、皮肉が飛び出てしまった。
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